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アジアグルメ図鑑(上海・中国江南):蔵楽坊の広東料理


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 上海で美味しい中華料理を食べるなら、上海料理レストランを選ぶのが無難です。何故なら上海には上海料理レストランの数がもっとも多く、それらのレストランが味やサービスをしのぎを削っているからです。でも、連日連夜、醤油こってり系の上海料理を食べるのは、胃にちょっときついという方や、上海が二度目・三度目でたまには他の料理も食べたいとか、香港で食べた中華料理が忘れられない、といった方には、広東料理の名店がおすすめです。
 私が行った上海の広東料理レストランでおすすめできる店には、丁香花園の申粤軒南京路の新雅粤菜館虹橋の満福楼などがありますが、これらの店では香港や広州で食べる広東料理に肩を並べる味を楽しむことが出来ます。
 今回、私が行ったレストランは、ちょっとお洒落に洋館で広東料理を食べさせてくれる蔵楽坊です。地下鉄の?西南路駅に近い長楽路のフランス租界のエリアに建つ洋館のレストランです。洋館のレストランは老房子レストランなどといわれ、本当は昼間に行くと建物や庭の素晴らしさも楽しめるのですが、今日は暗くなってからのディナーです。店内風景だけの紹介です。上の写真の通り、内装はお洒落ですし、客層もレベルが高いようです。



 蔵楽坊に入ると、分厚いメニューを渡されてメニュー選びになります。中華料理レストランでの楽しみの一つがメニュー選択です。私の場合はメニューにある料理名を見ながら出来上がった料理を想像し、考えただけで思わず唾液が出そうな名前の料理を選択するのです。ただ、その域に達するまでは回数をこなすことも必要ですし、また、中国語の壁もありますので、一般的な日本人としてはやはり写真がついているのがベストでしょう。
 この蔵楽坊では写真付きのメニューがあり写真を見ながら味を想像することが出来ますので、広東料理に詳しくない人もメニュー選びを楽しむことが出来ます。
 最初に出てきた料理は、エビの冷菜です。上海料理でよく使われる川エビではなく海のエビですので、プリプリ感が違います。広東料理らしくさっぱり味のソースがエビのうまみを引き立てます。見た目も美しく、味もなかなかです。広東料理らしいお洒落な逸品です。


 次に出てきましたのは、緑野菜の湯葉巻きです。旨いです。緑野菜は春菊でしょうか。さっぱりした味付けで、胃にやさしい料理です。中華料理というと、何でも脂っこかったり味付けが濃かったりしているのではないかと誤解している日本人が多いのですが、そんなことはありません。日本で食べさせられる中華料理がそういう味付けなのであって、本場中国では、特に広東料理では、こうした胃にやさしい料理も色々とあるのです。
 かつてはこういう冷菜を食べながらお酒を飲むのが私の広東料理の楽しみ方だったのですが、最近はお酒の消費量をぐっと減らしていますので、今日もお茶を飲みながらのディナーです。
 ご参考までに言いますと、ここ蔵楽坊には色々なワインが置いてあります。ワインは広東料理に合いますので、中国だからといって紹興酒ばかり飲むのではなく、たまにはワインで広東料理を楽しむのも、上海旅行の良い思い出になると思います。


 香菜の肉巻き(香菜白肉巻)です。これも冷菜です。この日は冷菜に偏った注文になっていますが、中国に来ると昼飯も腹いっぱいに食べてしまうので、夕食はちょっと胃にやさしい料理にしたくなってしまうのです。
 この料理は香菜が食べられる人には何ともたまらなく旨い料理なのではないでしょうか。ガーリックもよく効いていますので、この料理を食べれば旅行の疲れも翌日には回復できます。白肉というのは茹でた豚バラ肉のことです。雲白肉が日本でも有名ですね。雲白肉の場合は辣椒醤という辛味と酸味が強い調味料などで味付けをするので、辛さが苦手な人にはあまりおすすめできないのですが、この香菜の肉巻きは刺激的な辛さがなく食べやすいと思います。そういった味付けが広東料理の特徴なのです。

 



 今度は鶏肉の冷菜です。鶏肉の紹興酒蒸しです。紹興酒の香りがほんのりと感じられ、肉は柔らかくうまみがあります。これは絶品の味です。私はこの料理を色々な店で食べていますが、ここ蔵楽坊の味は忘れられない味です。
 そんなことで、ここまで、エビ、野菜、豚肉、鶏肉とバランスよく食べてきました。中国料理のメニューを考えるときに大切なのはこうしたバランスです。エビはむしろ白灼蝦(蒸しエビ)にした方が、変化があってよかったのですが、実は、前日に海鮮料理店で白灼蝦(蒸しエビ)は食べていたものですから、上のようなメニュー構成になったわけです。


 いよいよここからメインディッシュです。
 広東料理の蔵楽坊に来たのですから、本来であれば清蒸石班(蒸しガルーパ)という魚料理を食べるのが私流です。この日は二人だけで食べに来たのですが、清蒸石班を食べるなら三人くらいいないと食べ切れなくてもったいないということで、残念ながら諦めました。そこでメニューを詳細にチェックすると、なんと一人分ずつの注文が出来るメインディッシュがあったのです。中国ではどうしても大皿料理になるので少人数で食べに行くと食べ切れないでもったいないことをしてしまうことが多いのですが、これは助かります。
 一つ分ずつ注文できる料理から、まず、杭州料理の定番、東坡肉です。東坡肉は広東料理ではありませんが、そういえば最近食べていないので、ちょっと食べたくなってしまいました。東坡肉は脂身のある豚肉をトロトロになるまで、醤油漬けで長時間煮込んだ料理で、見た目ほど脂っこくないのが特徴です。ここ蔵楽坊の東坡肉も柔らかく煮込んであって、しかもギトギトしていません。合格です。
 但し、添えられているご飯がいけません。硬くてボロボロで、手に負えません。ご飯はそっくり残しました。



 そして、金華ハム(金華火腿)の饅頭包みです。金華ハムは中国浙江省にある金華市周辺で作られたハムで、塩味が強く肉の味も濃いのが特徴で、Wikipediaによれば、世界三大ハムの一つだとされています。確かに、塩気が強く味も濃いですので、私も以前に金華市で買った金華ハムをチャーハンの具やスープのだし作りに使いました。
 ここ上海の蔵楽坊では饅頭(中国パン)に挟んで食べます。この食べ方は、私が以前に金華市に行ったときにも経験した食べ方で、当時も旨くて大変感動したことを覚えています。


 饅頭に包むとこんな感じです。ふっくらしていてほんのり甘みがある饅頭と金華ハムの相性は抜群です。今度金華ハムを買ったら、家で毎朝食べるバインミー(ベトナムのサンドイッチ)の具にしないといけないですね。
 これは旨い!
 広東料理ではない東坡肉と金華ハム(金華火腿)の饅頭包みでしたが、軍配は圧倒的に金華ハムの饅頭包みです。金華ハムの饅頭包みを食べた後には、東坡肉を注文したのは失敗だったと感じたくらいです。




 さて、メインディッシュは肉ばかり食べてしまいましたので、胃がちょっと疲れ気味になっていますが、食後のデザートは別腹です。こんなことを言っているからカロリー過多になってしまうわけですが、食欲には勝てません。
 デザートの一つ目は広東料理のデザートの定番、マンゴープリンです。ご覧の通り、魚の形で可愛らしくできています。私は尻尾の方を食べましたが、鯛焼きではないのですから、尻尾だろうと頭だろうと中に餡子が多いとか少ないだとかいうことはありませんので、同行者と仲良く分けました。
 味は至って普通のマンゴープリンです。因みにメニューには中国語で「香芒(マンゴー)美人?」と書かれていました。どうでしょうか?こういう名前の付け方、いいですね。


 そして、もう一つのデザートはドリアンパイです。大きなお皿に小さいパイが3つ、寂しそうに乗せられています。この盛り付け、ちょっと殺風景ですね。もっと大きいパイが来るかと思っていたので、ちょっと拍子抜けです。


 でも、食べてみると中はドリアンが一杯です。ドリアン好きの私にはたまらない味です。ドリアンそのものを食べているかのような気分ですが、さらに甘みを加えているので甘い。だけど、甘すぎない絶妙の味です。もう一皿食べたくなります。

 この蔵楽坊、一つひとつの皿の盛り付けは少なめですので、少人数で行っても沢山の料理を注文できます。この日も二人で行ったのに6品注文しましたし、一人分ずつ注文できるメニューもあるので助かります。この日も、二人組のお客さんが少なくなかったという印象です。
 そして、料理単価も意外に低いのです。この日も以上の料理と普?茶を注文して、合計で300元以下(2011年9月現在)ですから、日本円に換算して一人2,000円以下ということになります。店の雰囲気やサービスも合わせ考えると、大満足のレストランです。



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