揚州、个園の秋の景と冬の景|アジア写真帳(揚州)

(2015年4月5日以来)

个園の秋の景と冬の景|アジア写真帳(揚州)YANGZHOU


 个園の「秋の景」


 揚州の个園については、ここまで「春の景」と「夏の景」を紹介してきました。このページでは、「秋の景」と「冬の景」について紹介します。


 秋の景は、个園(個園)の主楼である抱山楼の右手に築かれた山で、夏山と秋山とは抱山楼の二階の回廊で結ばれています。

 

 秋の景の築山に建てられた駐秋閣から、抱山楼の回廊と夏の景を見たところです。白さが目立つ夏の景の築山が印象的です。


 个園は19世紀の前半に建てられていますので、もう既に200年近い歴史があります。抱山楼の瓦を見ても、かなりの年季が感じられます。


 春夏秋冬を意識した庭造りがされている个園の回遊は、当然のことながら、「春の景」「夏の景」と見たうえで「秋の景」に入っていきます。その順路に従うと、秋の景では、抱山楼二階回廊から始まることになります。
 秋の景の築山には主に黄石が使われていて、特に赤みがかった黄石を多く使うことによって、秋の色合いを出しています。特に、この付近の石にその傾向が強く見られます。


 抱山楼から山の中を下っていくのですが、迷路のような構造になっていて、いつの間にか同じところに戻ってしまうような道もあります。ところどころに赤い葉をつける木が植え込まれていて、まさに秋の山を歩いている心地です。


 不思議なもので、この秋の景で、秋の風情を十分に感じながらの山歩きは、暑い最中ではあったのですが、涼しい風の中を歩いているかのような爽快感もあります。そんな爽やかさのなかで、一度下まで降りてしまった後も、また、登ってしまいたくなるそんな魅力が一杯の秋の景です。私も、二回、三回とこの秋山登りを楽しませてもらいました。




 住秋閣と清漪亭


 さて、秋の山は大変奥行きのある山で、道に迷ってしまうくらい山の中に沢山の歩道が作られています。トンネルを抜けると狭い谷底のような場所に来て、松の木が青々とした葉を出しています。上の写真はその谷底から撮影したものです。
 そこから上を見ると、歩道のついた橋があって、その先まで道が続いていることを示しています。


 さらに、その道を進むと橋の架かっている山の上の建物が姿を現します。深い山中を上り下りしている雰囲気が味わえます。
 この秋の景の山は、まさに迷路で山あり谷あり、洞窟あり、橋ありで、千変万化の景色を繰り広げています。行き止まりになるとがっかりするのですが、この山の外に出てしまうと、それはそれで寂しくてがっかりしてしまいます。そうすると、また、この秋の山の中に入り込みたくなってしまうのです。
 そんな魅力を持つ、个園「秋の景」の山です。


 山の上にある住秋閣です。秋山の上に建てられています。


 住秋閣の前庭にある鋪地(敷石)です。この个園では象形ものの鋪地は少ないのですが、この秋山の上に見つけることが出来ました。花をイメージしたモダンな鋪地です。


 秋の景から見る清漪亭です。秋の景から山を下っていくと、その眼前に清漪亭が建っています。それでは、清漪亭に向かいましょう。


 秋の景から山を降りたところも、まるで山のふもとの秋景色です。
 左に少し見えるのが清漪亭で、木の背後に抱山楼が見えます。


 秋の山から下りてきて宜雨軒方面を見たところです。右の叢の蔭に清漪亭が少しだけ見えます。宜雨軒はこの角度から見ると、田舎の家のように素朴に見えます。どこかのどかな中国の農村にいるような心地になります。


 そして、清漪亭です。この角度から見ると自然の中に見事に調和していて、形も美しいことがよく分かると思います。


 清漪亭です。六角の亭です。
 清漪の「漪」は日本語ですと「波(さざ波)」を意味します。清漪亭は池に面しているとともに川のほとりにもあることから、こうした名前をつけたのだと思います。


 清漪亭から見る「秋の景」住秋閣方面です。黄石が積み上げられた築山の上に建つ住秋閣は周りを赤みがかった黄石にかこまれています。夏の暑いシーズンでしたが、秋のような風景です。


 清漪亭から見る「秋の景」を少し左に移して、抱山楼との接続部分方面を見たところです。秋山の山頂方面は樹に覆われて見えませんが、黄石の築山の一部や木々の色に秋を感じさせます。


 清漪亭の周りには川が入り込んでいて、小さな橋がいくつか架けられています。「春の景」で紹介した宜雨軒と同様に、清漪亭も个園の中央に位置しているため、園全体を見回すことができる場所に位置しています。秋山から下り、疲れた足を休ませながら个園全体を楽しむ場所、それが清漪亭の位置づけだと思います。


 清漪亭の周りに架けられた石橋の一つです。小さいですが、味わい深い橋です。


 しかし、石橋を横から見ると、これがまた大変豪華な石を組み合わせて造っていることがわかります。夏山や秋山の築山もそうなのですが、平凡にまた普通に見せているのですが、実は大変な金をかけて造られたのがここ个園なのです。


 清漪亭の近くから見る「夏の景」です。
 清漪亭に来た客人たちは、秋山から下ってきて、またこの夏山を見ると、季節の変化の大きさを感じるのです。




 个園の「冬の景」


 そして、四季の景の最後は「冬の景」です。透風漏月亭の裏手にあって、透風漏月亭と壁に囲まれた狭い空間が「冬の景」です。宣石という安徽省南部にある宣城で採れる石を使い、少し黒味がかった石の特徴が、冬の寒さを感じさせます。また、花がなく緑が少ないことも、冬山を感じさせるための配慮です。


 春、夏、秋は色をイメージすることが比較的容易だと思うのですが、よくよく考えると冬の色というのは難しいですね。やはり冬なら雪の白なのでしょうか。
 「冬の景」で使われている宣石というのは、別名を「雪石」とも言われているそうですが、このあたり宣石を見ると、なるほど上の方が白くて雪が積もっているかのように見ることもできます。


 背後の壁を見ると、沢山の穴が開いています。この穴は背後を見せる効果もありますが、この穴は風が吹くとヒューヒューと北風が出すような音を発生させる穴でもあります。また、この穴の向こうには「春の景」が広がっています。「春の景」と「冬の景」は壁をはさんで隣りあわせとなっている位置関係です。
 すなわち、「春の来ない冬はない」のです。


 穴の向こうに「春の景」の竹が見えます。花瓶型の洞門を抜けると、そこには「春の景」が広がっています。また、次の四季がそこから始まるのです。


 また、「春の景」に戻ってきました。春の生命力を感じさせる青々とした「春の景」に、この庭の構成力の強さが感じられます。なるほど、个園は四季が強調されていて大変印象的です。この庭園構成は、時代を超えて私たちを感動させてくれます。また、もう一度、園内に進んでいきたい気持ちに駆られます。
 実際に、私ももう一周、个園の四季を楽しませてもらいました。


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