元朗にはレトロな香港があふれている |
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元朗は香港の新界地区にある郊外の街。昔から栄えていた街なので、老舗の店が多く、昔ながらの香港が残っている街です。軽便鉄道とも呼ばれる路面電車が走る街としても知られています。 かつては地下鉄(西鉄)もなかったのでバスとこの軽便鉄道を乗り継いで来たものですが、今では地下鉄で香港中心部と約30分で結ばれているので、旅行者でもかなり行きやすくなった街です。 |
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元朗へは、昔香港に住んでいたころにも行っています。その目的は元朗旧墟(元朗旧市街)の探索です。20年前と変わらない街並みがこの一角には今でも残っています。元朗駅から北西側、西鉄ならA出口を出て5分も歩けば、元朗旧墟(元朗旧市街)です。 |
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元朗の街を歩くと、懐かしさがこみあげてきて嬉しくなります。1990年代、あるいは1980年代の香港がここにはあるのです。上の写真は香港粥や腸粉を食べさせてくれる専門店。もちろん、今の香港市街にも同様な店はいくつもありますが、店の雰囲気が昔風なんです。日本でいえば昭和の匂いを感じさせるという雰囲気なんですね。 |
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そして、大声で広東語が飛び交っているオープンエアの飲茶屋があって、お茶を飲んでくつろいでいる人々の姿が元朗にはあります。 |
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朝早い時間から、歩道には露店が広がります。 この日は深圳に宿泊していて、深圳市内から深圳湾口岸までバスで来て、深圳湾口岸のイミグレーションを通って、香港側のバス乗場から元朗行きのバスで元朗に入りました。深圳湾口岸を通過したのが朝7時半。元朗には8時半前に着いて、老舗の麺店「好到底」が開店する9時まで、朝の元朗の街を散策です。 |
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一般の商店も上の写真の通り、レトロな雰囲気というか、昭和の匂いというか、今の香港市街の冷たい街並みに比べるとずっと庶民的で、見ているだけでうれしくなってしまいます。 |
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元朗の市場を歩く |
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上の写真は、軽鉄で元朗から一つ目の駅、大棠路駅の南側にある街市(公設市場)周辺の朝の様子です。この大棠路駅の南側一帯が元朗の新市街地の中でも最も活気にあふれたところで、元朗で私が最も好きなエリアです。上の写真は朝8時くらいの様子で、10時を過ぎると歩くのが困難なくらいに買物客であふれます。その活気が私は好きなのです。 軽鉄大棠路駅 |
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街市(公設市場)の入り口では、いつもこの女性たちが地元野菜を販売しています。私の趣味から言うと、実は街市(公設市場)の中より外の方が活気がある分面白いです。ただ、水産物は街市の中でないと販売していないので、魚介類を見るなら街市です。 |
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街市の中には上の写真のように小さな店が沢山入居しています。朝のうちから多くの買い物客がやってきます。良い素材を朝のうちに確保したいという人たちなのでしょう。上の写真が8時くらいですから、この時間ですと準備が早い店で商品を並べ終わったくらいの時間で、まだ買物客が大勢来る時間ではありません。 |
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それでも、そんな時間から賑わっている店もあります。上の写真です。この店だけが人であふれていました。お客さんと店との間でかなり丁々発止のやり取りが行われています。私は広東語は全く理解できませんが、「たくさん買うんだからもっとまけてよ」「もうそれ以上はダメ。うちもギリギリの値段なんだから」なんて やり取りなのでしょうか。 |
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こんな感じで市場の中も見たりはしますが、やはり元朗で面白いのは街市(公設市場)周辺です。上の写真のような牛の頭とか豚のしっぽなんかも売っていたりします。牛の頭は焼いてあるとHK$50、生のままですとHK$30です。買いに行きますか? |
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というような感じで街市(公設市場)周辺をぶらぶらすると、香港の中心部では見られない昔の香港を感じさせるのが元朗の街歩きの魅力です。歩き疲れたらB級グルメでも食べてちょっと一休みして。また歩き出すというように街歩きを楽しめる街なのです。 |
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元朗はB級グルメの街 |
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元朗の軽鉄大棠路駅から市場方面に歩いて2分のところに、元朗の名店、好到底はあります。上の写真のような大きな看板が出ていますから近くに来ればすぐに分かります。 好到底は2011年から6年連続でミシュランに掲載されている名店です。2泊3日や3泊4日の香港に初めて来た観光客が行くような店ではありません。元朗は今では地下鉄で香港中心部と約30分で結ばれているとはいえ、往復で1時間かかりますし、元朗まで来れば香港スイーツも楽しみたいし街歩きもしたいということで、なんだかんだで3時間くらいかかりますから、初めての香港旅行者にはちょっとすすめづらい場所にあるのです。ですが、リピーターの方にはぜひ行ってもらいたい名店です。決して後悔しないと思います。 |
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この日は深圳から来て朝食を好到底で食べる計画でした。ここ好到底は香港人にも人気の店で、昼前にもなると香港各地からお客さんが集まってきてしまうので行列ができてしまいますが、朝イチに来ると待たないで済むのです。開店は朝9時、それにあわせて深圳のホテルを出てきたというわけなのです。 この日、好到底で食べたのは、もちろん蝦子撈麺(エビの卵がけ混ぜ麺)です。プチプチしたエビの卵が自家製麺にどっさり乗っていて、美味しいのです。香港で蝦子撈麺を食べさせてくれる麺店はいろいろありますが、私の経験ではここで食べた蝦子撈麺がベストです。 わざわざ元朗まで行きたくないという方や時間が足りないという人は、少し味は落ちるけど、中環(セントラル)にある黄枝記が良いでしょう。黄枝記はマカオが本店ですが、香港中環でも全く同じレベルの味を楽しめます。リンク先のページで香港店の場所も紹介しています。 |
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好到底で最もよく注文されているのはこの雲呑麺(ワンタンメン)でしょう。香港ではワンタンメンと言いますが、日本式に言えばエビワンタンメンです。つまりワンタンは肉ワンタンではなくエビワンタンなのです。 上の写真では麺に隠れてワンタンの姿は見えませんが、ワンタンは麺の下に隠れています。 上の写真は麺の下からワンタンを掘り出したところです。 人により好き好きはありますが、麺だけでいうと中環のウェリントン街にある沾仔記のゴム麺の方が香港の麺らしくて私は好きです。ですけど、どちらが日本のラーメンの麺に似ているかというと好到底の方ですから、香港慣れしている人でなければ好到底の麺を好むと思います。 一方、雲呑を含めた総合評価ということでは、私も好到底の方が上だと思っています。 好到底のワンタン(エビワンタン)です。実は入っているエビのプリプリ感も沾仔記の方が勝っています。それでも好到底のワンタンメンの方が美味しいという私の推薦理由は好到底の雲呑に入っているエビ味噌の素晴らしさなのです。コクがあって旨みがあって最高なのです。このエビワンタンを食べてしまうと、香港の他の店や、ましてや日本のエビワンタンなど、子供だましのように思えてしまうのです。 上の写真を見てください。見るからに美味しそうなワンタンに見えませんか。 |
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元朗のB級グルメでは發記腸粉粥品も有名です。朝食時などは次から次へとお客さんが入ってきてお粥と腸粉を食べていきます。厨房を見るとすごく丁寧に調理していることがわかります。味は文句のない味ですし人気が出るのもうなづけます。 |
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香港の粥を食べて25年にもなる私がおすすめできる数少ないお粥の専門店が發記です。最近では、「香港最強のお粥」とまで私は言うようになってしまいました。そのくらい気に入っている店です。 |
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この日注文したのはエビと豚肉の腸粉です。ここ發記の腸粉は手作りです。いろいろな店で腸粉を食べている私にとってもこの腸粉は記憶に残るほぼ最強の腸粉です。なめらかな食感といかにも出来立ての香りがする腸粉にエビと豚ひき肉がたっぷりと包まれています。たれも私好みの味付けです。素晴らしい腸粉です。 |
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そして、中華粥は写真でもお分かりの通り、トロトロに煮込まれています。この日はレバーや豚肉を入れたお粥ですが、もう大感激の味付けです。予め煮込んでいる中華粥を注文を受ける都度土鍋に入れて具と一緒に煮込んで出てきますから、テーブルに出てきたときはもうアツアツのお粥です。そして、具も粥によくなじんで出てきますからとても美味しいのです。 朝食にぴったりのお店です。 |
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一方こちらはランチにおすすめの店で、鄭洪記というラーメン屋です。市場横の熟食街の一角にあります。上の写真でいうと、手前は別の店で奥が鄭洪記です。エアコンはありませんが、強力な扇風機がいくつも回っていますから食べていて暑すぎると感じたことはありません。むしろ、いかにも元朗らしい食事を経験できる場所として強くおすすめしたい店です。 |
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メニューは店内に貼られていますが、牛肉麺とかエビワンタンメンとかがあります。スープのないラーメンや河粉といってコメからできている麺を選ぶこともできます。 この日私が注文したのは牛肉ワンタンメンです。メニューにはありませんが、牛肉麺にワンタンをトッピングしてもらう形になります。ただ、上の写真の通り、ワンタンは麺の下に隠れていますからテーブルに運ばれてきたときは牛肉麺のような感じです。 |
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せっかくですから、下からワンタンを掘り出して三つ麺の上に乗せてみました。こうすると牛肉ワンタンメンであることがわかります。 さて、鄭洪記の味ですが、もちろん美味しいです。美味しいからおすすめしているのです。ですが、エビワンタンという具だけ見てみると、上で紹介した好到底に比較するとかなり落ちます。価格的にも好到底の70%くらいですから、そこはそれなりの味ではあります。でも牛肉は美味しいし麺も合格レベルですので、どうせなら牛肉麺とワンタンメンを両方味わいたいという人は鄭洪記で、とにかく美味しいワンタンメンを食べたいという方には好到底をおすすめしておきます。 |
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元朗のB級グルメについてはこちらのページで詳しく紹介しています |
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元朗で飲茶するなら大栄華酒楼 |
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こんな元朗の街の中に、おすすめの大栄華酒楼があります。元朗では最も格式の高い酒楼(レストラン)です。とは言っても壁の花輪みたいなのを見てもらえば想像できる通り、大変レトロなレストランで、昔ながらの香港の飲茶風情を楽しめる店です。2016年に内装を改装しましたが、雰囲気はいまだにレトロです。 |
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大栄華酒楼の店内です。店内は改装されたばかりだから綺麗になっています。でも、昔ながらの広々とした酒楼の雰囲気はそのまま残っています。ここにいると聞こえるのは広東語ばかりです。私は香港に住んでいましたが広東語は全く話せません。ですから、相席していても隣が何を話しているか全くわかりません。それでも気軽に話しかけてくる方もいて、そんなところに下町の飲茶風情が感じられます。そんな時は私は北京語で対応しますが、何とかギリギリのコミュニケーションはできます。 嬉しいじゃないですか。相手は私が香港人でないことはとっくに見抜いていますし、それでも気軽に話しかけてきて、あれこれ話し相手になってくれる。そんな温かさがここ元朗の茶楼には残っているのです。 |
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大栄華酒楼の点心は、香港の中で際立って美味しいというほどの点心ではありません。特に何が美味しいということでもありませんし点心の見た目の華やかさにも欠けますが、伝統的な香港点心をここでは食べることができます。 例えば上の写真のイカのニンニク蒸しは蒸籠の中のお皿からイカがこぼれ落ちているあたりもいかにも香港の酒楼です。それはさておき、このイカのニンニク蒸しは普洱茶に大変よく合います。私がこの点心を毎回のように注文しているのも普洱茶との相性です。 |
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そして、奶黄馬拉糕(カスタードクリーム入りのマーライコー)です。この点心は大栄華酒楼の一番人気のメニューです。一般的な馬拉糕(マーライコー)に比較すると、カスタードクリームの味が強い分だけ甘みが増しています。私は飲茶の時にあまり馬馬拉糕(マーライコー)は注文しないのですが、ここ大栄華酒楼に来た時だけは例外です。やっぱり何度食べても美味しいのです。 美味しい普洱茶(ポーレー茶)を飲みながらつまむ甘い馬拉糕(マーライコー)に、レトロな香港の飲茶風景が良く似合います。 大栄華酒楼については別ページで詳しく紹介しています。 |
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元朗は香港スイーツ発祥の地?
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上の写真は元朗で人気のスイーツ店、佳記甜品のB仔船(カットフルーツ盛合せ)です。佳記甜品の看板商品であるB仔涼?を小さくしたようなものです。元朗にはこの佳記甜品もあれば香港各地に店を持つチェーン店、許留山の一号店もある香港スイーツ発祥の地なのです。 私が元朗に来る一番の目的はB級グルメです。ここ大栄華酒楼か蝦子撈麺や雲呑麺(ワンタンメン)で有名な好到底に来て、ついでに香港スイーツを食べて帰るのは定番の行動なのです。 |
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佳記甜品では、マンゴーのもち米団子(芒果糯米巻)もおすすめです。マンゴーが新鮮で香りが強く、もち米が柔らかく、そして適度に甘みがあって最高の味です。これは写真でもわかる通り、パックに入れてくれますから、食べきれない場合はホテルに持ち帰って食べることができます。その他ではマンゴー・パンケーキも美味しいですね。 |
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香港スイーツに加えて、月餅などの香港菓子の人気店も元朗を発祥としている店が多いです。上の写真はそうした店の一つ、栄華です。栄華の月餅は香港のあちこちで見かけますが、上の写真がその本店で、元朗の軽鉄大棠路駅駅前にあります。 |
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月餅以外にも上の写真のような気軽なお茶菓子もいろいろあります。ホテルに持ち帰って、翌日に食べるなんてことも良くあります。 元朗のB級グルメについてはこちらのページで詳しく紹介しています |
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元朗から軽鉄に乗って屏山文物径へ |
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せっかく元朗まで来たなら、屏山文物径(屏山歴史文化道)にも足を伸ばしてみましょう。屏山文物径(屏山歴史文化道)は天水圍エリアにあります。天水圍へはMTR西鉄線が通じていますので、元朗と屏山文物径を組み合わせる場合、先に西鉄線で天水圍に出て、屏山文物径を散策してから軽鉄で元朗に移動し、元朗でグルメや街歩きを楽しんでから、また西鉄線で香港市街に帰るというルートを辿ると、時間が節約できます。 このページでは、オーソドックスに、元朗から天水圍に軽鉄で移動する方法を紹介します。 上の写真は元朗と天水圍を結ぶ軽便鉄道、略称「軽鉄」大棠路駅です。この後紹介する通り、軽鉄は路線が複雑ですが、元朗から天水圍に行く場合は写真の天逸行きに乗車してください。 |
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写真をクリックすると大きな路線図が別ウィンドウで表示されます。 |
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上の写真は軽鉄の路線図です。軽鉄は?輌または2輌編成で走るLRT(次世代型路面電車システム)です。市電のように一般道路に軌道がある部分と専用軌道がある部分とがあり、専用軌道を走る場合はかなりスピードが出ます。オクトパスカードを使って乗車する場合は、駅にオクトパスカードをかざす機械がありますから、これにタッチさせてください。 軽鉄は元朗から天水圍方面に行く路線と屯門方面に行く路線に大きく分けられます。 |
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天水圍方面に行く路線の部分を拡大しました。右上が元朗駅(始発駅)で最も栄えているのが大棠路駅です。上で紹介したグルメ関連の店はすべて大棠路駅から徒歩5分以内のところに集積しています。 元朗駅や大棠路駅から屏山文物径に行く場合の下車駅は坑尾村駅または天水圍駅です。屏山文物径(屏山歴史文化道)は天水圍駅から坑尾村駅まで続いていますからどちらで降りても良いのです。色分けしてあるのでわかりやすいと思いますが、坑尾村駅まで行くのなら紫色のライン(天逸行き)に乗れば乗り換えなしです。天水圍まで行くのなら天逸行きに乗って坑尾村駅で乗り換えになります。 時間を節約するなら、香港市街からMTR西鉄線で天水圍まで行き、屏山文物径(屏山歴史文化道)を歩いて坑尾村駅に出て、軽鉄で元朗に行くというルートになります。朝9時ごろ香港市街を出て屏山文物径を1時間くらい歩いてから元朗に出れば、ちょうどランチタイムくらいになるでしょう。 |
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屏山文物径(屏山歴史文化道)を歩く |
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それでは、屏山文物径(屏山歴史文化道)の紹介に入ります。 香港市街から来た場合、屏山文物径(屏山歴史文化道)の散策は一般的にMTR西鉄線の天水圍駅から始まります。天水圍駅を降り、屏山文物径方面(聚星楼方面)の出口を出ると、駅前にすぐに上の写真の聚星楼が姿を現します。 聚星楼は高さは約13mで六角形の形をした塔で、12世紀ごろから香港に住み着いた鄧一族が、子弟たちの科挙(中国の官僚登用試験)合格を祈願して建立したものです。香港に現存する塔の中でも最も古い塔だそうで、香港市街では決してみられることがない古い塔ですから屏山文物径(屏山歴史文化道)散策のスタート地点としてふさわしいものです。 |
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この聚星楼は入れるのは一階部分のみで、二階以上に登る階段は閉鎖されています。したがって主として外から眺めるだけの塔です。一階の展示の中に1980年代の聚星楼の写真があって、その写真では塔の手前に大きな池があり、この塔が風水を考慮して建てられたことなども説明されています。 その後30年近くが経ち、天水圍も住宅地として開発されてしまった結果、今ではそうした池は跡形もなく、ただ塔だけが忽然と残っているだけです。 |
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香港(今の香港島、九龍と新界)はアヘン戦争によりイギリスに割譲されるまで、小さな漁村でした。国境を渡った深圳などは鄧小平の改革開放政策により1980年代に経済特区に指定されるまで小さな漁村でしたが、香港もイギリスの植民地になるまでは同じような漁村だったのです。 そうした昔の漁村風景、のどかな香港の風景は新界の中にいくつか残っていますが、それらがエリア内に比較的まとまって保存され、観光客も安心して見て回れるように整備されているのが、屏山文物径(屏山歴史文化道)です。上に示した通り、地図も整備されています。このページでは、聚星楼から楊氏古廟に出て、そこから南下して鄧氏宗廟や覲廷書室を経て、軽鉄坑尾村駅に出るルートです。所要時間一時間強です。楊氏古廟からさらに東に進み、全体を見て回ると二時間半くらいはかかると思って良いでしょう。 |
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屏山文物径(屏山歴史文化道)には標識も整備され、歴史的建造物には解説も出ています。広東語と英語の解説だけですが、ある程度の英語力があれば理解できる程度の英語です。 |
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さて、聚星楼をスタート地点として屏山文物径(屏山歴史文化道)を散策すると、次に現れるのは社檀です。社檀というのは神に祈るときに捧げものを乗せる台のことです。村民の平和や幸福を祈る時には、村民がこの台の前に集まって、祈りをささげたのです。こうした祭壇が香港に残っているのは珍しいことです。少なくとも私はここ屏山の社檀しか存在を知りません。 |
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前述の通り、天水圍周辺もマンション開発が進み、この一角だけが開発から取り残されている感じです。社檀の正面には天水圍エリアのマンション群が姿を見せています。そんななかに、こうした昔の香港がしっかりと保存されているのは嬉しいことです。 |
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楊侯古廟(屏山文物径) |
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上の写真は楊候古廟という建物です。平屋建ての風采の上がらない建物ですが、ここも貴重な文化遺産です。建物の手前に祭壇があり、時期になると多くの蝋燭が立てられるのでしょう。この日も何本かの蝋燭が立てられた跡があります。 楊候とは宋末(13世紀)にここ元朗から今の九龍城あたりまで一帯を治めていた楊亮節を指していて、そういう意味では700年以上も前の支配者です。死後、楊候と諡(おくりな)されたくらいですから、当時の王や民衆から評価され慕われていた人なのでしょう。 |
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楊候古廟には三つの部屋があって、上の写真は真ん中の部屋の様子です。中央に鎮座しているのが楊候だとされています。この楊候古廟は20世紀に改修されていますので、室内は大変美しいです。 |
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楊候を大きくアップしてみました。なるほど聡明で慈悲深い顔をしています。 |
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楊候の左に立っているのは三国志の関羽です。関羽は蜀の武将ですが、後漢末期に神格化され、神様の関羽は商売や学問の神様となっています。清の時代には中国の至る所に孔子廟(文廟)と関羽廟(武廟)が建てられましたが、文化大革命のときに孔子廟は支配階級のための教えとして徹底的に破壊されたため、関羽廟だけが残っているという状況にあります。 ここ楊候古廟の関羽は筆と紙を持っていますから、学問の神として祀られているようです。 |
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楊候の右側に立っているのは同じく三国志で蜀の武将として知られている張飛です。ここで私も解説不能になってしまいます。張飛像は何を持っているのでしょうか。張飛って何かの神様になっていたっけと頭をひねってしまうのです。 |
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鄧氏宗祠と覲廷書室(屏山文物径) |
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楊候古廟から軽鉄坑尾村駅への道は、19世紀以降に建てられた建物に混じって古い建物がいくつかあります。 上の写真は鄧氏宗祠です。12世紀ごろから香港に住み着いた鄧一族が先祖を祀る廟です。立派な門構えです。こうした一族の廟としては、私はあの諸葛孔明の諸葛一族の廟に行ったことがありますが、同じような構造です。 |
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中に入ると地元の人らしい男性がいらっしゃいましたが、ひょっとして鄧氏の一族の方かも知れません。 |
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さらに駅の方へと向かっていくと、覲廷書室があります。門の前にあまりにも立派な外車が停まっていたので、通り過ぎてしまうところでした。 この覲廷書室は鄧一族の覲廷公が鄧氏一族の子女を教育するために作った学校跡です。子弟たちから科挙(中国の官僚登用試験)合格者を輩出指せるため、熱心な教育がなされたようです。 |
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覲廷書室にある祭壇です。こうやって屏山文物径(屏山歴史文化道)を歩いてみると、聚星楼や覲廷書室には科挙合格者輩出を目指した鄧一族の思いが感じられ、また、楊候古廟では学問の神様である関羽が祀られるなど、大変教育熱心な一族だったとことが見て取れます。 |
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こんな部屋で学問を教えていたのでしょう。私塾にこれだけの設備を整えるというのは、かなりの意気込みが感じられます。 |
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覲廷書室は建物構造においては、今回見て回った中では最も豪華です。私塾ですからもちろん大きな建物ではありませんが、装飾や備品などは最も金をかけているという感じがします。 |
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例によって、門の裏側は関羽と張飛の絵です。 |
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覲廷書室の壁にあった小さな神様。小さいけれどもいかにも学問の神様のような風采です。この神様や覲廷公の祭壇に向かって、沢山の子弟が科挙合格を祈ったことでしょう。 |
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こんな感じで天水圍から軽鉄坑尾村駅まで、屏山文物径(屏山歴史文化道)をブラブラ散策して約一時間。いつもと違う香港がこの道沿いにはあふれています。たまにはこんな香港を見て回るのも良いかもしれません。 |
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元朗の関連ページ |
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アジア写真帳(香港) 元朗と屏山文物径(屏山歴史文化道) アジアグルメ図鑑(香港) 香港元朗はB級グルメの街 元朗での飲茶は大栄華酒楼 元朗、好到底の蝦子撈麺と雲呑麺 人気スイーツ店、佳記甜品
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