網師園のシンボル、大池 |
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網師園(1)では、網師園の大門(入口)から大池に出るまでの部分を紹介しながら、網師園の魅力とは、邸宅と一緒になっていることにあるのではなく、狭い敷地ながらその中に中国庭園の美が凝縮され、見る者の心を和ませることにあること、言い換えれば、拙政園や留園のような大庭園とは異なる中国庭園の美が、ここ網師園にはあると思っていることなどについて書いてきました。 このページでは、網師園のシンボルとも言える大池、と言っても普通に歩いたら4分か5分かで回れる小さな池ですが、その大池を一周しながら、網師園の凝縮された美を紹介していきます。 上の写真は、大門を入り、視界のない回廊などを経て、初めて大池を目の前にしたときの光景です。 |
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上の写真は、月到風来亭という池の西に建つ亭です。網師園の特徴として、池の東西南北に池を囲むように観賞用の建物が建っていることです。また、東西南北に建物以外の鑑賞ポイントがそれぞれ存在しています。網師園を見る場合には、これを頭に入れておくことが必要です。西から順に建物と鑑賞ポイントをまとめてみます。地図も参照しながら確認してみてください。 西 月到風来亭、回廊 北 竹外一枝軒、曲がり橋 東 東半亭、黄石の小さい築山 南 濯纓水閣、黄石の大きい築山 これらは、それぞれが池を鑑賞するために立ち止まってもらいたい地点であるとともに、それぞれが別の地点から池を見たときのアクセントになっています。 例えば、上の写真は、池の西にある月到風来亭と回廊ですが、月到風来亭も美しいですし、その両側に広がる回廊も柔らかい曲線美が印象的です。池が前面にあるため、何物にも視線を遮られずにこの建物と回廊を見ることができるように設計されているのです。 |
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月到風来亭から見た大池です。大きな白い建物は大庁と前庁、手前に東半亭、黄石の小さい築山が見えます。 月到風来亭は、夕刻、月を見ながら風情を楽しむ場所です。日が暮れて月が出たときの光景を想像してみてください。白い建物は、その時すでに白くは見えず、むしろ山並みとして見えるはずです。山並みの間に月が昇っている、そんな光景をこの亭からは楽しむことができるように設計されているのです。月到風来亭が西に建てられている理由もここにあります。 でも、昼間でも白い壁と青い空が池に映り、十分に美しいですね。私は網師園に来るといつも、この月到風来亭に座って長いこと大池を見ることになります。いつまで見ていても飽きない、いつ見ても美しい網師園の見所の一つです。 |
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心憎い庭園設計 |
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網師園(1)でも書いた通り、網師園は狭い敷地に建てられています。しかも、邸宅と同一の敷地です。そこで、邸宅の屋根を山並みに見せかけたり、壁を白く塗り青い空とのコントラストを際立たせたり、また、それらが池に映る距離で程好い大きさの池を作ったり、大変な工夫と知恵が感じられます。 上の写真は、白壁にある模様です。単純な白壁のアクセントと思いきや、なかなか精緻な彫りが見られます。 |
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月到風来亭から池の北東方向を見たところです。 左に、すなわち池の北に竹外一枝軒、正面に、すなわち池の東に東半亭が見え、蓮の葉が浮く池に大庁が映ります。竹外一枝軒が視野に入ると、二つ上の写真とはまた異なった趣が出てきます。 |
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時期は7月末ですが、借りんな白い睡蓮が花を咲かせています。 |
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月到風来亭から池の北へ向かって歩くと、北東の隅から曲がり橋になります。ここの曲がり橋の効果は、実は網師園(3)で紹介しますが、殿春簃から見た橋にあります。それは、網師園でも最高の景です。 |
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曲がり橋の池の正面に、濯纓水閣が見えます。建物の位置と庭の静観点(立ち止まって庭を見る場所)がうまく設計されています。 拙政園のように広い庭園ですと、こんな風に止まっては周囲を見て、また止まっては周囲を見て、という鑑賞の仕方はできません。と言うよりも、そんなことをしていたら時間がいくらあっても足りませんし、立ち止まったところで何が発見されるわけでもありません。むしろ、歩きながら、動きながら、景を楽しむ庭園なのだと思います。 一方、この網師園では静観点というのは比較的はっきりしていて、建物や橋、築山などの建造物がすなわち静観点なのだと思います。 |
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曲がり橋を渡り、池の北側を歩くと、竹外一枝軒に入ります。ここも水辺に腰掛けて、景色を楽しめる場所です。 |
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竹外一枝軒にある円洞門の先には、小さな内庭があって、その内庭から円洞門越しに池の対岸の濯纓水閣が見える仕掛けです。 |
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竹外一枝軒から見た景色。左の建物が濯纓水閣、右側の亭が月到風来亭です。そして、その間を結ぶ回廊の曲線が見事です。 さらに言えば、この大池周辺には太湖石が一切ありません。実は、網師園でも別の場所には太湖石が使われています。大池周辺で石を使うときは、黄石という石に統一しているから庭としての統一感があるのです。月到風来亭や回廊の基礎部分に使われている石が黄石です。 |
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東半亭から見た月到風来亭です。右に曲がり橋があって、その先にある四角形の入口の先に殿春簃という別の趣きを持った庭が広がっています。 ここで、月到風来亭をよく見ていただきたいのですが、四角形の門がここにもあって、その奥にまた庭が広がっているように見えるでしょうか。実は、そうした錯覚を狙って、言い換えれば、狭い庭を広く見せるために、月到風来亭のところには壁に鏡が埋め込まれています。月到風来亭に立っている男性が鏡に映っていますね。 |
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大池の東にある小さな築山です。これもまた、すべて黄石で石組みされています。この築山だけで見てしまうと、あまり面白くないのですが、他の写真の中で紹介している通り、大池や大池周辺の建物とあわせて見ると、雰囲気によく馴染む味わいのある築山です。 よく見ると、組み石のあちこちに穴が開いています。 |
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築山の穴から覗いてみると、対岸の月到風来亭が見えます。池を間にして、築山と月到風来亭を相対させている設計の妙です。 |
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この大池では、なかなか池の際まで行けないのですが、ここでは池の際まで小路ができています。池の手前にある鋪地(敷石)です。 |
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この鋪地(敷石)は次の写真の小橋手前にあったものです。鋪地というのは、庭園をめぐる人の足を少し止めさせる効果もあるのでしょうか。思わずここで足を緩めて、景色を見てしまいます。この場所から撮影した対岸の景がこのページの一番上にある月到風来亭と回廊の写真です。 |
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上の写真は水路にかかる小橋です。この小橋については、網師園(1)でも紹介した通り、網師園の大池が外洋につながっているという庭の所有者の思いを示したもので、形もアーチ型にしてあたかも下を船が通るような形にしています。 |
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池の南側は、小橋を渡ると黄石の築山、そして、濯纓水閣へとつながっています。大門から視界に遮られた回廊を歩く途中にあった小山叢桂軒が黄石の築山の背後に見えます。狭い敷地の中であっても、客人に回遊してもらいながら、見所を多く作っていくための工夫が、敷地をこんな風に使っているところにも現れています。 |
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築山には上に登る道が付けられています。築山を登って、大池周辺を見てみましょう。 |
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南の大きな築山の上から見た大池です。特にこれといって目立つポイントはないですが、大池全体を俯瞰できる場所ではあります。 大池周辺を回遊するコースは、この後、隣接する濯纓水閣を経て、大門から樵風径を経て来る回廊と交わり、これで大池を一周したことになります。網師園に来ると、その一周では物足りなくなって、二周目、三周目の回遊を始めてしまいます。それはきっと、大池という狭いエリアではあるものの、そこに設計者が丹念に作り上げた美が感じられるからだと思います。何度見ても飽きない庭、それが網師園です。 次のページでは、網師園の大池以外のエリアを紹介します。看松読画軒や殿春簃といった魅力的なエリアが、大池とは異なる網師園の別の側面を見せてくれます。 |
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