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アジア写真帳(紹興)−魯迅故居


アジア写真帳(紹興)


 紹興という街の名前を聞いで、日本人が思い起こすのは、第一に紹興酒、そして次に、この魯迅です。魯迅は、紹興で生まれ、16歳まで、この紹興で暮らしています。「魯迅故居」というのは、中国各地にありますが、少年期を過ごした場所ということで、まさに、魯迅の故郷なのです。

 魯迅は、日本の大学に入学し、日本で中国民衆の革命に目覚め、中国の伝統的な支配体制と、支配体制を支える儒教や悪霊支配に対して、文学という手段を使って、戦い続けた人です。単なる文学者というよりも、思想家、革命家的な性格も持っていたと私は思いますし、彼の著作が、中国の近代化に及ぼした影響は、決して小さくないと思います。そうした意味で、魯迅の人気は中国人の中でも大変高いものがあり、ここ「魯迅故居」も、紹興で最も賑わう観光スポットであると言えます。「故居」とは「住んでいた家」という意味です。
  なお、紹興郊外の柯岩風景区にある魯鎮景区は、魯迅文学によく出てくる魯鎮という街をイメージしたテーマパークです。「阿Q正伝」をはじめとした魯迅の小説の名場面が再現されていますので、興味のある方は、ぜひ、こちらもご覧ください。


 この魯迅故居を訪れる観光客のほとんどは、中国人です。時々欧米人も見かけますが、杭州に比較しても、随分と少ないようです。日本人も、この紹興では、あまり見かけません。だからなのか、街全体に外国語表示が少ないので、欧米人はちょっとつらいかも知れません。日本人の場合は、漢字を見ておよその意味が分かるだけ、まだマシですね。


 「魯迅故居」エリアには、いろいろな見所がありますが、私なりに整理すると次のようになります。
1.魯迅の生家
2.咸亨酒店〔魯迅の小説「孔乙己(こんいーちー)」の舞台となった居酒屋〕
3.三味書屋〔魯迅が通っていた塾〕
4.運河を行く烏篷舟
5.上の4つの見所を結ぶ道にある紹興の伝統的な街並み



 
 では、順を追ってご紹介しましょう。まず、魯迅生家です。


 魯迅生家の入口です。屋根の飾りや瓦に、重厚さが感じられます。入場券は、魯迅故居の各施設への入場料がセットになっているものもありますので、興味があれば、そうしたセットになった入場券を購入されたほうが良いと思います。


 魯迅生家の出口付近です。紹興の伝統的な民家建物になっています。紹興市も開発のため、こうした古い街並みは一部に保存されているだけになっています。魯迅故居の隣のエリア(咸亨酒店のすぐ隣り)も、2008年5月に訪れたときには、既に再開発工事を始めていました。2009年には、地上50階建位のマンションが林立してしまうはずです。


 魯迅の部屋です。日本式に言うと、8帖くらいの広さがあります。寝台、机、たんす等が置かれています。台所など一部を除き、建物自体も魯迅が転居した後に再築されたものですので、この部屋も魯迅が使用していたものを再現した部屋のようです。机が意外に小さいなと思いました。


 お客さんと面会する部屋です。ここの家具は年季が入っているので、ひょっとすると、魯迅が使用していたものなのかもしれません。質素な中にも、凛とした雰囲気が漂います。

魯迅の本のおすすめはこちら

阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫)
「阿Q正伝」「藤野先生」のほか、「狂人日記」、「孔乙己」等も収録

魯迅―阿Q中国の革命 (中公新書)
中国人民にはびこる「馬馬虎虎(マーマーフーフー)」を憎んだ魯迅。
彼の作品が中国を革命(中華民国の建国)に導いた。


 台所です。台所は、魯迅が転居した後も、一部を除き当時の状況のまま保存されています。


 台所の外にある水がめです。正面が台所になります。水がめには、屋根の樋から雨水を集められるようになっています。



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 魯迅の家は間口はそれほど広くないのですが、奥行きが相当あります。家の裏には百草園という公園まで広がっています。百草園は、魯迅が友達とよく遊んだ場所で、小説「故郷」の中でも、閏土(ルントー)という友人が出てきていますが、閏土のモデルとなった友達とよく遊んだ場所も、ここ百草園です。
 上の写真は、百草園への入口です。下は、百草園の園内です。


 百草園という名はついていますが、もともとは雑草が茂る空き地で、特に何かが整備されているというものではありません。魯迅は、「百草園から三味書屋へ」の中で、百草園を次のように記しています。

 あおあおした野菜の畦(うね)、つるつるした石の井戸枠、大きなサイカチの木、紫色の桑の実はいうまでもない。蝉が葉の茂みで鳴き、肥えた黄蜂が菜の花に止まり、すばしこい雲雀(ひばり)が、ふいに草むらから一直線に空の果てに飛び立つことなんかもいうまでもない。……

 まさに自然と戯れる魯迅の少年期を、この百草園は想起させてくれます。




 この魯迅故居では、たまたま私が行った時に、魯迅の小説に使われた挿絵集の展示がされていました。この挿絵は、味わい深いものが多くて、私は気に入っているのですが、二つだけ紹介しましょう。
 上は、魯迅の肖像です。なかなかいい雰囲気ですよね。そして、下は、ソラマメをつまみに、紹興酒を飲んでいる孔乙己(こんいーちー)です。これもなかなかです。


 さて、では、魯迅の生家を出て、故居エリアの他のスポットも見てみましょう。
 せっかくの紹興観光です。まず、小説「孔乙己(こんいーちー)」の舞台、咸亨酒店に行ってみましょう。


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