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世外桃源郷(陽朔からの現地発ツアー)|アジア写真帳(桂林)

(2016年6月21日以来)

世外桃源郷(陽朔からツアー)GUILIN


 桃源郷は陶淵明の「桃花源記」をモデルにしたテーマパーク

桂林、陽朔の世外桃源郷

 陽朔から15㎞ほど桂林に戻ったところに「桃源郷」というテーマパークがあります。1999年にオープンした比較的新しいテーマパークです。中国では「世外桃源郷」と名づけられていますが、世外はこの世の外という意味で「桃源郷」とセットで使われる単語ですから、一般的に世外桃源郷」を日本語に翻訳するとただの「桃源郷」になりますので、このページではこのテーマパークを「桃源郷」と呼ぶことにします。
 この桃源郷というテーマパークは、東晋時代の有名な文学者、詩人であった陶淵明の「桃花源記」で描かれた桃源郷の世界(ユートピア)を、桂林の美しい景色を背景に作り出したもので、桂林のある広西チワン族自治区で生活している少数民族の生活スタイルも、このテーマパークでは紹介されています。

世外桃源郷の入口

  テーマパーク「桃源郷」の入口です。観光バスが次々と到着し、結構な賑わいです。陶淵明が描いた桃源郷は「桃花源記」が書かれた5世紀以降多くの中国人が延々と理想郷のイメージにしているものです。ですから、こうして中国人観光客が大勢集まる理由もよく分かります。桃花源記のあらすじは、以下のようなものです。

中国民族音楽(世外桃源郷)
 
   東晋の太元年間に、武陵(今の湖南省武陵市)の漁師が桃の花の林に踏み迷い、洞穴(ほらあな)を抜けて不思議な村里へ出た。村人たちは、先祖が秦の始皇帝の圧政を逃れてここへきて以来、外の世界と隔絶して平和に暮らしているのであった。漁師は村人たちにもてなされ、様々な話をした。村人たちは外との接触をしていないので、三国時代があったことさえも知らなかった。漁師は帰る際に村人はこの村の存在を誰にも話さないでくださいと言われたにもかかわらず、印をつけながら帰り、太守に注進する。太守は漁師に案内させて探索させたが、印は消えていて、ついに尋ね当てることができなかった。以来この村を探し当てたものはいない。
 この筋書きを知っているかどうかで、「桃源郷」というテーマパークを見た後の印象が変わってきます。なるほど、このテーマパークは陶淵明が描いた桃源郷を再現させているのです。

陽朔の世外桃源郷
 
 このテーマパークに入ると、まず園内をボートで周遊することになります。このボート乗り場の横に建つ建物は風雨橋と言われていて、広西チワン族自治区で生活している少数民族の文化を反映させたものです。

ボートのガイドさん(陽朔世外桃源郷)
 
 私が乗った20人乗りくらいのボートのガイドさんです。私以外は乗客全員が中国人で、説明も中国語です。私のことも中国人だと思っていたかもしれません。ですが、もし私が外国人だと分かっていたとしても、説明はすべて中国語で行われたに違いありません。



 ボートで園内を回る

桂林の世外桃源郷

 ボートで園内を回っていきます。 園内は意外に広く、30分くらいボートで回ったような気がします。桂林らしい山並みがとても美しいですし、途中で洞穴のようなトンネルを抜けたりします。

 
 蓮の花(後で紹介します)や色とりどりの花が咲く園内はのどかで平和な雰囲気に包まれています。

陽朔世外桃源郷(桂林)
 
 ところどころで少数民族の民族衣装を着た人たちが歌や踊りなどを披露しています。上の写真は鼓楼で、のちほどボートを降りた後にも立ち寄ることになります。

世外桃源郷で
 
 これは恐らく狩猟を得意とする民族に伝わる踊りでしょう。

少数民族の象形文字(陽朔世外桃源郷)
 
 少数民族で使われていた文字です。象形文字です。雲南省やチベットにいるナシ族が使うトンバ文字に似た感じです。
 こんな感じで景色と少数民族の風俗・習慣などを見せながらボートは進んでいきます。すると突然ボートは洞穴の中に入り、20秒くらいは真っ暗な水路を進んでいきます。

陽朔世外桃源郷に咲く桃の花
 
 そこで現れるのが桃の花園です。真っ暗なトンネルを濡れると、そこには桃園があったのです。水面に映る桃の花も美しいです。言うまでもなく、この部分が陶淵明が「桃花源記」で書いたユートピアのイメージなのでしょう。
 中国の村の入口には碑坊という石のゲートが作られるのが一般的ですが、この村では石のゲートの代わりに茅葺の門です。ここが村の入り口という意味でしょう。

世外桃源郷はまさに桃源郷
  
 「桃花源記」については高校時代に読んで以来読んだことがないという日本人が殆どでしょうが、このテーマパークに来るのであれば、あらすじくらいはざっと復習しておきましょう。それだけでこのテーマパークの価値は全く異なります。
 もともとは官吏であった陶淵明は実際に自ら世俗を断ち切り隠遁生活に入り、詩や散文を描いた人です。そこで描かれたのは理想の隠逸生活ではなく、人間としての幸せな生き方や人間としての理想郷です。このテーマパークを見ていると、もちろんコマーシャリズムで変形はされているものの、そうした陶淵明の理想郷の姿も見ることができるのです。



ボートを下船した後は少数民族の文化に触れる

世外桃源郷の鼓楼

 このツアーでは、参加者がまとまってボートに乗った後は、バス駐車場を集合地点として30分間自由行動の時間がありました。ちょっと時間を持て余してしまいます。本当は遇龍河でそうした自由時間がほしかったところです。
 それはさておき、ボートからも見えた鼓楼の前に来ました。時間によっては一階で民族音楽に乗って民族舞踊を舞っている場所です。

世外桃源郷の鼓楼

 ダンサーたちが見えたので、私は日本から来た観光客です。何か踊ってください。と言ってお願いしてみたら、一人のお姉さんが音楽なしで踊りのポーズをとってくれました。こんな注文を付ける日本人の親父も珍しいので、特別対応してくれたのでしょう。

 
世外桃源郷のトーテムポール
 
  トーテムポールです。トーテムポールに描かれた図案をトーテムと言いますが、トーテムは原始人が動植物を使って血族親類の証として崇拝したマークで、これらを柱にしたのがトーテムポールです。トーテムポールというのは北アメリカ原住民が建てていたものと私は理解していたのですが、ここの少数民族もトーテムポールを作る習慣があったようです。本当だとすれば驚きです。

桃源郷らしい風景
 
 池塘の先にカルスト状の山々が並び、桃源郷らしい風景です。この木橋の近くには水蓮が広がっていますが、まだ開花には早くて小さな花がいくつかあるだけでした。時期が良ければ見事な蓮畑が広がるはずで、これもまた陶淵明が描いた桃源郷に出てくる情景です。

世外桃源郷の風景

 自由時間を含めて一時間強、「桃源郷」を見学しました。いわゆるテーマパークですから、陶淵明の「桃花源記」についての知識がなければ、全く面白くない時間になると思います。逆に桃花源記を知っていたにしても、自然の美しさを求めに桂林に観光に来た人にとっては、他の観光地を選択した方がベターかもしれません。ただ、年配の方などで、陶淵明に興味があって、かつ、あまり歩き回る観光が体力的にきつい人には良い場所かもしれません。




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