ハリウッドロードと文武廟|アジア写真帳(香港)

ハリウッドロードとキャットストリート

 ハリウッドロードとは

香港のハリウッドロード
 香港の街を歩いてみて面白いことの一つは、通りによって、街の雰囲気が一変することです。中環(セントラル)のビジネス街・ショッピング街から道一本山寄りのウェリントン街に行けば、香港のB級グルメが軒を並べ、そのまま山を上がれば、蘭桂坊(ランカイフォン)というアイリッシュバーやクラブが並ぶ、欧米風のエリアがあったりします。また、ウェリントン街から西へ行き、ヒルサイドエスカレータを越えたあたりには、街市(マーケット)や路上マーケットがあり、ヒルサイドエスカレータで山を上がれば、ソーホー(SOHO)というエリアがあり、欧米風のレストラン・バーや洒落た香港雑貨の店が軒を連ねる一帯になります。
 上の写真のハリウッドロードは、ヒルサイドエスカレータでSOHOのすぐ下を東西に走る道で、家具屋や高級なアンティークショップが集中しています。また、近年ハリウッドロードの一帯の建物などにはたくさんのウォールアートが描かれ、観光客の人気を集めています。
 中環(セントラル)→ウェリントン街→ヒルサイドエスカレータ→ソーホー→ハリウッドロード→キャットストリート→上環というルートは、香港の街の変化を楽しみ、また、数々のウォールアートまで楽しめる私の散歩道です。
 このページではハリウッドロードから、キャットストリートを経て、上環に至るまでをご紹介します。
香港ハリウッドロードのアンティークショップ
 上の写真はハリウッドロードの高級アンティークショップです。目玉が飛び出るような値段が付いています。目の保養をするくらいの軽い気持ちで店の中に入りましょう。

 ところで、ハリウッドロードは漢字で書くと荷李活道と書きます。これは、日本人にとっては読みづらい字です。英語名が先に決まって、その発音にあわせて漢字を当てはめているものなのです。香港の地名や道路の名前のつけ方には、大きく分けて5つあります。
先に中国名があり、この発音を英語名にしたもの 湾仔(WAN CHAI)、
尖沙咀(TSIM SHA TSUI)
旺角(MONG KOK)、
九龍(KOWLOON)
英語の発音に広東語を当てはめたもの 荷李活道(HOLLYWOOD RD)、
威霊頓街(WELLINGTON ST.)
 以下、私なりに、何故、こんな色々なパターンができてしまったかを考えてみます。英語名と中国名との関係を考えているだけで、香港が楽しくなってしまいます。英語名と中国語名との違いは、香港を歩くとき、実は重要なキーになるものです。というのも、一般の人に英語で地名を言って通じるのは、上の「パターンB」です。とは言え、、広東語的発音にしないと通じづらいものがあります。
 最も一般的な英語の地名のつけ方は「パターンA」で、もともとあった中国語名を英語で書いたものです。例えば、日本の地名もこのパターンですよね。これがノーマルな形だと思います。しかし、我々が、英語表記通りに発音しても、現地の人には通じにくいところがあるから、困るわけです。広東語や中国語には言葉の上げ下げ(声調)というのがあって、これが合ってないと、理解されづらいようです。但し、よく外国人と接触しているような香港人だと、我々の言う英語の地名も理解してくれます。
英語の意味にあわせて広東語を当てはめたもの 皇后大道(QUEEN'S RD.)
太子(PRINCE EDWARD)
先に中国語名があり、その意味を英語で表したもの 北角(NORTH POINT)
炮台山(FORTLESS HILL)
山頂(PEAK)
英語名と中国語名が全く無関係のもの 金鐘(ADMIRALTY)、
跑馬地(HAPPY VALLEY)
  さて、他のパターンに移りましょう。
 香港というのはイギリスの植民地だった歴史もあって、QUEENとかPRINCE EDWARDといった名前は欠かせないわけで、もともとあった名前をこうした名前に変えてしまったというパターンがあります。これらが「パターンC」です。「パターンD」は、中国語の地名自体に意味があったので、英語に翻訳することができた地名ということでしょう。でも、何故、「九龍」を「NINE DRAGON」と呼ばずに「KOWLOON」と「パターンA」でつけてしまったのかは、私も回答を持ちません。「パターンE」に至っては、何ででたらめに名前決めるのかと、当時のイギリス人や香港人を恨んでしまいます。
 そして、ハリウッドロードのような「パターンB」は、おそらくは植民地時代からイギリス人が比較的住んでいたエリアで、どうしても道路名を英語にする必要があったのではないかと思います。しかも、現地の人にも分かるような名前にしないといけなかった何らかの理由があって、漢字を英語の発音にあわせて当てはめたものにしたのではないかと推測されるわけです。
香港ハリウッドロードのアンティークショップ

 話が思いっきり、それてしまいましたが、再びハリウッドロードです。ハリウッドロードでも、比較的西の方(上環寄り)、後ほど紹介する文武廟から西のあたりがアンティークショップのエリアです。おそらくは、昔からイギリス人など外国人を主たる得意先として、このエリアに中国の美術品を販売する店が集積していて、それが現在も残っているということではないでしょうか。

 ハリウッドロードで文武廟から東のあたりには、こうした家具屋もいくつかあります。中国家具はどっしりしていて頑丈だし、デザイン的にも洒落たものが多いですね。私の家でも、ダイニングテーブルとチェア、食器棚や書棚、書斎机等々が中国家具です。
 中国家具を買うなら、湾仔(WAN CHAI)の荘士敦道(JOHNSTON RD.)のあたりの方が、店も大きくて種類も豊富に揃っていますので、おすすめです。日本にも送ってくれますよ。

 ハリウッドロードのウォールアート

香港ハリウッドロードの壁面アート
 そんなアンティークショップの通りだったハリウッドロードが、近年観光客の脚光を浴びています。上の写真はホテル・マデラ・ハリウッドですが、この建物の壁にはハリウッドの名優たちが描かれていて、思わず足を止めてしまいます。
 ハリウッドロードにはこうしたウォールアートが数多く描かれ、思わず写真を撮りたくなってしまう場所がいくつもあります。もともと「HK Walls」という運動で、香港の街中の壁にアートを広げようという運動で2014年から始まっています。2018年の重点エリアがハリウッドロード界隈で、この時期に多くの壁絵がハリウッドロードに描かれたのですが、その後も次々と新しいアートが増えてきています。
 ここからは中環(セントラル)→ウェリントン街ヒルサイドエスカレータ→ハリウッドロード→キャットストリート→文武廟→上環というルート順に、グラフィットアート。 
香港島ヒルサイドエスカレータ
 まず、 ヒルサイドエスカレータに乗ってミッドレベル(山の中腹)を目指しましょう。ヒルサイドエレベータは中環と上環の間で中環街市からスタートしています。スタート地点はB級グルメのウェリントン街を目印にする方法もあります。ヒルサイドエスカレータは目立ちますから、すぐに見つかるはずです。
 ヒルサイドエスカレータは途中でいくつもの降り口がありますから、降り口の表示にも注意しながら、エスカレータからの香港の景色を楽しんでください。
香港ハリウッドロードの香取慎吾作壁面アート
 ハリウッドロードのウォールアート巡りをする場合の降り口は「Shelley Street (些利街)」です。とにかくこの名前を忘れないこと。
 降りるとすぐに上の写真のアートが見えます。実はこのアートは香取慎吾の作品で、ヒルサイドエスカレーターの側面見えます。龍をモチーフにています。そんなに素晴らしいとは思えませんが、ウォールアートの多いこのエリアで、そんなに浮いた存在にはなっていません。
香港ハリウッドロードの壁面アート(チャップリン)
 香取慎吾の作品をスタート地点として、ハリウッドロードを上環方面に歩いていきます。すると、ピールストリート(卑利街)とハリウッドロード(荷李活道)の交差点に位置するホテル・マデラ・ハリウッドの外壁に描かれたアートが、いやでも目に入ってきます。三つ上の写真ですね。とにかくこのアートは目立ちます。しかもハリウッドロードという道路名にぴったりのアートです。そして、出来が良いです。
 こっちの角度から見ると、チャップリン、オードリヘップバーンとマリリンモンローが描かれています。彼らの表情が良いですね。
香港ハリウッドロードの壁面アート
 ホテル・マデラ・ハリウッドのピールストリート(卑利街)側にはフランクシナトラの大きなアートが描かれています。背景に見える香港島の風景もまた、このアートの価値を高めています。
香港ハリウッドロードの壁面アートとフルーツ屋台
 フランクシナトラの絵の下は、ピールストリート(卑利街)の屋台街。ここでフルーツでも買って、フルーツをかじりながらアートの街の散策をすれば、香港旅行の良い思い出になります。
香港ハリウッドロードの壁面アート
  そのホテル・マデラ・ハリウッドの向かいには、人気のアート「笑う女性」があります。これは何か芸術的な色遣いですね。女性の表情も素晴らしいし、小鳥も効いています。
香港ハリウッドロードの壁面アート(九龍城取砦)
  「笑う女性」のすぐそば、グラハムストリート(嘉咸街)とハリウッドロードの交差点のグラハムストリート(嘉咸街)側に、今度は「九龍城砦」のアートがあって、ここはアートを背景に写真が撮りやすいこともあって、いつもたくさんの人が撮影待ちをしています。
香港ハリウッドロードの壁面アート(九龍城取砦)
 上の写真だと九龍城砦が分かりづらいから拡大してみましょう。
 実は九龍城砦というのは九龍城にあったスラム地区で、もともと10世紀ごろに海賊対策のために作られた要塞に、1950年代ごろから流民や難民が住み込み、勝手にバラックを何重にも建て、電気や水道などの配線・配管などをめぐらしたものです。安全衛生の観点から1994年から取り壊しが始まり、今は公園や住宅街になっています。その取り壊しの時期に私も香港に住んでいましたが、大変大きなニュースになっていました。
 私もそんな九龍城砦の現物を外から何度も目にしています。このアートはちょっときれいすぎますけど、当時の雰囲気を残しています。
香港ハリウッドロードの壁面アート(階段横の女性)
 今度は一気に西側のアートの紹介です。
 場所はハリウッドロードの文武廟を少し過ぎたところの角にが枯れた女性の顔です。すごく独創的で目に留まるアートです。また、階段の斜面を有効に使ったデザインにも感心させられます。
香港ハリウッドロードの壁面アート(階段横の女性)
 この絵が描かれている階段がこれです。この階段の両側にたくさんのアートが描かれ、階段を上ったところに、この後紹介するブルースリーがあります。この一帯の壁にはアートが集中的に描かれています。
 中環からハリウッドロードを上環方面に歩いてきて文武廟を過ぎて山側がこのアートで、右側の一本海側の道がキャットストリートです。そういう位置関係になります。
香港ハリウッドロードの壁面アート(ブルースリー)
  ブルースリーです。ブルースリーがアートになっていて嬉しいですが、何か平凡ですね。あっ、ブルースリーのアートがあったということで発見した喜びはありますが、アートとしての面白さは私は特に感じないです。皆さんはいかがですか。
HK Wallsの初期作品(ハリウッドロード)
 この階段右側の漫画みたいなものもアートです。この漫画のようなアートは、2014年に始まった「HK Walls」という運動が始まってすぐに描かれた作品で、「HK Walls」の歴史上価値のあるものです。最初はこうした漫画チックなものが靴も描かれていたということです。 

 キャットストリート

香港キャットストリート
 今度はキャットストリートです。骨董品と言うか、ガラクタと言うか、そういったものを売る店が50件くらい軒を連ねているエリアです。摩羅上街 (Upper Lascar Row) という名前が正式な名前です。
 キャットストリートの語源は、そもそも骨董品を「ねずみの宝物」というふうに呼ぶからだという説(ということは、買いに来る人は猫である。)と、路上に店を広げているので、しゃがんで商品を見る客が猫のようだということで名がついたという説と、両方あります。
 いずれの場合も、買いに来るお客さんは猫ということになります。お客さんの殆どは白人を中心にした観光客で、地元の人は少ない気がします。

香港キャットストリートの商品
 摩羅上街 (Upper Lascar Row)はこんな感じで、路上にも店が出ています。店に置いてある物は 、大概はガラクタ品です。でも、何となく掘り出し物があるかも知れないなんて期待もあって、並んでいる商品を見たくなってしまいます。
香港キャットストリートの商品(毛沢東)
 毛沢東の置物や小さな人形などを並べている路上店です。この毛沢東は見るからに毛沢東なので、記念に買うのも一興です。可愛らしいのもありますよね。
香港キャットストリートの商品
 土瓶を売る店。これは結構ちゃんとした土瓶です。日本で使っても悪くないでしょう。私が惹かれているのは写真右下の茶器セット。家で一人で中国茶を飲むことが多いので、その時に使うのに良いかなと思っています。なぜ中国茶を飲むのかですって、それは美味しいだけではなくて、ダイエットと健康のためです。リンク先に私のダイエット効果なども紹介しています。
 香港キャットストリートの商品
 ここは単なる骨董屋さん。年代物を扱っているので、きれいに洗えば部屋のアクセントとして飾ることができると思います。 
香港キャットストリートの商品
 このポスター屋もおすすめです。オールド上海と言われたころのポスターを複製したもので、種類は豊富にあります。戦前の広告が多いです。日本の商品を紹介した広告も少なくなくて、欲しいなとは思うけど、どこに貼れば良いのかまだ決断できない中で、いまだに購入していません。
香港キャットストリート
 キャットストリートにある店舗は、本当の骨董品屋とお土産屋とが混在しています。この店なんかは外にはお土産に使えそうな商品がありますが、店内にはちょっと値の張る商品を置いています。
 この店も同じで、工芸品、コイン、置物、時計、仏像、仏像の頭、等々、多種多様なものが売られています。店の中は写真が撮れないですけど、それなりに立派なものを扱っています。
香港キャットストリート
 キャットストリートは短い距離の中に様々なお店や露店が集中しています。ハリウッドロードのアート巡りや文武廟観光のついでに、ちょっと寄り道するのも良いでしょう。

 三国志の関羽を祀る文武廟

香港の文武廟全景
 上の写真は、ハリウッドロードにある文武廟です。学問の神として文昌帝が、また武術の神として「三国志」で有名な関羽が祀られています。文武の神様を祀っているので、文武廟と言われています。ここは、地元の人も多いですが、観光客も多いスポットです。
 香港の文武廟入口
  文武廟の入口です。
 1847年に建てられたので、既に160年を超える歴史を持った寺院です。建物の装飾、屋根の装飾は、さすがに中国らしいものがあります。
香港の文武廟の渦巻き型線香
 文武廟を紹介するときに必ず話が出る渦巻き状の線香。これは文武廟に限ったことではなく、中国の寺院に共通した線香です。初めて経験する人は、建物内に入った瞬間にもうもうと煙る線香の煙とその香り圧倒されます。
香港の文武廟の渦巻き型線香
 渦巻き状の線香を拡大してみました。線香の下に赤い紙が垂れていますが、この紙には参拝客が書いた願い事が記されています。渦巻き線香が燃え尽きるまで約3週間かかるといわれていますが、燃え尽きると願い事が叶うといわれているそうです。
 私も香港や中国が長いので、常々どうして線香がこんな形をしているのかというのを考えたことがあります。私なりに出した結論は、線香を長く持たせるためということです。一本の線香で長い時間供養するためには棒状にするよりも渦巻き型の方が長い時間持たせることができるのです。違いますかね。
香港の文武廟の内部
  というわけで、入り口付近に線香がたくさん焚かれていますが、その奥に神様としての関羽とその一族郎党が鎮座しています。
祈りをささげる人々(香港の文武廟)
 奥の方に入ると、地元の参拝客で一杯です。天井からぶら下がっているのは、渦巻き型の線香があって、渦巻き型線香の下に参拝客が献じた線香と一緒になって、建物の中は、線香でモクモクとしています。
香港の文武廟の内部
 香港とその近郊の方は、この文武廟の神様(関羽)に捧げる供物や線香、ろうそくを持ってお祈りをしに来ます。
 中国には無数の文武廟(関羽を祭る廟)がありますが、その賑わいという点ではこの文武廟はその最右翼ともいえます。
香港の文武廟の内部
  地元の参拝客が多いので、ここではフラッシュをたいて写真を撮ってはいけません。願い事の邪魔になります。スマホのカメラで撮影するときも、フラッシュがオフになっていることを確認してから建物内に入るようにしてください。私も、カメラを高感度にして撮影しています。最低限のマナーは守りましょう。