メークロン市場 |
列車が店の軒先すれすれに駆け抜ける市場、列車が通らない時間帯は線路上もマーケットと化している鉄道、そんな光景で有名なのが、タイのメークロンマーケットです。正式にはLom Hup マーケットという名がついていますが、英語圏では「メークロン・トレイン・マーケット」と言われているようです。 このマーケットが所在するメークロンという街は、バンコクから100qくらいの距離にあります。鉄道や普通の乗合バスといった交通機関では行きづらい場所にあるため、多くの日本人はツアーに入って観光バスで行くようです。旅行というのは計画を立てることから始まると考えている私としては、観光バスで行くのはあまりおすすめしていません。 メークロンへの行き方についてはこちらのページに記載しておきましたので参考にしてください。 |
さて、市場の中を軒先すれすれに列車が走るメークロン・トレイン・マーケットがあるメークロンはそんなに大きな街ではありません。上の地図に表示されている「メークロン駅」「メークロンマーケット」と「メークロンのロットゥー乗場」の三つの位置関係を頭に入れておけさえすれば、迷子になることはありません。。 メークロン散策の起点となるのは、タイ国鉄のメークロン駅とロットゥー乗場です。いずれも上の地図に表示されています。 |
メークロンマーケットの中です。メークロンマーケットというと線路沿いにしかないのかと勘違いされている方がいるかもしれませんが、実は上の写真のように広々としているのです。恐らくは、この市場が大きくなっていく(スペースが広くなっていく)過程で、列車の線路の反対側まで広がっていってしまって、列車本数が少ないものだからいつの間にか線路の上までマーケットになってしまったというのが、この奇怪なマーケットが誕生した経緯ではないでしょうか。上の地図を見ていただいても、もともとグーグルの地図上にMaeklong Marketと表示されている場所は、線路の下にあります。上の写真も線路の南側(地図では下)のところです。 ですから、このマーケットの中で線路上のマーケットはごく一部です。列車が走るときは、このマーケットに来ているすべての観光客が線路沿いに集中するので大変な混雑になりますが、それは線路沿いの一部の光景に過ぎません。 |
こんな田舎町にどうしてこんなに大きなマーケットが存在しうるのか不思議な感じもしますが、近隣の町や村からも買い物客が集まってくるのでしょう。マーケットの中はタイ人でいっぱいです。上の写真の左のお姉さんは、このマーケットの売り子の人たちに子供服を売る商売をしています。店を回って「今日は可愛い服が入っているわよ」とか言っているのでしょう。もちろん、彼女の頭の中にはこのマーケットで働く人々の家族構成や性格などがぎっしりと詰まっているに違いありません。 そんなことまで考えながら、マーケットを見て回るのは大変楽しいものなのです。 |
こちらの魚屋さんでは、お客さんと女主人が真剣な眼差しで品定めをしています。ここの店のお魚は鮮度の良いものが並んでいました。 |
蟹もたくさんの店で売られています。タイの蟹はワタリガニが主流です。日本のような温帯地方では北方の大型の蟹が好まれますが、タイのような熱帯地方で蟹というとは中小型の蟹が数種類で、その代表がワタリガニなのです。 |
こちらの店では蟹や蝦も扱っていましたが、メインはイカです。美味しそうなイカが並んでいます。 |
お肉屋さんもあります。この店は鶏のローストを売る専門店で、香ばしい香りがこの一帯に広がります。焼きあがった色も美味しそうで買って帰りたいくらいです。 さきほども書きましたが、メークロンマーケットというのはこういうマーケットの中に鉄道の線路が入り込んでいるのです。線路沿いには外国人があふれ、線路から離れるとタイ人があふれていますが、その他のエリアはまさにタイ人のマーケットとして活気にあふれています。 私はアジアの街に行くと、その街の生鮮市場を見て回るのが好きで、例えばバンコクではクロントーイ市場、ホーチミンならチョロンのサータイ市場なのですが、カンボジアのシェムリアップならプサールー・マーケットといった庶民の市場を見ることで、その国の人々の暮らしや生活を垣間見ているわけです。 そうした意味では、観光地だけ回っていてもその国が見せようとしている「よそ行きの顔」しか見えないのですが、庶民の暮らしを見ることでその国の素顔が見れるということになるのです。 |
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線路上もマーケットです |
では、そろそろ市場の中を線路上のマーケットへと移動しましょう。 と言うか、歩いているうちにいつの間にか線路上のマーケットに来ていました。上の写真の通り、テントが張ってあるので雨の日でも傘は不要です。もちろん、これらのテントは列車が通過するたびに撤去されるわけです。 |
線路の間には板が敷いてあって歩きやすくなっています。 このあたりは野菜屋さんの売場ですね。線路上に商品を置くと列車が通るたびに撤去しないといけませんので、この店では線路上には商品をあまり置いていません。でも、線路の脇で列車の床よりも低い高さであれば商品は置きっぱなしにできますので、そのスペースは有効に使われています。 |
この辺りは水産物です。商品が分かりづらいのですが、蟹、貝、そして手前にイカも見えます。 こういう水産物も線路上で売られています。水産物や精肉といった商店で難しいことは、列車の通過に支障のないように列車の通過ごとに商品を撤去するといったことに加えて、テントを外す際に、テントを外す前に商品を必ずその前に日陰に移動させる必要があることです。 ここのマーケットでは地元のタイの人々がお客さんです。このマーケットには数えきれないほどのお店が入っていますから、鮮度が悪いとなればお客さんが他の店に行ってしまうのです。ですから、列車通過の際に手際よく順序正しく商品を移動させることが大切なのです。 |
この店では線路のかなりギリギリまで蟹を並べていますけど、この高さなら列車にはぶつからないものの、列車の通過前後に直射日光に当たってしまうことをどのように考えるでしょうか。 奥の八百屋さんはあの位置まで商品を前進させてしまうと列車の車輪にぶつかってしまうでしょう。きっと事前に移動させるでしょうね。 こんなことを考えつつ、列車が通過する際にどの位置で待つべきかをイメージしています。 |
上の写真も線路脇です。さすがに魚などの商品を陳列している棚は列車通過時に列車とぶつからない位置に設置されています。 上の写真で店に群がっている人の殆どすべてが観光客です。写真は撮ってくれますけど商品は買ってくれません。これで商売が成り立つのだろうか、商品は売り切れるのだろうか、とこちらが心配したくなります。、 |
ここも水産物です。美味しそうなエビが線路ギリギリに置かれています。これらのケースは列車通過時の移動対象でしょうね。この辺りの水産専門店の中ではここの商品が一番良さそうでした。あるいは陳列が一番きれいだったのでしょうか。 |
お肉屋さんもあります。上の写真も線路脇です。タイでは肉をぶら下げてお客さんに選ばせたうえで好きなところを切ってあげるというスタイルが多いのですが、この線路脇の肉屋ではそんなことはできません。何故ならば、列車通過に伴いテントを外した際に、肉に直射日光が当たり商品がダメになってしまうからです。 |
そして、タイ人が大好きなお花屋さんも線路脇にあります。 ということで、メークロン市場は、タイの街にある普通のマーケットと同じ庶民のための市場であって、そこに線路が走っているだけです。そしてその線路脇にも庶民のためのマーケットが違和感なく広がっているのです。 |
線路脇のマーケットも端から端まで1往復して、列車通過時に自分が立つ位置を決めました。ギリギリになって線路脇に立とうとしても観光客がいっぱいで建てなくなってしまいますから、ここでのポジショニングは大変大切なのです。 私が選んだエリアはここです。 |
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いよいよマーケットの中を列車が通過します |
この市場を列車が通過するのは1日8回です。つまり列車は4往復しかしません。それ以外の時間は普通のマーケットです。次の列車はバーンレーム発メークロン行きの11時10分発の列車です。 列車が近づくと、到着する5分くらい前だったでしょうか。この一帯に音楽が流れタイ語のアナウンスがあります。何を言っているか分かりませんでしたが、続いて英語のアナウンスがあり、列車が近づいているので安全に気を付けましょうと言っています。 この音楽が流れ始めるや否や、お店の人は商品を線路近くから移動させます。左の女性はミカンの袋を後ろの台の方に一つずつ移動させています。 |
そして、移動を終了させた後にテントをたたみ、列車が通るスペースを開けます。何という手際の良さでしょう。できるだけ商品に日が当たらないように、随分とお店の前を整理した様子がうかがえます。 |
テントがたたまれ、線路のスペースが開かれると、観光客は向こうから近づいてくる列車の写真を撮ろうとカメラを構えます。しかし、この時間に線路上に出てしまうと、線路脇にせっかく確保した自分の立ち位置が他の観光客にとられてしまいますので、私は我慢して自分のポジショニングから動きません。 |
列車の車幅は線路の幅より広いのは皆さんご存知だと思います。したがって、上の写真で言えば、テントの軒先には立てても人が一人です。立てないことだってあります。列車が近づき危ない場合は、店の奥まで引っ込むことになってしまいかねませんから、店と店の間の通路の一番前を確保することがポイントです。 |
先ほどテントをたたんでいたおばさんの店は余裕綽々で列車の通過を待っています。 エンジの横縞シャツのヨーロッパの紳士は、もうちょっと前にポジションを取らないと誰かが前に来てしまいますよ。さすがに紳士です。悠然と列車を待ちます。 |
列車が近づきます。この瞬間を待っていたのです。汽笛をピーピー鳴らしています。近づきすぎて危ない観光客が多いのでしょう。 その時です。私の左にいてタブレットを操っていた女性が線路の前に現れ、写真を撮ろうとしています。しかも写真を撮るのに時間がかかっています。迷惑なやつです。こちらは構図も決めて列車を待っていたのですが、彼女の頭にピントが合ってしまいました。 |
ようやく彼女がどいてくれました。 連写して撮影した一枚です。すごい迫力です。 ここでも電車がピーピー泣きながら走ってくれました。誰か危ない奴がいたのでしょう。テントの軒先と列車との間隔は上の写真を見るとお分かりの通り、人間一人分はありません。テントを後ろに押しながら立つ格好になります。 線路の向かい側に立っていた観光客のなかには恰幅の良い方が多いので、お腹のあたりが列車にぶつかりそうです。私の左に立っていた迷惑なお姉さんの肩も列車にぶつかりそうです。私も列車にぶつかるギリギリの位置だったようで、お店の人が私の腰のあたりを押さえていてくれました。 ということで、マーケットが大興奮に包まれるなか、列車は通過していきました。 |
列車は通過してすぐ先のメークロン駅に入ろうとしています。時速20q か30q前後のスピードで列車は走っていきます。思っていたよりスピードを落とさないで走るので、安全には気を付けましょう。 |
通過した列車の向こうにメークロン駅の屋根が見えます。そうなんです。私が陣取った場所は比較的メークロン駅の近くだったのです。 上の写真で見ると、線路脇の商品は線路の横に残されているのが見えます。あの商品の上を列車の車体が通過していったのです。 |
まだ、列車は駅に着いていません。ですから、まだ列車は通過したばかりです。でも、どうでしょうか。何とテントづくりがもう始まっています。この店はテントを片付けるのも早かったけれども、テントづくりも早いです。手際が素晴らしく良いお店です。 |
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テントをつけたら、商品の陳列です。線路脇に商品を丁寧に並べます。値札も分かりやすく立てます。 |
こちらのお店も商品を再陳列中です。 列車が通過するたび、つまり一日に8回、この撤去・陳列作業をするのですね。 |
メークロン駅に着いた列車です。二両編成の田舎列車です。今日はこれからこの列車に乗って、バンコクに帰ります。途中で港町マハチャイで乗り換えですので、そのマハチャイでシーフードを食べる予定です。 メークロン駅の様子、メークロンからマハチャイへの移動、マハチャイのマーケットやマハチャイのシーフードレストランについては、今後、別ページで紹介していきます。 |
ご参考までに、マハチャイ駅にあったタイ国鉄の時刻表です。 上の写真で左側3列はマハチャイ発ウォンウェイヤイ行きの列車時刻表で、列車番号、マハチャイ発車予定時刻、ウォンウェイヤイ到着予定時刻です。 右側の3列で上下になっているのが、上はバーンレーム発メークロン行き、下はメークロン発バーンレーム行きの列車時刻表です。1日にわずか4往復なのです。左から順に、列車番号、発車予定時刻、到着予定時刻と並んでいます。 バーンレーム発メークロン行きの列車時刻表では次のようになっています。(2014年11月に撮影したものです。 よく変更されるのでご注意ください。) 7:30 → 8:30 10:10 →11:10 13:30 →14:30 16:40 →17:40 逆にメークロン発バーンレーム行きの列車時刻表は次のようになっています。 6:20 → 7:20 9:00 →10:00 11:30 →12:30 15:30 →16:30 つまり、この時刻表でメークロン駅の発着時刻の前後が、このマーケットの中を列車が通過する時刻になります。 |
最後に、この日の私の行動をご説明しましょう。私が考えたメークロンとマハチャイ一日旅行です。行きにロットゥーを利用し、帰りにタイ国鉄を利用しています。なぜ、このようなルートを通るようにしたかは計画の概要のページを参照してください。そのポイントは次の通りです。
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アジア写真帳(タイ・メークロン) |