ワゴン式飲茶の蓮香楼は「蓮香茶室」として再出発 |
長年にわたって香港人に愛されてきた蓮香楼は ビルの賃貸契約終了に伴い2019年2月末で閉店しました。 現在のビルは建て替えられると聞いていましたが、 なんと同じ場所で「蓮香茶室」という名前で 翌月の3月1日に営業を再開しました。 閉店の噂は何だったのでしょうか。 |
「蓮香茶室」という店名で再出発 |
蓮香楼が90年にも及ぶ長い歴史の幕を閉じたのが2019年2月末。2019年上期には閉店してしまうと聞いていたので、やっぱりその日が来てしまったと思ったのもつかの間、その翌月1日から「蓮香茶室」として再出発していました。私がリニューアルオープンと言わないのは、何から何まで蓮香楼の時代と変わらないからです。 蓮香と書いた歴史を感じさせる看板も以前のままです。 |
唯一違うのは、入り口の真上にある「蓮香茶室」と書いた看板だけです。これは目立たないから、たまにしか来ないお客さんはここがまだ蓮香楼だと思ってしまうに違いありません。 聞いたところによれば、蓮香楼に長年勤務した使用人が店を運営するライセンスをオーナーである顔一族から2月中旬に取得し、ビルの大家との賃貸契約も締結したとのことです。ですけれども、料理人を含め店員も変わらず、そしてメニューも変わっていません。しかも、メニューや点心カードに書いてある店名は蓮香楼のままです。 |
改めて紹介する必要もありません。店内も蓮香楼の時のままです。相変わらず賑やかな飲茶風景です。朝8時半くらいの店内です。 ただ、蓮香茶室という名前が示す通り、茶室ですので夜の営業は行いません。営業時間は朝6時から午後の16時までです。これは、2月上旬の春節(旧正月)を期に数名の従業員との契約を打ち切ったことにより、夜の営業が困難になったという要因もあるようです。そのくらいギリギリのどんでん返しで、蓮香楼から蓮香茶室への移行が行われたということになります。蓮香楼を愛する使用人たちの手で蓮香楼の伝統が守られたわけです。私が再出発という言い方をしているのはそのためです。 |
そして、回ってくるワゴンから点心を受け取るシステムも以前のままです。ワゴンを押すおばさんも見たことがある人ばかりです。蓮香楼がなくなると、数少ないワゴン式の飲茶やがまたなくなってしまうので、残った店、特に蓮香居あたりにお客さんが集中してしまうのではなどと心配していたのです。 |
さらに言えば、やかんも以前のままです。アッ本当だという人は蓮香楼に通ってよく蓮香楼を知っている人です。ここから自分でやかんを取って急須にお湯を注いでいる人は、このやかんの位置をよくご存じだと思います。 |
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蓮香茶室は何もかも蓮香楼と変わらない |
ということで、蓮香茶室は蓮香楼と何も変わりません。テーブルに着くと、お茶を何にするか聞かれ、お茶と一緒に食器を洗う大きなどんぶりみたいのも用意されて、そこで洗杯します。 |
テーブルは相席です。一人とか二人とかで行くと自分の点心を置くスペースはあまり広くありません。単身生活をしている私は一人飲茶の場合が殆どですので、たいてい一品ずつ取って、その一品がにくなったら次の一品をワゴンから取っていくという食べ方です。その方が点心もアツアツの状態で食べられますから美味しいという理由もあります。 |
エビと野菜の餃子です。以前に比べると点心をいくらか丁寧に作っているような気がします。蓮香茶室がオープンしたばかりだから特別かもしれません。 ただ、この餃子はちょっと蒸しすぎでした。私は家が深圳ですので、家から比較的近い荃湾の蓮香桟をよく利用しています。同じ蓮香グループですが、蓮香桟の方が点心の作り方が丁寧です。また、ワゴンを押す女性も品名を大声で呼んでいるので、ワゴン式飲茶の雰囲気が強いです。 |
この牛肉球はビジュアル。味ともに申し分ない出来栄えです。 美味しかったです。 ただ、この点心をワゴンで運んでいた女性が、牛肉球には不可欠である酢をかけないまま点心を渡したり、酢が欲しいと言ったら迷惑そうにのろのろと酢をかけたりするところなどは、人気店である蓮香楼時代のおごりを感じさせるところです。その点、蓮香桟は丁寧ですよ。 |
エビのサクサク揚げです。これも本当はマヨネーズをつけた方が美味しいのですけど、ワゴンにマヨネーズがなかったので諦めました。 |
上の写真のように、エビが中に入っています。私は日本人だと思われていないので言われませんが、あちこちのテーブルにいる日本人の前を通る時には、「エビ、エビ」と声をかけています。この店、日本人客が増え過ぎです。この店では、とにかく香港人比率が下がっているのです。ここ蓮香茶室(旧連香楼)では、昔ながらの飲茶風情が少し失われつつある気がします。 |
上の点心は中国パンに五花肉といって豚のバラ肉を挟んだものです。普通私は取らない点心なのですが、この日は後述する犯罪人引渡条例に端を発した香港の騒動の真っ最中で中国の観光客が激減していました。この点心は中国大陸の人の大好物ですが、観光客が来ていないのでワゴンが回れども回れどもこの点心が減らないのです。見るに見かねて、蓮香茶室を愛する私が代わりに食べてあげたものです。 正直言って油っこいけど意外に美味かったという感想です。ただ、私自身が深圳に数年住んでいて味覚が大陸人に近づいている可能性があります。日本人の方にはおすすめしない点心です。 |
こんな脂っこいものを食べるとさっぱり系の点心が欲しくなります。そこで取った点心は糯米滋(もち米団子)です。中身はピーナッツクリームでした。ちょっと堅かったですね。点心は出来立ての状態で食べるのが理想です。ワゴン式の場合は時々時間が経ったものも入っていますので、そういうのが紛れ込んでしまう可能性があるというのがワゴン式の欠点です。回転ずしと同じですね。握りたてのベルトコンベアに乗せられてすぐの寿司が美味しいのと同じ理屈です。 |
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改めて店を見渡すと、中国からの観光客も相当に増えています。スマホをいじっている人の多くは中国人だと思った間違いありません。以前の蓮香楼、と言ってもずっと昔の蓮香楼では、広東語が店内に響き渡っていましたが、最近では北京語(普通語)をよく耳にします。 |
こうやって、ワゴンに群がって順番を考えずに横から蒸篭を取っていってしまうのは、多くは大陸からの中国人、そして韓国人です。日本人は群がっては来ますが、自分で蒸篭をつかんで我先に取って帰ろうとする行動をとる人は少ないようです。 「飲茶なんだからゆっくりゆったり楽しんでみたら?」と言いたい気持ちになります。 |
2019年8月、犯罪人引渡条例に端を発した香港の騒動で、香港への大陸からの観光客は激減しました。中国の特殊部隊が香港に突入せんばかりの勢いがあって、中国の大陸の人と香港人との間で民族の争いにも似た敵対関係が生じてしまったからです。 ちょうどその時も私は蓮香茶室に行ったのですが、上の写真の通り店内はガラガラです。ちょうど半分くらい席があいています。これを見ると分かる通り、ここ蓮香茶室の客層の多くは大陸の観光客ですから、ワゴン式飲茶と言えどもここを見て伝統的な香港飲茶だと考えてはいけません。要は半分は観光客相手の店なのです。 |
この日に限って言えば、日本に旅行すると非国民扱いされる韓国人も目立ちますが、殆どが香港人ですので、昔ながらの飲茶風景を楽しめました。これこそ本来の伝統的なワゴン式飲茶の風景をこの日は見ることができたのです。 しかし、蓮香茶室の本来の姿をを楽しみたいという気持ちはあるものの、この香港の異常な状態が早く解決されることを願っています。 |
入り口から階段を上がって蓮香茶室に入って左側あたりは、比較的テーブル間隔があいていて、これだと茶室という雰囲気はあります。陸羽茶室のような格調高い茶室になってほしいとまでは言いませんが、少なくともゆっくりと安らげる茶室になってほしいなとは思います。 まあ、観光客が多いから、そして染ま観光客の比率がどんどん高くなるから、落ち着いて飲茶を楽しむなら別のワゴン式飲茶の店の方が良いと私は思います。 以下に、蓮香楼時代のレポートを載せておきます。 |
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香港蓮香楼は人気店、狙い目は早朝 |
香港での朝食は粥というのが私の流儀ではありますが、たまには朝からディープに飲茶をしたいという日もあります。そんな時におすすめの店、それが上環にある蓮香楼です。上環から皇后大道中を中環に少し戻った辺りにあります。 上の写真にある通り、香港の人たちが朝の時間を普通に過ごしている飲茶屋です。一人で朝のお茶を飲みに来て、新聞でも読みながら大好きなお茶を飲み、いくつかの点心をつまむという店です。日本で言えば、喫茶店でモーニングサービスを食べている感覚です。 |
香港蓮香楼は老舗で美味しい点心を出してくれる店として、また、昔ながらの飲茶情緒が漂う店として人気があります。基本的には相席になりますし、7時半ごろですと既にいっぱいで席が空いていない場合もよくあります。 では、香港蓮香楼は何時から開いているのかというと、実は6時です。まだ暗い香港の街を歩くと、店がほとんど閉まっている中で、ここ蓮香楼だけが開いています。 |
朝8時ごろの香港蓮香楼の入口です。 例によって、入口横には新聞屋さんが店を広げています。ここに飲茶に来る地元の人たちは入口で新聞を買って、写真に見える階段を上がっていくのです。昔ながらの香港の飲茶風景がここ蓮香楼にはあります。飲茶をしながら新聞を読んで、知り合いがいたら新聞も話題にしながらあれこれおしゃべりする、これが香港の伝統的な飲茶です。 |
私がこの日香港蓮香楼に着いたのは6時5分くらいです。既に20人を超えるお客さんが思い思いの時間を過ごしています。店の中は結構広いですから、各テーブルに一人、二人いるくらいの感じです。皆さん、新聞を読んでいます。 この蓮香楼でゆったりと飲茶を楽しめるのは、この時間くらいのものです。蓮香楼に行くなら朝6時の開店直後というのが私のおすすめです。私はそのために宿泊するホテルも上環にしているくらいです。上環には他にも良い店が多いので、香港の食事環境としては超おすすめのエリアなのです。 |
テーブルを指定され座ると、例によってお茶の銘柄を聞かれますので、迷わず「ポーレー(普洱茶)」を指定します。点心は結構脂っこいので、油を流すポーレー茶が一番です。香港人が一番大好きなお茶もポーレー(普洱茶)です。 で、その次に行うのが「洗杯」です。上の写真左側の大き目のボールのようなどんぶりが洗杯用のどんぶりです。一煎目のお茶は美味しくないので、一煎目のお茶を使って自分が使う食器や箸などを洗う行為です。洗杯はかつては衛生上の理由から飲茶には欠かせない行為でしたが、今はその必要はありません。ただこの洗杯という行為が飲茶の習慣として根強く残っていて、香港蓮香楼のような老舗ではそれ用の容器も出てくるわけです。 せっかくですから、周りの人たちの洗い方も参考にして洗杯してみましょう。 |
この日、出張で香港に来ていた私は一人飲茶です。一人飲茶ですとお茶は急須で出てきません。上の写真のように茶碗でお茶を淹れます。茶碗の中に茶葉が入っていて、この茶碗でお茶を淹れ、自分の茶碗に注ぎます。ふたと茶碗を片手で抑えて上手に入れましょう。慣れないとお茶をこぼしやすいので気を付けてください。私は自宅でも中国茶を同じように茶碗で淹れることがあるので慣れたものです。 複数人で来てもそれぞれが異なる茶葉を頼むと、この茶碗でお茶を淹れることになります。 |
普通は上の写真のような急須です。 さて、この店のように込んでいてウェイターやウェイトレスが足りなくなってくると、お茶のお代わりを早めに合図したほうがいいですね。上の写真のように急須のふたをずらしておくとお茶をついでくれという合図になります。これは覚えておくと便利なサインの一つです。(上の写真では分かりづらいかもしれませんが、急須のふたを開けてずらしておいたところに、店の人がやかんからお湯を注いでいます。金属の管はやかんです。) 香港人や広東人はおしゃべりが大好きですから、お茶を他人に入れてもらったら指でテーブルをトントンとたたいたり、お湯が欲しいと思ったらふたをずらしたり、という合図を決めています。おしゃべりが途切れないようにしているのです。 |
朝6時の蓮香楼、このくらいゆったりと飲茶が楽しめればいいですね。この時間ですと、お客さんも地元の人ばかりですから、観光客が増えてきて落ち着かない時間帯とは異なり、昔ながらの飲茶風景を楽しめるのです。 |
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香港蓮香楼は上の通り、上環エリアにあります。 朝6時過ぎにここに来るためには、できれば上環に泊まりたいところです。ワゴン式飲茶で、昔ながらの香港の伝統が感じられて、しかも点心が美味しいという飲茶屋さんは、実は香港にはあるようで数は少ないのです。ここ蓮香楼の姉妹店である蓮香居も同じような雰囲気があって、蓮香楼よりは混み始める時間が少し遅いような気がします。蓮香居も昔ながらの香港飲茶を楽しめる店ですので、こちらもおすすめです。同じく上環にありますので、上環に宿泊しているときなどは両方の店に行くのも良いでしょう。 因みに9時過ぎにもなると、マナーの悪い観光客も増えてきているので雰囲気台無しです。その時間帯は私としてはおすすめできません。 |
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蓮香楼はワゴン式の飲茶 |
香港蓮香楼の飲茶は、今では数少ないワゴン式です。飲茶の方式には大きく分けて、ワゴン式とオーダーシート式があって、それぞれに一長一短があります。出来立てのものが食べたければオーダーシート式の方が良いですし、点心を見てから注文したいというならワゴン式の方が良いわけです。 一部の上級者を除けば、香港旅行に来る日本人にはワゴン式の方が良いと私は思います。何故ならばオーダーシートを見ても残念ながら日本人には自分が食べたい点心がどれだか分かりづらいですし、せっかくの香港旅行ですからオールド香港を味わえるワゴン式の方が雰囲気も楽しめるからです。 |
ワゴン式では、売り子がワゴンを押して店内を回ってくれます。蒸籠の中にはいろいろな点心が入っていますから、「ムゴイ(すみませんの意味でもありがとうの意味でも使えます。)」と言って、ふたを開けて中を見れば良いのです。見た感じで美味しそうだったら指差したり「これ(日本語)」とか言えば渡してくれます。 気が付いた方もいるかもしれませんが、実はこのワゴン式システムというのは回転寿司に似ているのです。注文もできるし流れてくるものを見たうえで、取ることもできるという意味です。 |
それから、この蓮香楼のようなローカルなお店では、ワゴンが自分のテーブルの横に来た時しか注文できないのではなく、自分からワゴンまで行って、好きなものを取って帰るということも行儀が悪いことではありません。 この点では、日本の回転寿司とはマナーが違いますね。 |
さて、連行楼の点心を紹介しましょう。蓮香楼の場合は、行った時間に何がワゴンで回っているかによって、その日食べれる点心が変わってしまいます。ただ、焼売や蝦餃(ハウガウ)、牛肉玉といった人気点心はいつでも誰かのワゴンに入っています。また、なかなか回ってこない場合は注文もできます。「シウマイ」と「ハウガウ」とか言えば良いのです。通じないなら、漢字で「焼売」とか「蝦餃」とか書けば分かります。 御覧の通り、この日の一品目は焼売です。日本の焼売より大きくて肉がたっぷり入っています。香港点心の定番です。 |
そして、チャーシュー腸粉です。これも定番点心ですね。 「粉」という字が入ると米から作られたことを意味します。そして、「腸」というのは豚の腸に似ているからつけられたといいます。とすると、腸粉というのは、米からできた豚の腸みたいな意味合いなのでしょうね。チャーシューだったりエビだったり、いろいろな具が腸粉にはくるまれます。 このチャーシュー腸粉は、濃いめの醤油だれがかけられていますが、腸粉がつるっとした感覚でとても滑らかなせいか、全体としては、さっぱりした味付けで旨いです。腸粉は、店により味に大きな開きがあるような気がします。ここ蓮香楼の腸粉は、私は好きです。 |
まずはこの二品で、しばらくお茶を飲みます。朝ご飯を食べに来た感覚ではなく、朝のお茶を飲みに来た感覚で、一時間もしくは一時間半くらいの時間をかけて、ゆっくりゆったりとオールド香港の雰囲気を味わうのが私流です。店に来た途端に、食べきれないくらいの点心を注文するのは邪道です。 例えば、オーダー式でも、来たときに少しオーダーして、しばらくたってから追加オーダーするのも可能です。むしろそうして時間を隔てて注文することにより、常にアツアツの点心を食べることができるのです。 |
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そして、テーブルの上の点心がなくなり、まだ食べられる場合には点心を追加します。 おすすめしたいのは、定番点心の一つ、鮮竹牛肉球です。少し油っこい点心なので、点心を受け取るときに黒酢をかけてくれます。皿の下に黒い液体が見えますが、これが黒酢です。黒酢さえかければ牛肉球は脂っこさが消え大変食べやすくなります。それから好みかも知れませんが、私はこうした蒸し点心をアツアツの状態で食べたいので、下の蒸籠の方をもらうようにしています。一番上の蒸籠は何人もふたを開けているうちに冷めてしまうのです。 |
?油鮮竹巻です。湯葉巻きのオイスターソース蒸しです。湯葉の中にはエビや野菜など様々な具が入っています。オイスターソースが利いていますので、日本人には少し濃いめの味付けに感じるかもしれませんが、それが普通の香港の味付けです。 |
ここ香港蓮香楼の点心は味のはずれがあまりありません。何を食べてもそれなりに満足できます。エビ餃子(蝦餃=ハウガウ)、シウマイ(焼売)、チャーシュー饅頭(肉まん)、湯葉巻等々、様々な点心が回ってきます。テーブルの空き状態や胃腸の具合などを見ながら注文します。 上の写真は綾魚球(つみれ)です。これを食べるなら先ほどの牛肉球の方がおすすめです。 飲茶で食べられる点心の種類についてはこちらのページをご覧ください。 |
蓮香グループの他の店蓮香居(上環にあるワゴン式飲茶の店、蓮香茶室よりは外国人比率は低い。)蓮香桟(荃湾にあるワゴン式飲茶の店。ローカル度が高いおすすめの新店。) |
7時くらいになると蓮香楼は混んできます |
さて、話をまた最新情報に戻します。 この日私が香港蓮香楼に入ったのが6時少し過ぎ。そろそろ一時間が経ちましたが、だんだんお客さんも増えてきています。そうなると、新しい点心が出てくるとこのように自分の席を立って点心を取りに来るお客さんの数も増えます。お行儀良く自分のテーブルのそばまでワゴンが来るのを待っていたらお目当ての点心が売り切れてしまう恐れがあるからです。 それから言い忘れていましたが、右のおじさんが売り子に紙を渡していますが、それが注文カードです。売り子は注文カードに印鑑を押したうえで、点心と一緒に返してくれるのです。 |
そして、この日の一人飲茶の最後の一品が上の点心です。野菜の苦みと豚肉とがミックスされてなかなか香港らしい味でした。これなんかも、ワゴンに群がる地元の人たちが何を争って取っているのかを観察したうえで、人気の商品ということで同じものをもらったわけです。 地元の人に人気の点心が必ずしも自分の舌に合うのかどうかは分かりません。例えば私の場合は、香港人や広東人に超人気の鶏の爪料理などは何度食べても口に合いません。 |
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こんな風に、朝6時から蓮香楼に来て1時間半くらい経つと、上の写真の通り店はいっぱいです。相席になるのは言うまでもありません。ある意味、このくらいは、あるいはこれ以上に混んできて活気が出てくれば来るほど、香港飲茶の雰囲気は出てくると思います。ワイワイガヤガヤの中でお茶を飲みながら食べる点心が、香港旅行の良い思い出になるのです。 ただ、この朝の時間帯であれば殆どのお客さんは地元の人たちなのですが、昼からそれ以降になると観光客の割合が高まり、その中にはマナーの悪い人たちも少なくないのです。 そうしたことからすれば、今の私の考えでは、朝の6時から二時間くらいを蓮香楼で過ごし、香港飲茶の活気も味わうのがベストの訪問時間かなということになります。 |
最後に香港蓮香楼の歴史について一言。 蓮香楼はその本店は広州にある広州蓮香楼です。広州蓮香楼が香港に支店を作ったのが香港蓮香楼の始まりです。ところが、中国の蓮香楼はその後政府の資本が入り、現在は香港蓮香楼と広州蓮香楼の間に資本関係はなくなったようです。 香港蓮香楼の飲茶はワゴン式というオールドスタイルなのも、この広州蓮香楼の流れを汲むところにあるかもしれません。因みに、広州蓮香楼は広州での広東料理の名店で、点心の味だけで言えば、残念ながら広州蓮香楼の方に私としては軍配を上げたいと思います。 |
9時を過ぎると観光客が飲茶風情を破壊します |
さて、試しに朝9時に蓮香楼に来てみました。例によってほぼ満席でざわついています。上の方に載せた写真との違いが分かりますか? 実はこの時間になると新聞を読んでいる人の数がめっきり減るのです。これは地元香港の人の数が減っていることを意味します。この蓮香楼という店は部屋の中の声が反響して大変うるさいので人の声は聞きづらいのですが、言葉を聞くまでもなくお客さんの多くは中国大陸の人や韓国人、日本人で、その中に3分の1くらい香港人がいるかなという感じです。私は飲茶風情を楽しみたい人間なので、新聞を広げているおじさん二人が座っているテーブルに相席させてもらいました。 |
別に大陸の人が悪いとか、韓国人は嫌いだとか言っているのではなく、あくまでものんびりした飲茶風情という点から見ると上のような光景はあまり好ましくないと言っているのです。ワゴンまで歩いて行って点心をもらうのは決して悪くありません。香港人も私も取りに行きます。でも、行ったらすぐに目的の点心を取って席に戻らないと人があふれて落ち着かないのです。全部の蒸籠のふたを開けさせて、周りの人とあれこれ相談して、またふたを開けさせてというようなことを繰り返していると、点心も冷めるし人もあふれてしまうのです。 |
この写真のように礼儀正しく取りに行くのは反則ではありません。好ましい行動です。周りから見ても鬱陶しさを感じさせませんよね。 |
上の写真は朝9時の蓮香楼の入り口です。ちょうどこの時間に入口の新聞屋さんが店を閉めて引き揚げていきました。香港人の常連さんはこの時間を過ぎるとあまり来ないということです。 香港の蓮香楼はレトロな飲茶風景を楽しめる貴重な茶楼として知られているのですが、実は本当にその「レトロな茶楼」である時間帯というのは朝9時前くらいで、それ以降は観光客向けの店になっているだけだと私は思います。その時間帯では本来の飲茶風情を感じることはできないのです。飲茶のテーマパークに来ているだけのことです。 普通は飲茶をしながら、ゆったりした時間を一時間か二時間過ごす私ですが、9時に来たこの日は45分でもう我慢できずに出てきてしまいました。 |