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沈万三は、元から明の時代に活躍した商人で、いわば政商というにふさわしい人物です。一代で巨大な富を築いたものの、明の初代皇帝からの圧力と江南地域の繁栄のために戦い、結局は僻地に流されてしまうという数奇な運命を辿った人生が、中国国民の人気を集め、小説やTVドラマで採り上げられているほどの有名人です。周庄(周荘)という街にとっては、その発展に最も大きな影響のあった人物でもあります。 沈万三が住んでいたのも周荘ですが、沈亭として公開されているのは沈万三の子孫が住んでいた邸宅です。上の写真は近くの橋から撮影したものですが、舟が泊まっている左側が沈亭です。 |
沈亭の入口です。間口は狭いのですが、奥行きガ相当にある建物で、大小100以上の部屋があります。前庁後堂建築で、道路に近い部分が客人の接待や冠婚葬祭などに使われていたスペースで、奥が家族の生活空間、いわゆる居宅部分になっています。より正確に言うと、道路を挟んで川沿いに沈亭の埠頭がありますので、沈亭は埠頭部分、来客空間と生活空間という三つの部分に分かれているということになります。 |
沈亭の隣に発つ松鶴楼。中に入りませんでしたが、「沈万三家がこの店でよく食事をした」旨が柱に書いてあり、粥麺、小吃という字も見えますので、レストランなのでしょう。松鶴楼というと蘇州にも同じ名前のレストランがありましたが、その蘇州の店と関係があるかどうかは分かりません。 |
沈亭の入口と道路を挟んだ反対側にある沈亭の埠頭です。 埠頭ですから周荘から船に乗って外出する時の玄関にあたります。周荘の場合は、かつては水路が一番の交通手段ですから、蘇州や楊州、さらに京杭運河を通って都の方に出るときにはこの埠頭が使われていたということになります。 また、沈亭の二階には商品の倉庫もありますが、仕入れた商品はこの埠頭からその倉庫へと運ばれたのでしょう。 |
沈亭の埠頭の向かい側には、周荘見学の遊覧船乗り場があります。8人乗りの小舟で一人百元で乗船できます。 |
埠頭から見る運河の様子です。この辺りは周荘らしい雰囲気があって、私は好きです。水に映る橋の影にも美しいものがあります。 |
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来客スペースにある部屋です。 沈万三の子孫はここで客人と打ち合わせをしていたのでしょう。落ち着いた雰囲気の重量感のある部屋です。 |
来客スペースにある門です。細かい彫りのある見事な門です。 |
生活空間にある家族用の食卓です。意外にテーブルが小さいですね。本当はもっと広いテーブルを使っていたのではないでしょうか。 我が家の家具も中国家具なのですが、我が家でさえもこの倍以上の広さのテーブルを使っています。 |
そして、テーブルの上の料理も見てみましょう。真ん中に周荘名物の万三蹄がありますね。これに地元の野菜や魚などが添えられています。 |
台所です。おそらくは明代に使われていた台所です。明代の台所としては、明るく広いですね。そして、見るからに清潔そうです。 |
台所に置かれていた数々の調理器具です。こちらは時代を感じさせるものですが、それぞれに風格のある調理器具です。 |
沈亭は奥行きのある建物だということは既に書きましたが、さらに二階建てになっていて、二階は走馬楼と言われています。この二階に入るためには、10間だったか忘れましたが別途料金を徴収されます。二階には寝室や書斎があったり、埠頭部分の上に倉庫もあったりして、当時の富豪の邸宅の構造がよく分かりますので、ご覧になることをおすすめします。 |
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写真上の豪華なベッドも二階にあります。老夫婦の寝室だとされています。王様のベッドのような寝台です。 |
二階にある主人のための居間です。茶道具などが置かれています。 |
二階の走馬楼は、上の写真にある通り延々と続いています。この沈亭という建物の奥行きのある構造が良く分かります。 |
また、一階に下りてきました。一階の脇に沈万三の物語が銅版で飾られています。壁一面に展開されていますが、中国語で書いてあるため、ストーリーが分からないと面白くないかもしれません。 |
もともと沈万三は元の朝廷との商売で富を築いてきただけに、明を築いた朱元璋からは、いろいろと無理難題を突きつけられていました。そうした無理難題に対しても一つひとつ確実に対応していた沈万三の姿が、ここに描かれています。 沈万三は怒涛のようにめまぐるしい一生を送った人ですが、その生涯は本当に起伏に富んだものです。今の周荘を見て、こんなのどかな街から中国の歴史を左右するそんな大物商人が生まれたなんてことは、まるで感じられません。でも、数ある水郷の街の中で、周荘が今も「江南第一の水郷」と呼ばれ続けているのも、沈万三のような大物を生んだ街だからなのかも知れません。沈亭を見た私の率直な感想です。 沈万三の一生について興味があれば、また、これから周庄(周荘)古鎮に行こうとしているなら、ぜひ左の小説を読んでみてください。この小説は中国でテレビドラマ化されただけあって、なかなか面白い内容です。 私なんかは、沈万三の行動力と意思決定力に感心してしまいます。明を築いた朱元璋との確執もよく描かれています。ビジネス小説として読んでも、また、歴史小説として読んでも、大変面白い小説です。沈万三も英雄だけに、なかなか女性には苦労したようですね。 |
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