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アジア写真帳(紹興)−咸亨酒店(魯迅故居)


アジア写真帳(紹興)


 「魯迅故居」エリアにある咸亨酒店です。
 ここは、魯迅の小説「孔乙己(こんいーちー)」の舞台となった居酒屋で、科挙(中国で官僚になるためには、このテストに合格する必要がある。)になかなか合格できない知識人、孔乙己が毎日酒を飲みに来たという設定になった場所です。
 中国語で「酒店」というと、一般的にホテルや食堂を意味しますが、小説「孔乙己(こんいーちー)」の時代設定では、咸亨酒店は酒を売る「酒屋」であり、酒屋の片隅に立ち飲み式のコーナーがあって、そこに人々が酒飲みに来ているわけです。
 今は、ご覧の通り、酒も売っていますが、ちょっとした料理も出しますので、居酒屋みたいなものになっています。まあ、観光客向けに、風情がなくなっているのが残念ですが、……。
 

 この咸亨酒店の入口に、小説の主人公である「孔乙己(こんいーちー)」の像が建っています。
 実は、当初の計画では、ここで酒(紹興酒)を飲みながら、臭豆腐でも食べようかと思っていたのですが、杭州に来るフライトの中で食べた機内食が、まだ消化しきれず、食欲がわきません。ちょっと計画を変更して、ここで酒を飲むのは、パスしました。


 咸亨酒店の店内です。5月の労働節に来た時には、店内ばかりでなく、店の外まで人であふれていましたが、今回、7月下旬の土曜日に来てみましたら、意外にお客さんが閑散としています。
 店内の飾りは、天井からぶら下がる灯りや何枚かの掛け軸はあるのですが、すっきりした感じです。このおじさんが茶碗で飲んでいるのが、紹興酒です。この店では、紹興酒をお椀で飲むスタイルです。


 ということで、ここに来た記念に、最後にもう一度、孔乙己の像をアップで写真に撮って引き上げることにしました。観光客がひっきりなしに孔乙己の横で記念写真を撮っています。孔乙己は酒飲みで科挙にも合格しなかった人なのですが、それでも、こんなに人気があるんですね。
 先日、日本で、とある中国の人に、私が紹興に行ったことがあると言ったら、「孔乙己の店には行ったか?」と聞かれました。紹興と言うと、まず、孔乙己なんでしょうか?


 孔乙己(こんいーちー)は、魯迅故居の人気者なんでしょうか。
 咸亨酒店以外にも、2箇所に像が建っています。咸亨酒店の前の像は、観光客で一杯ですが、他の2箇所は比較的透いています。咸亨酒店の前が混んでいたら、こっちで写真を撮りましょう。


 魯迅生家、咸亨酒店と回り、魯迅記念館の前です。
 ここでは、写真、映画・ビデオなどで、魯迅の生涯を展示しているようですが、時間がないため、今回はパスです。

 
 魯迅故居の中で次に目指すのは、三味書屋です。
 が、その途中にあるのが、「三味臭豆腐」という店です。臭豆腐については、ご存知の方も多いと思いますが、独特の風味と強烈な臭気を持つ料理で、中国江南エリア、特に紹興では、名物の一つといってよいと思います。
 初めてこの料理を見た日本人の10人中9人は、好きにならない料理だと思いますし、中国人でも好みが分かれると聞いていますが、慣れると旨いんです。実は私も、この臭豆腐のファンで、「紹興で絶対に食べなければならない料理リスト」に入っている料理です。
 それが、ちょうど魯迅故居の中に「三味臭豆腐」などという専門店があって、しかも例の強烈な臭いを、この界隈に撒き散らしていて、思わず心が動きましたが、観光客向けの店のような気がしたものですから、パスしました。




 この魯迅故居のメイン通りには、魯迅生家、咸亨酒店、魯迅記念館や三味書屋といった、魯迅に関わる観光スポットが集まっているわけですが、観光客がそれだけ集まってくるので、観光客向けのお店も沢山あります。
 少し、そういったお店も見ていきましょう。


 掛け軸や扇子などを売っている「致和堂」という店です。
 雰囲気の良い掛け軸がたくさん置いてあって、一見の価値はあると思います。中国に行くと、よく掛け軸を買ってしまうのですが、日本に帰ると、そんなに広い家ではないものですから、飾るところに困ってしまいます。まあ、時々、掛け軸をかけ直すと、気分転換にはなりますけど。


 ここは、左がハンコ屋で、右が扇子屋です。いずれも、その場で作ってくれるところがうれしいですね。
 特に、扇子屋の方は、扇子に墨で詩を書いてくれます。「姓名作詞」というのは、姓名を入れながら詩を作ってくれるのでしょうか?少し心が動きましたが、扇子なら、杭州の王星記と決めているものですから、ここは、パス。なお、王星記は紹興にも支店があって、紹興を題材にした扇子も売っています。


 ここは、「紹興師爺品酒館」といいます。お酒のお土産屋さんです。
 「師爺」とは、清の時代に存在した職種で、地位ある人物のそばで働く顧問のような立場の人です。紹興の人の中には、科挙をうけて正規の役人になるよりも、官職ではない師爺になり、県知事等の意を受けて司法や財政の実務を行う道を選んだ人が多かったようです。紹興出身である周恩来のおじいさんも師爺だったと聞いています。一般的に師爺は、博学で天文や歴史等に詳しい知識人で、表に出ない裏方というイメージがあるようです。ここ紹興からは「師爺」が大勢育っており、「紹興師爺」という言葉も、一般によく聞かれます。
 右の看板は、「紹興師爺の名前は天下に聞こえています」という意味になるのでしょうか?


 そうこうしているうちに、三味書屋の入口に来ました。
 三味書屋は、魯迅が12歳から17歳まで通った私塾で、生家から3分くらい歩いたところにあります。


 三味書屋の教室です。
 当時の教室がそのまま保存されていると聞いていますが、壁の前の左奥の机が魯迅の席だったといわれています。
 魯迅の通っていた学校っていうのは、随分とこじんまりしているんだなと、変に感心してしまいました。




 三味書屋の裏側です。魯迅の小説の中では、魯迅がよく遊んだ場所として、百草園とともにこの三味書屋の裏手が出てきますが、こちらはそんなに広いスペースではありません。
 この日は、習字の先生が扇子に字を書いていました。書いてもらいたい文を先生に言って、その場で先生が扇子に書いてくれます。なかなかの達筆でした。


 三味書屋の入口付近には、細い運河が流れていて、烏篷舟の乗り場になっています。小舟に黒いかまぼこ型の屋根がついたもので、紹興付近に多く見られます。


 この三味書屋のあたりは観光客が多くてうっとうしいですが、こんな感じで烏篷舟に乗って運河をすすむと、ちょっと雰囲気がありますよ。

 

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