広州の上下九路|アジア写真帳

広州の上下九路



 広州一の繁華街といえば、ここ上下九路です。日曜日ともなると、とてつもなく多くの人が集まってきて、まさに雑踏の街になります。ここを歩いている限り、広州の景気も下降線を描いているなんてことは、全く感じません。同じ広州の繁華街でも、北京路のあたりは、何か活気を感じないのですが、この上下九路は違います。
 上下九路は、正式には上九路と下九路という名称の通りを言います。歩行者天国になっていて、下九路は西関地区(オールド広州地区)の第十甫路につながっています。正確に言えば、一つの道が、東から西に順に、上九路、下九路、第十甫路という順に名前を変えていきます。
 それでは、日曜の上下九路を西関地区まで歩いてみましょう。

 
 この上下九路には、広州の地元の人も来れば、田舎から広州に旅行に来たらしき人も沢山います。道行く人のファッションを見ていると、そんな気がします。上下九路のあたりは、マクドナルドやケンタッキー、ピザハットといった外資系ファーストフードチェーンや、もちろん、中国系のファーストフードの店などが軒を連ねていて、まさにB級グルメの店が集中しています。そして、どこも混雑しています。正面のビルには、回転寿司や鉄板焼きの看板も見られます。
 しかし、所詮はB級グルメの店ばかりですし、せっかく広州に来たのですから、このあたりの食堂はパスして、西関エリアの老舗の中華料理を食べてみましょう。西関には、広州酒家蓮香楼陶陶居といった素晴らしい名店が軒を連ねていますから。


 このあたりは、渋谷のハチ公前広場みたいなものでしょうか。モニュメントのまわりには、いかにも待ち合わせ中の人が沢山います。
 正面のビルには、「代官山屋」などという看板も見えます。広州の人は「代官山」なんて、知っているんでしょうか。ネーミングとしては、東京屋とか大阪屋とか札幌屋といった名前にした方が、日本料理屋らしいと思いますが。


 とにかく、すごい人の量です。どちらかと言うと、下九路の辺りは若い人が多いですね。こうやって、飲み物を飲みながら歩いている人は沢山いますし、軽食を食べながら歩いている人などもいます。若い人が多いからファーストフード店が増えたのか、ファーストフード店が多いから若い人が来るようになったのかはよく知りませんが、とにかく、ファーストフード店の多い通りです。


 この下九路の辺りを歩いていると、街全体に人があふれかえり、しかも若い人が多いですから、まだまだ中国経済は伸びていくのだなということを、ひしひしと感じます。
 中国では、1979年以来、一人っ子政策(「計画生育」と言われています。)というものがあり、出産または受胎に計画原理が導入されています。この政策により、中国では少子化が進行し、人口抑制に効果を挙げています。二人目以上の子供を生むためには、税金を払わなければならないため、特に農村部においては労働の担い手になる男児なら出産したいとする人が多く、妊娠時に性別検査を行い、胎児が女子の場合は中絶手術を行うケースが多発しているそうです。この結果、男女比が偏るという弊害、言い換えれば、結婚できない男性が多くなってきている弊害があるとも聞きます。




 とは言うものの、この広州には、工場労働の若い女性も多くいることからか、それほど男女比の偏りを感じさせません。
 上の写真は下九路の西関(オールド広州)寄りの街角ですが、この辺りは雰囲気が良いこともあって、沢山のカップルを見かけます。一方で、いかにも、農村から広州に観光に来たと思われる人たちもいます。座っている観光客も、やはり一人っ子ですね。


 西関(オールド広州)エリアです。下九路西側から第十甫路にかけては、このような街並みが続きます。第十甫路の蓮香楼陶陶居といったレストランがあるエリアまで、歩行者天国が続きます。


 このエリアの建物は、騎楼といって、1階部分はアーケードとなっている建物が道の両側に並びます。この建築様式は、かつて広州で流行った建築様式で、西洋のコリドール(回廊)建築と広州伝統の建築様式が結合したものです。2階部分が通りにせり出していて、その結果、1階部分はアーケードとなり通行人は夏の強い日差しや急な雨を避けることができるわけです。確かに、この地域の気候に合った建築様式だといえます。
 バンコクのヤワラー(チャイナタウン)や台湾などでも、この建築様式が多く見られますが、発祥は、ここ広州のようです。


 通行中の人ばかり写していたので、西関の街並みが分からないですね。
 写真は、平安大戯院の建物です。中洋折衷のような建物ですね。こういった建物においても、騎楼の建築スタイルが使われていて、隣の建物と同様に、1階部分がアーケードになっていて、歩行者が通れるようになっているのです。


 こちらは、広州酒家の近くにある皇上皇という店の建物です。
 私が思うに、西関でも最も美しいビルの一つだと思います。もちろん、このビルにおいても、騎楼の建築スタイルが使われています。


 少しアップしてご紹介します。
 窓にしても、壁に彫られている彫刻にしても、大変凝っていて、お洒落ですね。


 陽もかなり傾いてきました。西関の歩行者天国では、広州らしい銅像があちこちに置かれていて、これらの銅像が陽に輝きます。これは、お茶を入れている人の銅像です。
 上下九路から第十甫路に向かって歩いていると、歩くにしたがって、街並みがオールド広州に染まってきます。さきほどの皇上皇や平安大戯院の建物のあたりに来ると、まさに西関の街並みになってきて、街並みが落ち着きを感じさせてくれます。上下九路では元気をもらった私ですが、ここ第十甫路では何か心の豊かさを感じる私でした。