中朝国境、丹東の街と鴨緑江大橋

中朝国境、丹東の街と鴨緑江大橋－アジア写真帳DANDONG

丹東は今や観光地

　丹東は中朝国境にある中国側の街です。対岸にある北朝鮮の新義州と中国の丹東とを隔てているのは、鴨緑江です。
　この丹東はもともと鴨緑江に架かる道路と鉄道の2本の橋により北朝鮮につながっていたので、中国と北朝鮮を結ぶ重要な都市でした。満州国の時代も「安東」という名で交通の要衝としてその確保が重要だとされていた街です。
　今も交通の要衝としての機能は残ってはいますが、街を歩いていて目につくのは観光客の多さです。風光明媚なわけではありません。北朝鮮が見える街として人気が出てきているのです。

　上の写真は私が宿泊したホテルから撮影したものです。
　手前に丹東の街があり、その前を鴨緑江が流れ、川には中国と北朝鮮をつなぐ橋が架けられています。橋の向こうに見える煙突などがある場所は、北朝鮮の新義州です。

　北朝鮮が見えることが丹東の街のウリですので、北朝鮮側に何があるかが中国側の看板（上の写真）に示されています。中国語は漢字ですので分かるとは思いますが、念のため解説します。
　上が丹東（中国）で下が新義州（北朝鮮）です。鴨緑江大橋と第二観光フェリーターミナルが中国側にはあります。鴨緑江大橋を渡って対岸には朝鮮人民公園と朝鮮製紙工場、朝鮮工業区があります。一つ上の写真で見えた工場の煙突はここのものでしょう。
　その他、北朝鮮の軍営や暗哨といった北朝鮮国境らしいものも見え、さらには朝鮮人民も見えますよとこの看板は言っています。

　北朝鮮という国は、日本人から見ると得体の知れない、何を考えているのか全く分からない国ですから、国の中はどうなっているんだろうという興味を私のような人間はどうしても持ってしまいます。ですから、ホテルの部屋から覗き見感覚で北朝鮮を見てみました。丹東まで来るとボートに乗って鴨緑江を遊覧できますから、この遊覧船からですともっと近くから覗き見が可能です。なお、中国国籍であれば、丹東から北朝鮮への日帰りツアーにも参加できます。この北朝鮮観光ツアーは中国人の間で人気が結構高いようです。
　さて、上の写真は工場です。私が行ったのは土日の二日間でしたので、工場の煙突からの煙は見えませんでした。本当に操業しているか否かは分かりません。

　鴨緑江閣という建物です。宴会などを行う施設だろうといわれています。
　鴨緑江閣の背後に新義州の街をうっすらと見ることができます。ビルらしきものも多少見えますが、中国の人に聞くと、建物の躯体しかなくてただ見栄だけのためにビルがあるように見せかけているかもしれないと言う人もいます。

　鴨緑江を走る旅客フェリー乗場です。旅客フェリーが本当に走っているのか、私は自分の目では確かめていません。ただ、フェリー乗場にしては人影がほとんど見えません。
　そもそも鴨緑江大橋付近では北朝鮮人民の姿は見ることが難しいようです。ましてや、中国側が観光客であふれかえっているというのに、北朝鮮側では観光客の姿など見えるはずもありません。

　船の修理工場だとされている建物です。稼働している様子が全く見えません。
　ただ、この建物の背後には随分と四・五階建ての建物が建っている様子が見えます。このうちのいくつかは見栄だけで建てられていて、実は使用されていないというのが先ほど紹介した中国の人の説です。

　遊覧船の航路を示した図です。この図では、上が北朝鮮で下が中国・丹東です。私のホテルは中国側の真ん中あたりにある開発区広場の近くでしたので、こちら側の対岸をホテルの部屋から撮影したことになります。
　この丹東の街に二日間いて日本人の姿は全く見かけませんでしたが、この遊覧船なら中国語ができなくても乗ることはできますし、近くから北朝鮮を見ることができます。興味のある人は、ぜひ丹東までいらしてください。
　なお、北朝鮮の様子は、鴨緑江を船で走ってより近くから撮影しています。それについては、別のページで紹介します。

　さて、丹東の街から鴨緑江越しに見える北朝鮮を紹介してきました。沢山の中国人観光客が北朝鮮国境の町、丹東を観光する魅力は何なのでしょうか。
　何人かの中国人に聞くと、誰もが北朝鮮は得体の知れない国だといいます。ここまでは日本人の感覚と同じです。ただ、北朝鮮は中国の友好国であるという意識が中国人にあるところは、日本人と異なっています。
　上の写真は中国空軍の英雄の像ですが、朝鮮戦争の時にアメリカの戦闘機と何度も対戦し、米空軍を大いに悩ませた英雄として紹介されています。すなわち、仲間を助けた英雄です。中国人の意識の中では、北朝鮮は中国の同盟国なのです。ただ、最近は北朝鮮が中国の言うことを聞かないので「けしからん」という気持ちを持っている人が少なくないようです。

　丹東の街の特徴の一つに、韓国・朝鮮のレストランや物品販売店の多さが挙げられます。上の写真の付近にはずらりとハングル文字の店が並んでいます。「北朝鮮が見える街」というのが観光のキーワードですから、当然といえば当然です。

　私たちも、夕食を北朝鮮が経営している三千里というレストランでとることにしました。従業員は全員（？）が北朝鮮人で、北朝鮮国内では素性の確かな人だけが来ていると言われています。丹東の街のにぎわいを見ても脱北したりしない筋金入りの共産党員とその子女が働いているわけです。
　レストランに入ると生簀があって、ここから素材を選び調理方法を指示しながら注文します。この注文を聞いてくれる人も北朝鮮の人なのです。

　私たちはこの日４人でしたので、７品注文しましたが、詳しくは別のページで紹介します。　最も印象に残ったのが、アサリのスープです。大きなあさりがたくさん入っています。アサリのダシを十分に生かしたさっぱりした味付けです。昆布のダシも効いていて、何か日本で食べるアサリスープのような味付けで美味しいのです。朝鮮料理というと唐辛子の入った辛い料理を思い浮かべますが、これは意外な味付けです。
　北朝鮮の国営レストランで食べるのは日本人としていかがなものか、というご批判もあろうかと思いますが、丹東の街は北朝鮮を観光資源としていることを実感することができました。

　丹東の街が北朝鮮を観光資源としていることをもっと感じさせてくれたのがこの店で、北朝鮮グッズの販売店です。右側に見えるのは北朝鮮の紙幣セットで紙幣価値の何倍・何十倍の価格で販売されています。他にも北朝鮮のタバコやや陶器といったものが、恐らくは何十倍もの値段で売られていて、それでもよく売れています。
　丹東観光の一番人気のお土産は北朝鮮グッズなのです。

　ここは、北朝鮮グッズを販売する露店です。朝の時間帯だけ、鴨緑江大橋付近に店を開きます。売れるのでしょうね。
　私は、このような店では買わずに、鴨緑江を船で走った際に、近づいてきた北朝鮮国籍の小舟で買いました。小舟での販売価格の方が格段に安かったようです。小舟に乗っていたのは北朝鮮の人民です。私はその人民から直接買っていますが、ここ丹東の街中で売られているものは、その間に何人もの商人の手を経ていますので、当然ながら値段が吊り上がってしまうのです。
　それでも売れる北朝鮮グッズ。北朝鮮を観光資源としている丹東ならではの光景です。

　以上のように、丹東は国境の街ですから本来ならば貿易の街であるべきなのですが、昨今の中朝関係も手伝ってか、貿易の街というよりも観光の街になっています。上の写真は第一観光フェリー乗り場です。鴨緑江大橋を挟んで両側に観光フェリー乗り場があって、鴨緑江を１５分から３０分程度遊覧し、北朝鮮領内に近づきます。このフェリーには、先ほども書いた通り日本人も乗ることができます。
　丹東へは大連からバスで約5時間、決して近くはありませんが、行ったら強い印象が残る街です。ぜひ皆さんも一度丹東を見に行きましょう。

　このページでは、続いて、鴨緑江大橋や夜の北朝鮮の様子などを紹介していきます。

丹東観光の中心は鴨緑江大橋

　鴨緑江大橋です。
　手前に見えるのが第二橋梁で１９４３年に満鉄により架けられたもので、向こう側にあるのが第一橋梁で１９１１年に韓国により架けられたものです。朝鮮戦争時に中国が参戦したため、この2本の橋は米軍に爆破されてしまいましたが、第二橋梁（手前の橋）は後に修復されて鴨緑江大橋と名付けられました。
　鴨緑江大橋は、自動車と鉄道の併用橋で、鉄道に関しては今でも週４編成の列車が通行しているそうです。金日成主席も中国に行くときは、列車でこの橋を渡っていました。道路については、多くの物資が行き来して、まさに北朝鮮の生命線ともいえる橋です。

　二つの橋の間から見ると良く分かります。
　左が第二橋梁（今の鴨緑江大橋）で右側が第一橋梁です。
　因みに、観光客もこの橋を渡って行き来することが可能です。中国人には一日ツアーの人気が高く、誰でもそのツアーに参加して北朝鮮内に入ることが可能です。因みに、２０１３年６月現在、６５０元程度（日本円で約１万円）ですから決して安くはないのですが、人気はあるようです。
　一方、北朝鮮からは誰でも中国に入れるというわけではなく、一定の社会的地位を持った者やその家族だけが通行を許されているのではないかと考えられます。いわゆる脱北防止です。

　第一橋梁は北朝鮮側の部分が米軍の爆撃により破壊されたままになっています。橋が切れているので「断橋」と呼ばれています。日本人も含めて旅行者は断橋の端まで歩いていくことが可能です。そこまで行けば、北朝鮮内もよく見えると思いますが私はボートなどで北朝鮮領土内を十分に見ましたので、敢えて断橋を歩きませんでした。
　橋の向こう側に観覧車が見えます。労働公園に設置されている観覧車です。動いているか否かは不明です。動いたところを見た人はいないと言う中国の人もいます。

　丹東の街については、この鴨緑江大橋のあたりが中心です。その鴨緑江大橋の前に立っている高級ホテルがこの中聯大酒店で、川沿いの部屋であれば真下に鴨緑江大橋が見え、鴨緑江大橋越しに北朝鮮の街が見える絶好のロケーションです。でも、このホテルはそれだけに価格も高いのです。

　私たちが宿泊したのは、鴨緑江大橋から２００ｍくらい離れたところにある江浜国際酒店です。ここも鴨緑江に面していますので、このページでも紹介したとおり、北朝鮮の中をはっきりと見ることができます。丹東の観光客向けの飲食店や商店も、大体この江浜国際酒店と中聯大酒店の間にありますので、便利さという点でも中聯大酒店に劣らないロケーションです。
　価格もずっとリーズナブル（中聯大酒店の半値くらい）ですし、設備も日本のビジネスホテル並みですから、このホテルはおすすめです。ただ、くれぐれもリバーサイドの部屋を予約するようにしてください。リバーサイドであるか否かでこのホテルの部屋の価値は大きく異なります。

　江浜国際酒店の私の部屋から見た風景です。対岸の北朝鮮がこんなに近いのです。船が走り、その向こうの北朝鮮には兵営が見えます。

丹東の夜、北朝鮮の夜

　このページの上の方でも紹介した通り、この日の夕食は北朝鮮の国営企業が経営するレストランでした。名前は「三千里」といいます。
　この三千里というレストランは朝鮮料理と中華料理の美味しい料理を食べさせてくれますが、それ以上に魅力的なのが、チマチョゴリを着た若い「喜び組」のメンバーのような女性（もちろん北朝鮮の女性です。）がそれぞれのお客さんの部屋に来て、五曲程度歌って踊ってくれることです。この歌が喜び組のような素晴らしい声量の歌で、北朝鮮にいるかのような錯覚に陥ります。因みに、この日歌ったのは、ハングル語の朝鮮の歌３曲と中国語の歌４曲で、私が日本人であることに気付いたため「北国の春」の中国語バージョンも歌うというサービスぶりでした。このチマチョゴリを着た女性の撮影は制限されているため、このページに載せられないのが残念です。
　丹東の街にはＫＴＶやマッサージといった娯楽施設もたくさんあり、しかも夜中遅くまで営業しています。これらの店では朝鮮族の女性が沢山働いていますが、北朝鮮の人は殆どいないと聞いています。
　

　そんなこんなで私たちが丹東の夜を満喫しているとき、丹東対岸の北朝鮮新義州の街はほとんど漆黒の闇に包まれます。まだ時間は夜８時くらいに撮影した写真でも、ご覧の通り灯りがほとんど見えません。中国の人は、電力不足のため北朝鮮では電気の使用制限が行われているのだと説明してくれました。

　鴨緑江大橋が上の写真の通りライトアップされているのとは対照的です。
　この中国・丹東と北朝鮮・新義州とでは、豊かさが全く異なります。中国人は北朝鮮の夜の暗さを見てその貧しさを改めて実感し中国指導者への尊敬の念を強めることもあるかも知れません。逆に、もし北朝鮮の人がこの丹東の繁栄を目にしたならば、北朝鮮の体制や指導者への不満が募るに違いありません。
　北朝鮮側の川辺には殆ど人が見えない理由もここにあるのではないでしょうか。川辺に北朝鮮の人がいないのではなくて、川辺に北朝鮮の人民を行かせないという規制をかけているものと考えられます。それが北朝鮮が体制を維持していくうえで最も大切な「情報管理・情報操作」の一つなのです。

丹東の朝

　丹東の街の朝も他の中国の街と同じように、健康的な雰囲気に包まれています。鴨緑江に面した鴨緑江公園は、思い思いに体を動かす老若男女であふれかえるようです。私は鴨緑江に沿って１時間くらい散歩しましたが、本当にすがすがしくて気持ちがよい公園です。

　早い時間ですと、鴨緑江から立ち上る靄で鴨緑江大橋の橋桁が隠れ、橋が川の上に浮いたようにも見えます。

　対岸の北朝鮮側には人影一つも見えません。仮にいたとしても、国境の見回りをする兵士くらいでしょう。

　地元の人たちは、思い思いに運動している人もいれば、みんなで集まり太極拳やダンスを楽しんだりしています。ある意味、日本の朝よりも豊かな朝です。

　丹東の街並みが見える位置で、リボンの演技をしている女性です。広々とした公園のスペースを十二分に使ってエンジョイするこの女性を見ていると、この街の豊かさを感じないわけにはいきません。
　日本人の目にも羨ましく見えるこの光景を北朝鮮の人が見たならば、どのように思うでしょうか。北朝鮮が丹東の対岸に北朝鮮人民を近づけさせない理由がよくわかる気がしました。

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丹東について、詳しい情報は次のページをご覧ください
丹東から船で北朝鮮見学　　虎山長城と一歩跨ぎ

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