環秀山荘は国宝庭園 |
環秀山荘は、蘇州市の刺繍研究所の敷地内にある小さな庭園です。もともとは清の時代に作られた庭園で、そうした建造時期を考えても、また庭園の規模からしても、蘇州の日帰り旅行では素通りされてしまう庭園に違いありません。 しかしながら、狭いながらも立体感のある庭園構成は、いかにも清代の庭園の雰囲気を漂わせていて、さらにこの環秀山荘ならではの心憎い演出(後ほど説明します。)もあって、一度は見ておきたい庭園として、おすすめしたい庭園です。 |
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この小庭園は、中央に古木があって、その古木を取り巻くように回廊が配置されていて、回廊の脇には竹林があります。この竹林の鮮やかな緑がいかにも凛としていて、この先にある庭園の素晴らしさに期待を抱かせます。 |
さらに進むと、上の写真にある建物が現れます。この建物が環秀山荘と名付けられている建物で、上の写真は入口の裏手に当たります。この環秀山荘の建物の背後に庭園が広がっているので、環秀山荘の入口も庭園に向かって開いているのです。 |
環秀山荘の建物内部です。 もともとは、官僚の私邸に作られた庭園です。意外に派手さがなく落ち着いた作りになっています。ドアの向こうに庭園の築山が見えています。 |
四周をガラスで囲まれた建物内部は明るく、窓枠の作り方を考えると、一つひとつの窓枠が額縁のように外の景観を見せるように工夫されていることが分かります。このあたりのコンセプトは、拙政園の遠香堂を想起させるものがあります。 この環秀山荘の主人が客人を庭園に招いた際に、最初に通す場所がこの環秀山荘の建物で、ここで茶などをふるまいながら、庭園の全景を見せていたものと推測されます。 。 |
環秀山荘の灯りや天井も見事な装飾です。 |
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環秀山荘の太湖石の築山 |
環秀山荘の建物前から見る築山です。太湖石を積み上げて巨大な築山になっています。この環秀山荘という庭園の魅力の一つはこの築山にあります。 本来はこの築山の中を歩き、この山の中にある石橋や渓谷、そして洞窟のような石室なども通りながら、築山を楽しめる設計になっているのですが、築山を保護するため、現在はこの築山の中を歩くことは禁じられています。 |
環秀山荘の建物前から見ると、右半分が築山で、左頒布なには池が広がっています。池の先の問泉亭方向の風景です。 |
過街楼(廊下付の二階建て建物)前から続く曲橋腰から見る築山です。見事な築山です。環秀山荘の築山のベストアングルはこの角度ではないかと私は思います。 築山の奥が半潭秋月一房山という建物で、手前の低い位置に建つのが問泉亭です。 |
池沿いに見る築山の小道。曲橋越しに過街楼が見えます。この風景も洒落ています。 |
築山の最上部の小道です。先ほど紹介した半潭秋月一房山という建物の近くです。写真の小道は進入禁止になっている部分ですので、この小道からの風景は推し量るしかありません。 |
ほぼ同じ位置から環秀山荘の建物方向を見ると、山を下る道が見え、山中に谷を形成していることが分かります。道越しに石橋なども見えます。 この道を歩くと、森閑とした山の中を歩いているような気分になるに違いありません。 |
山頂にある洞窟のような石室。こういうのを見るとついつい入りたくなるのですが、この石室も進入禁止エリアになっていますので、現在は入れません。この築山にはもう一つ築山の下の方に石室があるようなのですが、外からしか築山を見れない今は、その位置を確認することはできませんでした。 |
このような立て札が建ち、山中への進入が禁止されています。 |
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過街楼 |
しかしながら、その立て札のある場所から過街楼方向を見ると、これまた素晴らしいアングルの庭園です。過街楼にある漏窓が美しいですね。 |
その過街楼を環秀山荘建物前の平台から見たところです。池にかかる曲橋も見えます。 この環秀山荘は清代に作られた庭園ですので、庭園自体は広くない分、立体的に庭園を楽しんでもらうために二階建て建物などが配置されています。これは、同じく清代に作られた蘇州の耦園や揚州の个園、何園といった庭園に共通している特徴です。 |
過街楼と問泉亭です。過街楼の正面に築山が見え、その姿を絵にしている女性もいます。彼女が見ている風景が、上の方で紹介した曲橋越しの築山風景で、彼女も曲橋越しの築山がこの庭園でのベストアングルと考えているのだと思います。 |
過街楼の漏窓はなかなか見事で、このあたりも揚州の何園に相通じるところがあります。 |
漏窓の下の書です。さすがに私も何が書いてあるかはわかりませんが、見るからに力強さを感じさせる見事な書体です。 |
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問泉亭で泉の音を聞く |
問泉亭です。ここに来ると、庭の奥にある滝の心地良い音が響きます。問泉亭の背後にある山に泉があり、その泉から湧く水が滝のように流れていて、その音を聞きながら庭の景観を楽しむ場所なのです。 |
築山上部から見た問泉亭です。この眺めも情緒が感じられて素晴らしいものです。 |
問泉亭から池や過街楼を見たところです。泉の音(滝の音)を聞きながら、こんな風景を見ることができるのです。ここ環秀山荘の主人は、客人に庭を案内する際に、恐らくは環秀山荘の建物を起点に、築山を歩き、石室で休憩したりして、ここ問泉亭に案内し、滝の音を聞かせながら庭園を見せていたものと思われます。 |
そして、問泉亭から築山を見ると、急峻な谷間と山頂の石室、そして石橋といった築山のポイントが見えます。この築山を歩いてきた客人に築山の思い出を刻み込むとともに、この築山をまた歩きたいという気持ちにさせるという効果を期待したもので、この問泉亭の配置上の妙がこの環秀山荘の素晴らしさの一つだったのだろうと気づかされます。 |
では、問泉亭の裏手の山に登り、この泉の音の音源となる滝に向かってみましょう。滝に行くためには、補秋山房という建物の裏手にある花瓶型の洞門二つを抜けていきます。この洞門が二つ並ぶ光景も見事です。 |
音源となっている滝を上から写したところです。この滝の音が庭園の雰囲気に一つの味付けをしているのです。このような音の効果を利用した庭園というのは、蘇州古典園林の中では、恐らくここ環秀山荘だけではないかと思います。 |
環秀山荘建物前の平台からの眺めです。 この庭園の名前は、環秀山荘という建物の名前がそのまま庭園の名前となっています。なるほどこの庭園の最大の見どころは太湖石の築山で、あたかも山中にいるかのような錯覚を見る人に与える築山です。○○園などという名をつけずに、山荘という建物名をそのまま庭園名にしたのも、この築山の見事さや最後に訪れる問泉亭の配置の妙についての庭の主人の自信の表れなのではないでしょうか。 環秀山荘は、あまり広くはない庭園で観光客も殆どいない庭園ですが、特徴のある見事な庭園でした。芸圃と同様に、ゆっくりと蘇州古典園林を楽しみたい人にはおすすめの庭園です。 |
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