香洲 |
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ここまで、「拙政園〔1〕」の中で、拙政園見学のポイントとして「中園を中心に見学する」「中園見学の起点は遠香堂」「遠香堂から枇杷園を抜けて、時計と反対回りに回る」といったことを挙げています。そして、「拙政園〔2〕」では枇杷園と東半亭からの北寺搭借景まで、そして拙政園〔3〕では梧竹幽居から雪香雲尉亭を巡り荷風四面亭まで、そして拙政園〔4〕では見山楼と柳隠路曲を紹介してきました。 上の写真は、東半亭付近から撮影した西半亭(別有洞天)と北寺塔の借景です。西半亭の円洞門を潜り抜けると、拙政園の西園になります。このページでは西半亭(別有洞天)から、香洲や小飛虹を見学し、中園の時計と反対回り一周コースにおけるスタート地点、遠香堂に戻る道を辿ってみましょう。 なお、拙政園の中園の地図は、こちらをクリックすると新しいウインドウに開きますので、地図を参照しながら読みすすめてください。 |
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西半亭から遠香堂に戻る道は、中園の南側を辿ることになります。これまでも書いてきている通り、拙政園の中園は中央に池があって、その北側は自然そのままの景観です。一方、南側には、これまで紹介してきた遠香堂や枇杷園、それにこのページで紹介する香洲や小飛紅など人工の建造物が建ち並んでいます。この対比が拙政園の大きな特徴であることもこれまで指摘してきた通りです。 したがって、西半亭から遠香堂に戻る道から見える風景は、山水にいくつかの建造物(建造物や橋など)が調和している落ち着いた風景になります。上の写真は、西半亭から香洲に向かう途中から写したものです。 |
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香洲です。正しくは、一階を香洲と呼び、二階部分を澂観楼(ちょうかんろう)と呼びますが、建物全体を呼ぶ際にも香洲とするのが一般的です。拙政園〔3〕でも記載した通り、香洲は、画舫(がぼう=屋形船)をイメージした建物で、不繋舟とか石舫とか呼ばれることもあります。 画舫というのは、神仙蓬莱思想の中の「始皇帝と徐福の不老不死の薬」の話から来ているということを何かの本で読んだことがあります。すなわち、秦の始皇帝の政治が厳格すぎたため、これから逃れようとする山東の学者、徐福が始皇帝に取り入り仙人探し、不老不死の薬探しのため、大きな船を建造させ、秦の国から逃げたという話です。詳しくは拙政園〔3〕を参照してください。 要は、画舫というのは、仙人たちが住む島へ旅立つための舟をイメージしているわけで、世俗から逃れ隠遁することを現しています。 |
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この位置から見ると、少し舟のように見えるでしょうか。三面を水に囲まれ、一方だけ(この写真で言うと後ろ側だけ陸続きとする建物にして、船のように見せているわけです。 |
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建物の一階の様子です。確かに船室のようなつくりになっています。大きな鏡で部屋を広く見せています。 |
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香洲の一階部分の入口には「香洲」と書かれた額がありますが、この字は民の時代の文人、文徴明(ぶん・ちょうめい)の筆だそうです。文徴明もまた、拙政園の創設者であり設計者である王献臣と同じく、腐敗した政治に嫌気がさし、これを指弾するうちに官界から排斥され、故郷の蘇州に戻り、以降は書を書き画を描いて余生を送ったことで知られています。王献臣とは竹馬の友だったようで、文徴明は拙政園完成後は拙政園の中に自分の庵を持ったとされています。 |
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さて、船の旅に出ると当然ながら眺めも良くなければなりません。香洲の一階部分の船のデッキに当たるところからは、見山楼や荷風四面亭なども見えますが、建物と自然が調和した風景を見せてくれます。ここからの拙政園の眺めも、拙政園の見所の一つだと私は思います。 |
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小飛虹 |
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香洲から遠香堂に行く途中に、小さな建物が集落のように軒を連ねているエリアがあります。ここには、小飛虹という美しい橋や得真堂、松風水閣といった建物が軒を連ね、また、狭い空間から見える池が大海原を想像させることから、あたかも港の集落のようなイメージです。香洲が舟を模っていることはすでに述べたとおりで、その仮想船着場近くの港町という感じです。 |
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上の写真が小飛虹という有名な橋です。ご覧の通り、珍しい屋根つきの橋で緩やかな傾斜がとても美しい橋です。屋根の緩やかな傾斜も芸術的ですし、橋の欄干、特に水に写る欄干の傾斜も見事と言うしかありません。設計者のセンスの良さを感じないわけにはいきません。 また、この写真では分からないのですが、小飛虹から見る池と見山楼の美しさも印象的です。この写真では、小飛虹の奥に見山楼の一部が見えます。 |
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この場所からですと、水面に欄干や荷風四面亭が美しく映ります。一つ上の写真では見山楼が水面に写っていました。このように、立つ位置によって、水面に写る影が大きく変わるのも面白い体験です。 |
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小飛虹の手前から見たところです。 小飛虹は拙政園の中でも人気のある場所ですから、このように小飛虹に誰もいない瞬間というのは殆どありません。朝7時半の開門とともに入場して中園に直行すれば、静かな小飛虹を味わえます。私は、写真を撮る人でごった返している小飛虹には魅力を感じません。静かであればあるほど、小飛虹のしみじみとした情景を楽しめるのです。 |
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上の写真は松風水閣です。池に流れ込む川の上に建っています。松風水閣や回廊が、川岸の石や緑と調和していて、独特の景観を見せています。このエリアの回廊でたたずんだり、池を眺めたりしていると、何故か心が和む気がします。 この回廊は池畔にある倚玉軒まで続いています。倚玉軒まで来れば、中園一周コースのスタート地点である遠香堂はすぐ隣です。 |
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拙政園の茶室 |
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中園を一周したら、慌しく西園を見に行くのもいいですが、むしろ茶室でゆったりとした気持ちで今歩いてきた拙政園の中園を振り返るのが良いと思います。茶室は倚玉軒から今来た回廊を小滄浪の方へ戻り、そこからさらに南に回廊が続いていますので、そのまま歩くと矢印の看板が出ています。 拙政園の中園の地図では緑色のお茶マークが出ています。トイレに行く途中にあります。 |
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茶室の中です。中では、若い男女が演奏中です。 さて、茶楼でお茶を飲みながら、落ち着いた気持ちで今後の計画を立ててみましょう。と同時に、特に暑い日には拙政園の見学は体力を消耗しますので、ちょっと一休みするわけです。 中園を一周してきたわけですが、この後時間があれば、より細部に気を配りながら、さらに中園をもう一周するのが良いと思います。一周目では通らなかった橋、道、回廊を通ったり、立ち止まらなかったところで立ち止まったり、振り返らなかったところで振り返ったりしてみると、一周目では見えなかった拙政園が見えてきます。 時間があまりなければ、お茶を飲んだら西園の方に向かいます。 |
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この茶室では、お客さんからのリクエストに基づき、蘇州評弾を聞かせてくれます。蘇州評弾は中国琵琶と三弦(中国三味線)を演奏しながら、故事を歌い奏でるというものです。また、一般の流行歌も歌ってくれます。この日歌っていたのは一般流行歌です。歌の本から選曲することになっていて、曲によって演奏料金が決まっています。この日の客は私以外には白人さんしかいないので、私がリクエストしないと演奏が始まりません。拙政園の思い出にリクエストするのも良いでしょう。 |
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茶室近くの鋪地(敷石)です。珍しい鶴の絵です。鋪地まで気にして拙政園を見学したら、どんなに時間があっても足りません。たまに鋪地を見ているだけでも、驚かされることがしばしばです。 では、拙政園の中園の紹介はこれくらいにして、次は西園をご案内しましょう。 |
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関連するページ拙政園〔1〕拙政園見学のポイント拙政園〔2〕中園:遠香堂~枇杷園、北寺塔借景 拙政園〔3〕中園:梧竹幽居から雪香雲尉亭、荷風四面亭 拙政園〔4〕中園:見山楼と柳隠路曲 拙政園〔5〕中園:香洲と小飛虹 拙政園〔6〕西園と東園 |
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