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アジア写真帳(周荘) : 江南水郷の邸宅、張庁

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 張庁は、周荘古鎮にある豪商の邸宅です。もともとは明代に建てられた邸宅を清代初期に張氏が購入したもので、現存している張庁は中国江南地域における典型的な清代の文人の邸宅とされています。
 上の写真は周荘古鎮で最も有名な橋、双橋です。水路が交わる場所に作られた双橋は、一つの川をアーチ型の橋が、もう一つの川を平型の橋が、それぞれまたいでいて、独特の景を構成しています。
 このページで紹介する張庁は、この双橋のすぐ近くにあります。


 張庁の入口です。「周荘張庁」という文字が見えます。ここも沈亭と同じく、間口は狭いものの敷地や建物は奥に広がっています。張庁には、私塾もあって教育熱心な一面を覗かせており、全体的に造りは質素です。入口も華美なところがなく質実剛健といった雰囲気です。


 メインゲストホールの玉燕堂です。すっきりした客間で、絵画にしても家具にしても質素です。ある意味、落ち着いた雰囲気を持った部屋で、主人のお人柄が見えるようです。


 机や椅子も華奢なつくりで、観光で立派な客間ばかり見せられている私には、華奢な家具に見えますけど、そう意味では親しみも湧きます。私の家の客間も中国家具なのですが、私の家の方が豪華に見えるほどです。 


 上の写真は主人の書斎です。当時は壁面に書棚があって大変な蔵書数を誇っていたそうです。右側の窓の外には、池と庭が広がっています。最も良い立地に建てられた広々として明るい部屋は、読書好きな主人の趣味を感じさせます。


 私塾のあった建物です。科挙の制度が盛んだった時代には、地域の名士の中には徳のある知識人を講師として招聘し、近隣の子女を対象に私塾を開く人が多かったようです。張庁は、まさにそうした私塾の一つであり、おそらく周荘の街では最も評判の高い私塾であったと想像されます。

 



 張庁内の庭園です。蘇州の大庭園を見慣れてしまうと、張庁の庭園で驚きを感じることは少ないのですが、ほどほどの広さがあって落ち着いた庭園です。美しい鋪地(敷石)と自然な感じの木々や石が見事に調和された庭園です。


 庭の中心的な景である築山です。この石は周荘近くの南湖から運ばれたと言われています。華美ではないですが、品の良い築山で、心休まる空間です。主人が読書したり私塾の生徒が勉強したりしている合間に、この庭で暫くの休息をとったのだろうと思われます。

 張庁の庭園近く、ということは入口から入ると敷地の奥の方には、池があります。この池はちょうど小舟が向きを変えられる程度の大きさです。
 駕篭は陸路で正門に入り、小舟は敷地の中まで入るという江南水郷ならではの構造ですが、見方を変えると、特に社会が混乱していた清朝初期の時代においては、有事があると、豪商が多かった周荘では、表の正門を閉じ裏から小舟で主人が逃げられるような逃げ道を用意しないと物騒だったという時代背景も見えてきます。


 上の写真の通り、池は建物の下を潜り抜けて、当時の公道である水路につながっていて、有事の際は主人はこの抜け道を通って逃げられるようになっているのです。


 もちろん、今の周荘古鎮ではそんな物騒なことはありません。池で遊ぶ水鳥が平和な周荘を象徴しているかのようです。


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