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三馬路酒楼でオールド上海:アジアグルメ図鑑(上海)


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 三馬路とは(「夢のスマロ」とは)

上海のスマロ(四馬路)の古い写真

 かつてディックミネが歌った「夜霧のブルース」の一番は
  青い夜霧に 灯影が赤い
  どうせ俺らは 独り者
  夢のスマロ(四馬路)かホンキュー(虹口)の街か
  ああ 波の音にも 血が騒ぐ
という歌詞です。ここに出てくるスマロ(四馬路)は上海にある大通りの名前で、今の福州路です。当時、南京路が大馬路と呼ばれ、そのすぐ南を走る九江路が二馬路、三番目を走る漢口路が三馬路と呼ばれ、福州路は4番目を走るのでスマロ(四馬路)と呼ばれていました。因みに、馬路は大通りの意味ですが、当時は馬が走れるほどの道幅があれば大通りです。
 上の写真は清末の時代の福州路、すなわちスマロ(四馬路)です。かなりの賑わいですが、写真でも見れるように、スマロ(四馬路)は売春宿やアヘンがあふれる歓楽街で、「夜霧のブルース」の歌詞を改めて見ると、なるほど当時の日本軍人のやるせない気持ちがあふれています。因みにホンキュー(虹口)は日本人街で、こちらにも女性が相手をしてくれたお店はありましたし、行きつけの店に日本から出てきた馴染みの女性がいたのでしょう。

上海の三馬路酒楼

 さて、三馬路はその福州路に平行して隣を走る通りで、今は漢口路と呼ばれていることは既に書きました。この漢口路にオールド上海を感じさせる美味しい上海料理レストランを見つけました。その名は三馬路酒楼。地下鉄南京東路駅から歩いて2・3分です。

上海の三馬路酒楼のおしぼり
 
 ノスタルジックな雰囲気は店の外観だけではなくて、ウェットティッシュや名刺も。どうですか、この徹底したオールド上海ぶりは。
 おしぼり(ウェットティッシュ)の袋に出ている風景が、恐らくは当時の三馬路の風景なのでしょう。上海一の目抜き通りが南京路で南京路を中心にした一帯が上海一の盛り場だった様子が窺えます。

上海の三馬路酒楼の店内
 
 上と下の写真は三馬路酒楼の店内に飾られているオールド上海のポスターです。こういうの、好きだなあ。

上海の三馬路酒楼でオールド上海

 欧米列強に支配され発展してきた上海。南京路や外灘、さらにはフランス租界のエリアなどに、今もその影響を色濃く残しています。そうした西洋文化からの影響が上海の一つの魅力であることは、それによる悲惨な歴史に目をつぶれば、中国の人たちも肯定するものです。

 
 
 そんな上海の歴史に思いをいたしつつ、メニューから注文をしてみましょう。写真つきのメニューもありますから、中国語が分からない人でも心配ありません。メニューの表紙もなかなかのデザインです。


 とは言いつつも、この南京東路エリアは、外国人観光客に人気があるわけではないからでしょうか、この店で日本人を含めあまり外国人の姿を見かけることはありません。でも私としては、オールド上海の雰囲気を手軽な価格で体験できるこのレストランはおすすめなのです。外灘からも歩いて10分くらいですから、外灘見学の後にでも寄ればいいのにと思います。伝統的な上海料理を出してくれる良心的なレストランです。

 


 三馬路酒楼の冷菜はおすすめ


 さて、いよいよ料理の紹介に入ります。
 私は三馬路酒楼には何回か行っていますが、いつも昼飯です。たまたま南京東路付近で昼飯をとる時にふらっと立ち寄るのです。そういう気軽なレストランなのです。昼飯ですからそんなに重たい料理は注文しません。
 そこで注文するのが冷菜ということですが、一番のおすすめは鎮江肴肉です。三馬路酒楼では水晶肴肉という料理名になっています。鎮江は黒酢の産地としても有名で、鎮江肴肉はその鎮江名産の黒酢をつけて食べます。鎮江肴肉は豚もも肉を塩づけしたハムで、酒の肴にぴったりの味付けですから、困ったことに昼からお酒が欲しくなってしまいます。


 少し拡大してみました。水晶肴肉と命名されているだけあって、透明感があっておいしそうですね。鎮江肴肉については厚さ1cmくらいの薄切りにして出してくる店が多いですが、ここ三馬路酒楼では普通は厚切りで出てきます。高級レストランで食べると、このような角切りで出てくることがよくあります。歯応えも良く、大満足の一品です。


  実は以前に三馬路酒楼で水晶肴肉を食べたときは上の写真のように薄切りで出てきました。これはこれで美味しかったという記憶があります。

上海・三馬路酒楼の咸蛋黄鴨肉巻

 上の写真も冷菜で、鴨肉と卵の塩味ロール(咸蛋黄鴨肉巻)です。この料理は中国ではよく食べられている料理で、さっぱり・すっきりした味付けのなかで、鴨肉の味が生かされている料理です。こういう料理は、脂っこい料理の多い中華料理の中では、胃が休まるというか心が休まる料理です。

 この料理は前菜ですから、ビールや酒の肴として行ける味です。お酒を召し上がらない人でもお茶にも合う味です。



 三馬路酒楼の上海料理は上々の味付け


 野菜炒めに入ります。上海で有名な野菜炒めというと酒香草頭という料理で、草頭はクローバーのことです。クローバーを炒めた料理なのです。味としてはちょっと苦いので初めて食べたときは「何だこれは」と思いましたが、何回か食べるうちにそのほろ苦さが癖になってしまいます。この草頭(クローバー)を食べるのは上海を中心にその周辺くらいなのでしょうか、私は中国の他のエリアでこの料理に出くわしたことはありません。
 ただ、上海料理ですから砂糖と醤油を使って甘く味付けされています。私としては野菜炒めはやっぱり広東料理の方が好きですね。


 鮮筍馬頭頭という料理。写真つきのメニューでハート形に体裁よく盛りつけられているのを見て、思わず注文してしまった料理です。生の筍と馬藍草をみじん切りにしてハート形に盛り付けています。馬藍草はちょっと苦みがあって、酒香草頭よりさらにさっぱりとした味です。上海では酒香草頭の方がメジャーですが、私としては鮮筍馬頭頭も捨てがたいと思います。


 エビは 芥末虾仁にしてみました。芥末はマスタードのことですから、エビのマスタード味です。上海料理によく出てくる小エビをマスタード味で食べます。上海でのエビの食べ方としては清炒虾仁が一般的ですが、その他にも蟹味の蟹粉虾仁、お茶の味付けの龍井虾仁というように、有名な料理があります。上海の小エビは湖沼のエビですから味が淡白です。そこで、蟹味だったりお茶味だったり、味付けをしているのです。
 この三馬路酒楼ではマスタード味がおすすめです。マスタード味のエビを初めて食べましたが、これはこれで、それなりの美味しさです。なお、このレストランのメニューには清炒虾仁(水晶虾仁)や蟹粉虾仁もあります。

 
 でも、私がここ三馬路酒楼です好きなエビ料理というと、エビ入り玉子焼きです。ランチ時に行くことが多いということを書きましたが、実はこれがご飯に合うと言いますか、ご飯がすすむおかずになるのです。

 
 そこそこにエビが入っています。特にこのレストランの名物料理というわけではないですから、旅行などで来られた方には、上海らしい清炒虾仁(水晶虾仁)や蟹粉虾仁をおすすめします。



 
 上海らしい料理ということであれば、旅行者の方にお勧めしたいのは上海焼きそばです。このレストランの上海焼きそばは、いわゆる伝統的な上海焼きそばで、太麺です。このうどんのような麺が上海焼きそばの特徴なのです。私は上海に旅行に来た方と食べる時にはこの上海焼きそばをおすすめして食べてもらっていますが、概ね好評です。
 少し脂っこいですからレストランによっては油が強すぎて日本人の口に合わなかったりします。ただ、ここ三馬路酒楼の上海焼きそばは概ね好評です。

 
 焼きそばというのはどちらかというとB級グルメで、屋台で食べるのが筋かも知れません。ですけれども屋台では日本人に合う味付けになっていないこともあります。ということで、邪道ではありますが、こうしたレストランで旅行者の方に上海焼きそばを堪能してもらおうと思っているのです。

 
 
 三馬路酒楼のデザートの中で、私がおすすめしたいのは緑茶餅です。上海の隣、杭州は龍井茶の産地です。また、蘇州のあたりでは碧螺春が名産です。いずれも中国茶を代表する緑茶です。緑茶餅は緑茶で味付けされた餅にゴマをかけているのですが餅の中にはあんこが入っています。日本人の口にも会い、上海らしさも感じさせてくれるデザートです。

 
 三馬路酒家の料理は外れの少ない上々の上海料理ばかりです。豪華さには欠けるものの、オールド上海の香りにあふれた店内で上々の上海料理を味わってください。そんなオールド上海に触れた後、外灘(バンド)に出て租界時代の上海の街や黄浦江対岸に見える浦東地区のビル群を見学すると、上海の昔と今を感じさせてくれるはずです。



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