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「現代中国小説」勝手格付……現代中国を読んでみよう!





これはおすすめ

  

  

はじめに


永年の友人・大切な隣人である中国と中国人を理解していくうえでは、現代の中国を舞台にした小説を読むことも有効です。そのような小説は数多くありますが、現代中国作家の小説では、まだまだ、和訳されたものは少ないと思われます。

そこで、このコーナーでは、中国人作家の小説に加え、日本人の作家による現代中国を舞台にした小説も紹介し、独断と偏見で、中国の理解にどの程度役立つのかを勝手に格付したいと思っています。

自分の読んだ小説だけですので、あまり数多くのものを紹介できませんが、私がこれまで読んだ作品のうち、記憶に残っているものを、下表に紹介しています。掲載されている小説以外に、何かおすすめの小説等がありましたら、メールで教えて下さい。

私が思うに、現代中国の歴史というのは、庶民から見ると政治に翻弄された歴史ではないかと思います。直近では、文化大革命もありましたし、天安門事件もありました。そして、それらを乗り越えて、改革解放の時代に今はなっています。ところが、改革・解放の中で、今度は都市と農村の貧富の差が中国にとって大きな問題になっています。
もっと遡れば、日中戦争の時代も悲惨な時代でしたし、それを招来した
清の末期のアヘン戦争や辛亥革命、そして国共のせめぎ合いと、休む間もなく戦争が続いていました。

こうした歴史背景の中で、最近の中国文学には、興味深い作品が少なくありません。現代中国と中国人を理解していくために、もっと数多くの中国現代作家の著作が和訳され、一層多くの日本人に読まれる時代が来ることを期待するとともに、日本においても、中国文学のファンが増えることを願ってやみません。



 勝手格付の評価基準 

総合評価

 ビジネスマンの目で、次の5区分で評価しています。
    S:絶対に必見  A:必見  B:おすすめ  C:お暇なら  D:時間の無駄

項目評価

 次の6つの視点から5段階評価(「5」が最も高く、「1」が最も低い。) しています。

文学度

→ いわゆる文学として優れているかという点です。但し、判断は「そんざー」の個人的な
  ものですので、あてにならないと考えて下さい。

政治度

→ 中国の政治背景を知るうえで有益か否か、という視点からのポイントです。

ビジネス度

→ 中国でのビジネスを知るうえで有益か否か、という視点からのポイントです。

文化度

→ 現代中国の文化や生活を理解するうえで有益か否か、という視点からのポイントです。

ストーリー性

→ 小説としてのストーリー性・読み応えという視点からのポイントです。

コミカル度

→ 内容のコミカル度という視点からのポイントです。

 「現代中国小説」勝手格付メニュー 

 絶対に必見の作品         
 文学性の高い作品  
 文化大革命や天安門事件を背景にした作品  
 日中関係を考えさせられる作品  
   
 私が読んだ中国現代小説リスト  



 絶対に必見の作品 

作者 作品名 出版社 初版 総合
評価
項 目 評 価 備    考
文学
政治
ビジネス 文化
ストーリー性 コミカル度
張戎 ワイルドスワン
・下)
講談社 93年 S  文化大革命時代の知識階層の苦悩と悲劇を描いた傑作。中国にも、文化大革命を知らない若者も増えてきましたが、こういう悲惨な時代があったからこそ、今の中国があると思います。(文庫本あり)
買平凹 廃都(・下) 中央公論 93年 S
中国の都市の文化人の苦悩を描いた作品です。つくづく中国社会の難しさを知ることができます。
大胆な性描写で中国では発禁本。
虹影 飢餓の娘 集英社 97年 S 重慶のスラム街から這い上がる一人の少女の闘いを描いた自伝的小説です。少女の心の成長がよく描写されている。ストーリー性も素晴らしく感動的です。
莫言 豊乳肥臀 平凡社 95年 S 日本統治の時代から現代までの農村の変化を描いた問題作。政治体制の変化に翻弄される人々の生活に焦点を当てています。中国では禁書。
谷崎
潤一郎
上海交遊記 みすず
書房
04年 S 5 3 2 5 5 1 谷崎潤一郎は大の中国好きとして知られていますが、中国旅行での紀行文や旅行後に書かれた小説などが収められた一冊です。「上海交遊記」「蘇州紀行」「西湖の月」や「鶴唳」など秀作が多い。
莫言 転生夢現 中央公論新社 06年 S 莫言の新作。中華人民共和国の成立から文化大革命を経て現代に至るまでの農村の姿を、元地主から転生したロバ、牛、豚、犬、猿の目を通して、赤裸々に描く問題作。
鄭念 上海の
長い夜
原書房 88年 S 5 5 3 5 5 1 元国民党政府外交官の未亡人が書いた文革時代の実体験。文革が当時の中国人に残した精神的な傷跡を赤裸々に描いています。「ワイルドスワン並みに迫力ある展開です。
陳舜臣 北京の旅 たちばな
出版
78年 これは小説ではなくエッセイです。北京の見所を歴史的な背景や文化的な背景をふまえて紹介しています。陳舜臣ならではのウンチクが感じられます。30年以上前の作品ですが、大変参考になります。
海 岩 五星大飯店
Five Star Hotel
講談社 09年 NHKで2008年に放映されたドラマの原作。五つ星ホテルを舞台に、現代中国のバブル経済や拝金主義を鋭く描いたサスペンス小説です。実際にありそうな話で興味深く読めます。純粋すぎる若者たちと腐敗した年配者たちの対比も面白い。
アイリーン ライ 白いスイトピー 論創社 95年 S 3 2 3 4 5 1 香港の小説。香港の新聞「星島日報」に連載された小説を単行本化したもの。スチュワーデスが引退した香港スターとの不倫小説だが、これに遺産相続の話が加わり、ストーリーは意外な結末を迎える。
鉄凝 大浴女―
水浴する女たち
中央公論新社 04年 S 末妹の死の残像に苛まれつつ、恋愛遍歴を重ねる主人公、中国から米国に渡りアイデンティティを見失うその妹、私生児の境遇から美貌を武器にのしあがろうとする友人など、女性の成長を通して、文化大革命以降の中国人の生活・文化や価値観の変化等をよく描いています。
茅野裕城子 西安の柘榴
(せいあんの
ざくろ)
集英社 04年 作者はモデル・女優等を経て92年に中国留学し、以来、中国をベースにした作品を発表している。この本は短編集で、特に、「オリーブのために」あたりの心情は同感だ。近年の中国の急速な発展と国や人心の歪みがよく描かれている。
山崎
洋子
炎精
(かげろう)
毎日新聞社 02年 S 4 4 3 4 5 2 租界時代の上海を舞台にした小説。娼婦の娘として生まれた主人公は、満州国建国後の権力者の様々な思惑の中で翻弄されながらも逞しく生きていく。的確な時代考証をふまえたストーリー性の強い作品で、手に汗を握る展開は一読の価値がある。
余 華 兄弟 文藝春秋 08年 文革編と解放経済編とから構成されている。文革については文化人の立場から描いた作品は多いが、この作品では貧農の立場から悲劇が描かれている。解放経済編では、若干誇張されているものの、ありそうな話で、ビジネスマンは必見。中国人の原点が見える気がする作品。
小泉譲  顔のない城〈上〉―上海物語1930年上海 批評社 94年 S 4 5 4 4  5 1 1930年頃の上海を舞台に、中国人民の開放に魂を捧げた日本人青年の姿を描いた力作。その後、日本で事件を起こしたゾルゲ、尾崎、スメドレー達との関わりや中国人活動家・資本家との親交なども描かれている。満鉄調査部に勤務していた作者ならではの的確な時代考証は、当時の政情を考えるとき、大変参考になる。
小泉譲  評伝 魯迅と内山完造 五月書房   89年  4  5 4 1 日中戦争のさなかに国民党から指名手配された魯迅を友人として守り続けたのが、上海内山書店の内山完造です。この作品は小説ではなく、魯迅と完造の友情・連帯を記した伝記です。内山完造の行動には日中友好運動の原点があり、日中関係が芳しくない現代だからこそ、中国でビジネスをする者にとって教えられるものが多い作品です。
六六 上海、かたつむりの家
原作名「蝸居」
プレジ
デント社 
12年 S 4 5 5 5 3 今、中国では貧富の拡大、土地の高騰、住宅問題、官僚の汚職、不倫・愛人問題、ローン地獄など、日本が10年以上かけて経験した時代を一度に通過し、社会にひずみが出てきています。そうした現代の上海に住む男女4人を中心とした物語で、北京でTVドラマ化され大人気を博したものの、あまりにも現実を描いているためか、上海では途中打ち切り、その他の都市では放映されなくなってしまいました。
今の中国社会の根深い問題が分かる問題作です。
余 華 活きる 角川
書店
02年 S 5 4 4 5 5 2 作者のあとがきによれば、「活きる」とは「生き残る」ことではなく「生き続けること」であり、言い換えれば「自分の人生を実感する」ことだという。この小説の主人公は地主の息子として生まれ、放蕩の挙句に貧農に身を落とし、家族を次々と失うなど、決して恵まれた人生とは言えない。しかし、生き続けることが楽しいことなのだと我々に教えてくれる。国家や文化等を超えて読む者に感動を与えるのは、それが人間の普遍性だからなのかもしれない。
1994年に張芸謀(ジャン・イーモウ)監督により映画化され、カンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞した作品。
余 華 血を売る男 河出書房新社 13年 S 5 4 3 5 5 4  時代は20世紀後半、中国の大躍進や文化大革命といった大きな社会変化のなかで、貧しい一家を支えるため、売血で金を稼ぎながら家族の平和を実現していく物語。登場する人物が個性豊かに描かれており、たくましさ、優しさ、愛情や憎しみ、そしてこの時代の中国庶民の価値観や道徳観が赤裸々に描かれている。緊張感のある時代の涙なくしては聞けないような話なのだが、主人公やその妻の性格や行動のユーモラスさに思わず笑い転げてしまう。余華の傑作。
 吉田
修一
路(ルウ) 文芸春秋社   12年  S  5  4  5  3  台湾新幹線の開業に携わった若い女性商社社員を主人公に、台湾ビジネスや台湾の人々とのふれあいを描いた傑作。台湾からの引揚者や台湾新幹線に関わった台湾人も副主人公と言っても良いでしょう。日本人と台湾人の絆の強さを改めて感じさせてくれる作品です。日本には台湾のファンが多いのですが、それ以上に日本ファンの台湾人は多いものです。台湾を好きになる日本人をもっと増やしたいと思いつつ、この小説を強力に推薦します。
劉 剛 天安門の
パンドラ
扶桑社  10年 S 3 5 3 4 5 1  作者は六四天安門事件を主導し指名手配された21人に名を連ねた元学生リーダー。天安門事件後留置された秦城監獄で鉄血の男とも呼ばれ、出獄後アメリカへ亡命した。天安門事件の当日の出来事よりも事件前夜の報道されていない動きが克明に描かれたドキュメンタリー小説である。作者自身は一部にフィクションが入っていると言っているが、どこまでが真実なのかは読者の判断である。
楊 逸 時が滲む朝  文春文庫  11年 S 4 5 3 3 3 2  第139回芥川賞受賞作品。中国の田舎出身の純粋な大学生が民主化運動に加わり六四天安門事件で挫折するまでとその後の人生を描いた作品。愛国とは何か、人生とは何かを問いかける作品である一方、思想的に身動きの取れない現代中国人の悩みと迷いが理解できる作品ともいえる。
作者 作品名 出版社 初版 総合
評価
項 目 評 価 備    考
文学
政治
ビジネス 文化
ストーリー性 コミカル度

評価基準


  トップページ     絶対に必見の作品
 文学性の高い作品   文化大革命や天安門事件を背景にした作品   日中関係を考えさせられる作品 
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