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香港の飲茶、おすすめの店と美味しい点心


 香港の飲茶、おすすめの点心も写真で紹介


 飲茶とは

香港の飲茶屋、上環の蓮香楼

 香港島上環にある飲茶で有名な蓮香楼(現在は蓮香茶室)の入口。

 飲茶ができる店の隣りには新聞や雑誌などを売っている売店が有ることが多い。そこで、新聞などを買って飲茶をしながらのんびりと読む。香港人にとって飲茶をするのは日本人が喫茶店に入るようなもの。まさに「お茶」を飲みに行く感覚だ。お茶を飲みながら新聞を読んだり、友人と話をしたりしながら、いくつか点心をつまむ。
 これが飲茶なのです。
 ご飯を食べに行くのではなく、お茶を飲みに行くところ。ついでに、点心をつまむというのが本来の飲茶です。だから、次々とお皿の料理を平らげる必要なんてないし、思い出したように点心などをつまめばいいんです。

九龍・土瓜湾の龍宝酒家での朝の飲茶風景

 九龍・土瓜湾の龍宝酒家での朝の飲茶風景。殆ど観光客のいない地元の人だけが集まるような酒楼です。こうしたレストランでは、オーダー式の飲茶であろうと昔ながらの飲茶風情を楽しめます。

 混んできたら相席は当たり前。でも、知らないもの同士、話が弾む。どんなに周りがうるさくても、知らん振りして新聞を読み続ける人もいます。新聞を読みたいから飲茶に来るのか、飲茶に来たから新聞を読むのかは人それぞれですが、新聞を読みながら飲茶する香港人の姿は絵になります。でも彼らの究極の目的は飲茶です。読んで字の如く、お茶を飲みにくるのです。
 例えば、ミシュランのお墨付きをもらった添好運(ティムホーワン)などは飲茶屋ではなくて、単なる点心屋です。ミシュランだからお客さんが行くだけであって、実は香港で一番美味しい飲茶屋ではないし、そもそも飲茶ではないのです。添好運(ティムホーワン)がナンバー1の飲茶なんだなどと誤解されている日本人が多いので、あえて明確に言っておきます。

香港の飲茶

 飲茶のセット。旺角の金苑酒家のものです。金苑酒家はとりわけ有名な店でもありません。たまたまMTR駅出口のすぐわきにあったので、お茶を飲みたい私がひょっこり入った店です。こういう観光客相手じゃない一般店での飲茶は、のんびりできて飲茶に来た実感を沸かせてくれます。
 ところで、お皿の上には、直接食べ物を乗せないのが香港流です。常に、お皿の上にお碗を置き、食べ物はお碗に入れてから食べます。お椀をお皿から外して、お皿の上に直接食べ物を乗せているのはせいぜい外国人くらいです。むしろ、骨などの食べかすを置くのに皿を利用するのが一般的です。ここは、郷に入れば郷に従えで、香港流に食べましょう。

 香港の飲茶(洗杯)
 
 この皿の使い方は、実は洗杯をするとよく分かります。ここで、洗杯について少し紹介しましょう。
 旅行のガイドブックなどを見ると、「このセットが来たら、まずお湯をお碗に入れ、箸を洗って……」というくだりがありますが、今は街中ではこのような事をしている人はあまりいません。これは作法ではなく、単に衛生上の問題からやっていたことなのです。香港の衛生状態は、もう立派に向上しています。一方、香港でも元朗など郊外や深圳、広州など中国内では洗杯は当たり前のように行われています。業者が洗ってパックになっている食器でも洗杯します。ある人は儀式みたいなもんですよと言いますが、そうしないと清潔ではありませんという中国人もいます。
 で、その洗杯では、箸、蓮華、お茶の茶碗と料理を入れる茶碗は洗いますが、皿は洗わないのです。皿を洗っている人を私は見たことがありません。何故なら食べ物を乗せる皿ではないので洗わないのです。
 私は、アジアの屋台でかなり衛生的にヤバそうな場合には、ビールやティッシュ等で綺麗にしています。そして、深圳や広州では洗杯しています。私は決して無神経な人間ではないので、……。念のため。

香港中環の陸羽茶室で飲茶

 こちらは、中環は陸羽茶室の飲茶のセット。さすがに洒落ていますね。陸羽茶室は、いつも入口をインド人が開け閉めしてくれることからして、高級感が漂っていますが、食器も高級感が漂います。実はこの食器も洗杯します。一見の外国人には洗杯用のボールは出てきませんが、私には洗杯用のボールが出てきます。
 さて、飲茶をしにお店に入って最初に聞かれることは「人数」ですが、その次には「お茶の種類」を聞かれます。私は多くの場合、普洱茶を注文します。日本では、「ぷーあー茶」と呼ばれていますが、これは北京語読みです。香港では「ぽーれー茶」といいます。摂取した脂を分解して流してくれるという普洱茶の効能については、日本でも良く知られるようになって来ました。私も最初はその効能を考えてダイエット対策として普洱茶を飲んでいたのですが、今は、中華料理を食べながら飲むお茶として最も合うのが普洱茶だという味覚になってきています。まあ、一種の慣れなんだろうと思います。要は、好きなお茶を飲みながら点心をつまめば、それが飲茶になります。

翠園(ジェイドガーデン)香港空港店で飲茶
 
 そういう私も初めて香港に来た頃は、点心を食べながらビールを飲んでいました。時には紹興酒まで飲みながら点心をつまんでいましたが、これでは飲茶ではなく飲酒ですよね。こんな食べ方は自らをメタボの道に誘導しているようなものです。やはり、朝や昼の飲茶には、お茶が一番です。但し私も、夜の宴会などでは、中華料理を食べながら酒を飲みますよ。
 上の写真は香港空港の翠園です。どこで撮影した写真でも私の飲茶風景にはビールなどのアルコール類は出てこないのです。



 飲茶風景いろいろ(オーダーの仕方)

香港で飲茶(陸羽茶室)
 
 日本人に飲茶好きが多い理由は、餃子や焼売が好きだという味覚的なものもありますが、飲茶の雰囲気が好きだと言う人も少なくありません。そうなるとやはりワゴン式の飲茶が良いですよね。
 上の写真は陸羽茶室(香港最古で最高級店)の飲茶風景です。陸羽茶室では、朝7時から夕方6時まで飲茶できます。朝11時までは、売り子が点心を肩から数種類さげて売り歩きます。ワゴン式よりもコストのかかる販売形態です。しかし、そこにオールドファッションな飲茶スタイルを見ることができます。

香港、蓮香居の朝の飲茶風景
 
 香港で伝統的なワゴン式飲茶をしたいのだけれども、どこかおすすめのレストランはありますか、と聞かれた場合に、最初に私がおすすめするのが最高級の陸羽茶室と庶民派の蓮香居または蓮香楼です。静かにお茶を楽しみそうな人には陸羽茶室、ちょっとやんちゃな人には蓮香居または蓮香楼をすすめています。最近私が最もよく利用しているのは蓮香居で、蓮香楼の姉妹店として創業80年の歴史を有する老舗の広東料理レストランです。
 癒しを求めているときには陸羽茶室を選んでいます。飲茶の雰囲気を楽しみたいとか元気をもらいたいとかという時には蓮香居を選んでいます。蓮香楼は2019年2月末に閉店しましたが、同じ場所で3月から蓮香茶室として再スタートを切りました。蓮香楼は観光客向けの店ということではないのですが、観光客が多いので香港の伝統的な飲茶風景ではありません。半数くらいは大陸からの中国人、それに韓国人、日本人をはじめとした観光客がいて、香港人のお客さんは3-4割でしょう。そういう意味では蓮香居の方がおすすめです。
 また、蓮香グループは蓮香桟という新店を荃湾にオープンしています。荃湾という場所柄観光客は殆ど来ませんので、本当の伝統的なワゴン式飲茶風情を味わうならここがおすすめです。

ワゴン式飲茶の海連茶楼(香港荃湾)
 
 上の写真は同じく荃湾にある海連茶楼です。ここもワゴン式飲茶の店です。海連茶楼は荃湾駅から徒歩約10分の場所にあって、団地の一階が店舗です。恐らくその付近の人しか来ないのではないかとさえ思われるローカルな店で、広東語しか通じません。リンク先に詳しく紹介しておきましたが、かなりディープなワゴン式飲茶の店です。茶楼ですから、お茶がとにかく美味しくてフカヒレ餃子なんかも美味しい店です。

深水埗、中央飯店のワゴン式飲茶で腸粉
 
 上の写真は、深水埗、中央飯店の腸粉のワゴンです。この中央飯店もワゴン式の飲茶で数名のおばさんがワゴンを押して店内を回っています。この雰囲気、悪くありません。ただ、点心の質という点では陸羽茶室や蓮香グループには及びません。
 ワゴン式飲茶がオーダー式飲茶に取って代わられ今やワゴン式飲茶の店が希少価値になっている理由を香港人に聞くと、「オーダー式飲茶の方ができたてのアツアツの点心が食べられるからさ」と言われます。ワゴン式の方が雰囲気があるのは分かるが、味を追求するならオーダー式だという考えです。そんなことを言われるからなのでしょうか。ここ中央飯店の腸粉はまさにできたてアツアツの腸粉です。

香港のワゴン式飲茶、蓮香居
 
 さて、ワゴン式飲茶のオーダー方法です。私の考えでは、広東語が分からない普通の日本人にとっては、オーダー式よりワゴン式の方が、お目当ての点心を食べやすいと思います。
 売り子さんは当然ながら広東語で料理名をいいながら点心を売り歩きます。ワゴン式では前に料理名がぶら下がったりしていても、どんな点心を売っているのか、名前から見当がつかないことがよくあります。私も広東語は殆どヒヤリング不能ですので、それらしき発音を聞けば、「ムコイ」と言って、点心の中を見せてもらいます。ここで「ムコイ」と言って蒸籠を開けて見せてもらう行動をとれば、お目当ての点心にたどり着けるのです。

元朗・大栄華酒楼で飲茶(オーダーシート)
 
 一方、オーダー式の場合は、慣れていない人は結構苦労すると思います。
 上の写真は元朗の大栄華酒楼の飲茶オーダーシートです。このシートからそれぞれの点心の姿が半分以上分かれば大したものですが、仮に半分分かったとしても残りの分からない半分に自分の食べたい点心があるかもしれないのです。地元のお客さんが多い店では、上の写真のように広東語だけのメニューです。逆に外国人客が多く、味付けも外国人向けにアレンジされているレストランでは英語が付いていたりします。日本語メニューがある店などは、本場の味ではない点心が平気で出てきます。
 本場の点心を楽しもうとするならば、やはり地元の人が集まる店がおすすめです。そうした店でお目当ての点心にありつこうとするならば、オーダー式飲茶ではなく、ワゴン式飲茶の店を選ぶべきだろうと私は思います。とすると、庶民派の蓮香居または蓮香楼蓮香桟海連茶楼、そして飲茶最高峰の陸羽茶室がおすすめになるのです。

 
深圳の飲茶
 
 飲茶はオーダー式とワゴン式がほとんどですが、上の写真のようにカフェテリア方式というか社食方式というか、お客さんが自分で好きなものを取りに行く形式もあります。これはかなり庶民的なレストランでとられている方式で、因みに上の写真は深圳の双喜酒楼の点心です。こんな風にカフェテリア方式になっていると、注文カードを持って蒸籠が並べられている場所に出向いて行って、そこで欲しい点心を指さしてカードに印をつけてもらうだけで良いので言葉のできない日本人にはお目当ての点心を見つける最良の形態なのですが、香港ではほとんど見ることができない形態です。

蒸籠が並ぶ金都酒楼の朝茶
 
 上の写真は、深圳の金都酒楼のカフェテリア方式飲茶です。これだけ点心が並ぶとさすがに壮観ですね。
 カフェテリア方式を店の立場で考えてみると、実は一番コストを下げられる方法です。すなわち、オーダー式ですと点心をオーダーに応じて都度作るので、最もコストがかかります。また、ワゴン式ですと、点心はまとめて作れるものの、ワゴンを押して売り歩く人の人件費がかかります。このカフェテリア方式ですと、点心はまとめて作れるし、販売にかかるスタッフも多くは必要としません。
 ですから、ここ金都酒楼は格段に安くて、しかも、たくさんの種類の点心が揃えられているのです。



 美味しい飲茶(点心)のメニュー

香港深水埗、中央飯店の点心(焼売)

 飲茶に行くと食べたいものが多くて、本当に目移りしてしまいます。
 飲茶するときには、できるだけ大人数で行って、それぞれの点心を一口ずつ食べるというのが、私のおすすめです。
 おなじみの点心の紹介は、まず焼売です。焼売の種類には色々あって、写真上は深水埗、中央飯店の蟹子のせ焼売。焼売は店によっていろいろな種類があります。私は、点心では蒸し物が好きなので焼売はよく注文する点心です。私にとっては美味しい焼売を食べさせてくれる店が美味しい飲茶屋さんの一つの条件です。
 焼売を食べるからといって、焼売だからといって、間違っても、醤油とか辛子とかを欲しがらないでください。あくまでも、店が醤油を持ってくれば醤油をつけて食べる。売り子さんが醤油を入れたら、醤油をつけて食べるのです。それが、この店がおすすめする食べ方ですから、それに従うのが美味しさを味わうコツでしょう。特に、陸羽茶室のようなプライドの高い店では、店のおすすめに従わないと、不機嫌な顔をされてしまいます。店の格調にはこだわりがあるのです。

 
香港の点心(広州陶陶居の焼売)
 
 上の写真は、広州の陶陶居の蟹焼売です。広州の飲茶はレベルが高くて、私も最近はまってきています。とにかく美味しい飲茶の店が多いと思います。それは恐らく飲茶の文化が広州には根強く残っているからではないかと思います。
 香港で飲茶というと、「早茶(午前中)、「午市」(昼飯時)と「下午茶」(午後の3時くらいまで)が飲茶の時間で、その時間には飲茶を出している店でも、夕食時になると飲茶メニューがなくなるというのが一般的です。
 でも、この広州は違います。お店を大別すると、「点心を中心としたメニューでお茶を飲む店」と「料理を中心に提供する店」とに分けられます。その中の「点心を中心としたメニューでお茶を飲む店」に行くと、一日中、飲茶が楽しめるのです。すなわち、
  早茶………午前中
  午市………昼飯時
  下午茶……ランチタイム後午後3時くらいまで(店により異なる)
  晩市………夕食時
  夜茶………夕食時間後深夜まで
といった具合です。
 ここ陶陶居も、一日中飲茶が楽しめます。夜は11時半まで飲茶ができます。

香港の点心(蛯子焼売)
 
 続いて旺角の金苑酒家の焼売です。金苑酒家は先ほど紹介したように、とりわけ有名な店ではなく、たまたまひょっこり入った一般店ですが、そんな庶民的な店でも美味しい焼売が食べられるのが香港です。香港のグルメの裾野の広さを感じさせてくれます。
 ただ、飛び込みで飲茶する場合であっても、私の場合は酒楼(○○酒家といったような名前になっているレストラン)を選ぶようにしています。酒楼の場合はある程度の味の水準に達しています。日本の点心が足元にも及ばない味の点心に巡り合える確率が高いです。一方、○○点心店といったような点心専門店の中には、日本で食べるような点心を出すような低レベルの店もありますので、そういう店は選択しません。粥麺屋と違って混みあっているかどうかを外から判断するのは難しいので、店の名前というか、レストラン種類で品定めをしているのです。
広州酒家の飲茶、エビ焼売
 
 今度は広州の老舗、広州酒家のエビ焼売です。美味しそうですね。実際に美味しいんです。「食は広州に在り」なんて言われますけど、確かに広州の料理は美味しいのです。90年代ごろは、広州の調理人が香港に引き抜かれてしまって、広州の広東料理店の水準が落ちてきているなどということを聞いていましたが、確かにその頃の広州での食事というのは、自分でもそんなに美味しかったという記憶はありません。最近、よく広州に行って飲茶をすると、値段も香港並みに高くなりつつはありますけれども、味は香港と変わらないか香港より美味しいくらいです。この傾向は深圳にもあって、香港の良いシェフがより高い給与で処遇してくれる深圳や広州に移動しつつあるという傾向だと思います。それだけ深圳や広州の経済規模や生活水準が上昇してきたということです。深圳や広州の飲茶はおすすめです。

 
 
 そして、もう一つ、焼売があります。レバー焼売です。写真は香港内に数店の店を持つ鳳城酒家のものですが、陸羽茶室でも食べられます。レバーが大きすぎて焼売の中に入らないので、この焼売の場合はレバーを外出ししています。焼売の部分は皮に包まれていなくて焼売の中身そのものです。ですから、焼売の上にレバーが乗っているのではなく、焼売の中身を皮ではなくてレバーでくるんでいるという風に考えた方が良さそうです。
 こんなに脂っこいのは食べられないなどという声が聞こえてきそうですが、 これが意外に脂っこくないのです。私自身がレバーを大好物にしていることもあるかもしれません。一人で二つ食べても脂っこくて大変という印象は全くないです。むしろ、レバーと焼売が一緒になった美味しさに心躍り、力が湧いてくるという感覚です。これもおすすめの点心です。

おすすめ、エビ餃子(深圳、金碧軒)
 
 さて、おなじみの点心の紹介を焼売から始めてしまいましたが、香港でも広州でも深圳でも、飲茶の時の花形の点心はエビ餃子です。蝦餃と書き、香港ではハウガウ(広東語)、深圳ではシャージャオ(北京語)と呼び、広州ではどちらでも通じます。
 餃子の薄い皮にプリプリのエビが包まれていて、見た目には透明感のある皮の中にピンク色のエビが見えていて、食べると新鮮なエビのプリプリした食感とエビと皮の甘さが感じられるエビ餃子が美味しいとされています。エビ餃子が美味しくない店は地元の人に人気がありません。少なくともエビ餃子だけは美味しいものを出さないと、広東料理レストランとしては廃れてしまうのです。
 実際にいろいろな店で食べるとエビ餃子の出来不出来の差には意外に大きいものがあります。薄いけれども皮が破れていたり、エビがフニャフニャしていたりすることはよくあるのです。上の写真は、私が20年以上通っている深圳の金碧軒のエビ餃子です。見た目にきれいでしょう。広東料理は目でも楽しめないと失格なのです。

香港の点心(エビ餃子)
 
 言い方を変えれば、エビ餃子を食べればそのレストランの点心の良し悪しは一発で分かります。上の写真は深圳にある金谷1号のエビ餃子です。金谷1号は深圳でもトップ水準の点心を食べさせてくれるレストランだと私は高い評価をしています。
 エビの新鮮さに関しては、ここ金谷1号のエビ餃子のエビはまさにプリプリで、新鮮さを感じさせてくれます。そして皮の甘さと透明感も水準を大きく上回ります。上の写真を見ていただきたいと思います。蒸し上がったばかりのみずみずしさ感じさせる透明感ある皮は、見るからに食欲をそそります。ダメなレストランでは何度も蒸し返しているのでこのみずみずしさが失われます。厚いゴワゴワの皮など論外です。これこそ広東料理レストランらしい本当のエビ餃子の美味しさがここ金谷1号では味わえます。

香港の点心(エビ餃子)
 
 同じく深圳にある唯一のワゴン式飲茶、華洋酒楼のエビ餃子です。薄い餃子の皮の中に大きなエビが入っているのがよく見えます。ワゴン式飲茶ですから、こういうビジュアルに優れた点心を見つけると、すぐに蒸籠を取りたくなってしまうのは国籍は違えども人間の共通の心理です。見た目からその美味しさが伝わってきます。実際に食べてみると、エビにプリプリ感があって確かに美味しいのですが、蒸しあがってから時間が経ったエビ餃子だとやはり美味しさが下降線をたどります。それがワゴン式飲茶の欠点ですね。

広州の飲茶屋、蓮香楼の娥姐蒸粉果
 
 蒸した点心で私が好きなものに粉果があります。これは、広州の蓮香楼の娥姐蒸粉果です。香菜やマンゴー、バナナ、しいたけや豚肉などがくるまれています。
 粉果というのは、米の粉で作る餃子で、蒸して出てくる場合は特に中身が透けていて、見るからに美味しそうです。「娥姐」とは、蓮香楼の小姐(ウェイトレス)の話によれば、昔、この粉果を生み出した女性の名前で、その女性はしかも若くて美しかったので、大変な人気だったようです。彼女はガラス張りの厨房でこの娥姐粉果を作り続けていたといわれています。そんな伝説的な点心が、この娥姐粉果です。大満足の美味しさです。
 この粉果は大変有名なので、広州の蓮香楼以外でも娥姐粉果という名の点心を食べることができますが、入っている具は本家本元とは異なっているようです。

広州の飲茶屋、パン渓酒家の焼売
 
 広州の飲茶屋さんの紹介が続いているなかですから、もう一軒、広州で大人気の美味しい飲茶の店を紹介しましょう。広州の老舗広州料理店、泮渓酒家です。60年を超える歴史を有するこの店最大の人気ポイントは、動物点心をはじめとした像型点心です。味覚だけではなく、視覚にも訴える点心です。実は、以前、昼飯時に行ったときは、1時間以上待つことになりそうですと言われて諦めたこともあります。
 この泮渓酒家には、昼に来ると、像型点心だけのコースがあったりするようですが、朝は限られたメニューしかありません。しかも、一般の点心と同じようにメニューに品名が記載されているだけですので、どれが像型点心なのかもよく分かりません。
 メニューを見て、これは恐らく動物点心だと分かったのがこれ、緑茵白兎餃。白いウサギの餃子と書いてありますからすぐ分かります。緑の茵(しとね)は、何と香菜でした。白いウサギの方を食べてみると、中にはエビが入っていました。
 何と、蝦餃(ハウガウ=エビ餃子)の皮をウサギ風にしたものだったのです。しかも、ハウガウの味はさすがに超一流のものです。プリプリしたエビの感触が素晴らしいです。形が可愛らしいウサギで目を楽しませ、食べてみるとプリプリのエビが舌を喜ばせます。人気が出るのも分かります。



 飲茶の定番メニュー


本場の山竹牛肉球は本当に美味い

 定番の点心と言っても種類が多いので何を紹介しようか、迷ってしまいます。まず、私がよく食べる蒸し料理の点心に、山竹牛肉球があります。上の写真は香港空港の翠園の山竹牛肉球です。山竹牛肉球は、基本的には焼売の一種と考えて良いと思います。「牛肉焼売」マイナス「焼売の皮」だと思えばいいですね。中国では、牛肉というのは高級品でもなければ美味しい食材でもありません。安物の肉(牛肉のこと)を使った焼売なので、焼売の皮もないと思えばいいのです。
 じゃ、これは美味しくないのか、というと、結構私は好きなんですよ。サクサクした感じもいいですし、生姜の利いた味付けも好きなんですね。ただ日本人には少し脂っこいかもしれません。ですから山竹牛肉球を注文するとどの店でも必ず黒酢が出てきますから、黒酢をつけて食べるようにします。香港空港の翠園は外国人客が多いので味付けが本場のものとは異なります。したがって、日本人にとっては食べやすい山竹牛肉球かもしれません。

  
元朗・大栄華酒楼の春巻
元朗・大栄華酒楼の春巻は皮がパリッとしている

  日本人が好きな点心の一つ、春巻も紹介しないといけないですね。上の写真は元朗・大栄華酒楼のエビ入り春巻です。美味しそうな色に焼きあがった春巻ですね。日本で食べる春巻とはわけが違います。パリッとした薄皮の春巻です。
 日本で食べる春巻はどうも口に合わない私ですが、ここ大栄華酒楼の春巻は素晴らしいです。日本とは揚げ方、特に火力の違いがあるのでしょう。また、包まれている具も日本とは違います。日本の春巻が本場の春巻とどの程度違うのかということを知るためにも、香港旅行の際には美味しい点心を出してくれる店で春巻を味わってもらいたいものです。

深圳・唐宮海鮮舫の点心
 
 日本人が好きだということで言えば、もう少し餃子も紹介しておく必要があるでしょう。上の写真は深圳の唐宮海鮮舫で食べた鮮蝦豆苗餃です。透明感があって薄い皮の中に豆苗やエビが見えます。こうした点心の見栄えだけ見ても、唐宮海鮮舫が一流の広東料理レストランであることが分かります。食べてみると、プリプリのエビの感触と香りが豆苗のすっきりした味とマッチして大変美味しいです。
香港の点心(野菜粉果)

 上の写真は似たような点心に見えますが、餃子ではなく粉果で、潮州式春菜粉果です。深圳の天成潮州酒楼という潮州料理レストランで食べたものです。粉果の発祥は潮州ですから本場の粉果です。 野菜以外にシイタケや豚肉など様々な具がくるまれていて、これなんかはまさに日本人の味覚に合った美味さがあってさっぱりした味付けの点心です。

    
香港の点心(エビ野菜餃子)
 
 上の写真はエビ野菜餃子です。深圳にあるワゴン式飲茶、華洋酒楼で食べたものです。餃子の皮で具材を包むときに葉をイメージして包んでいますから、形も可愛らしく、薄い皮を通して見える野菜やエビがきれいです。これなどは日本人には大変食べやすい点心です。エビ餃子に入っているエビに比較するとエビ自体に期待することはできませんが、野菜餃子として食べれば満足度が高いです。

香港の点心(トウモロコシ餃子)
 
 餃子の皮というものは大変便利で、何でも包むことができます。上の写真はトウモロコシ餃子です。香港ではあまり見かけませんが、深圳や広州では人気の点心の一つです。大陸の人はトウモロコシが大好物なのです。
 トウモロコシの餃子なんて、などと私も小馬鹿にしてずっと食べていなかったのですが、先日たまたま食べてみたら、甘くて意外に美味しいのです。以来、私がよく注文する点心の一つになっています。上の写真は深圳にあるワゴン式飲茶、華洋酒楼で食べたものです。

香港の点心(湯葉巻き)

 香港・上環にあるワゴン式飲茶の蓮香居の鮑汁鮮竹巻です。鮑汁味の湯葉巻きです。これも広東点心の定番です。昔ながらの濃いめの味付けです。私は20年以上もこの味付けに慣れているので、このどろっとした湯葉巻を見ると、どうしても注文したくなってしまいます。美味しいですよ。ただ、この味付けに慣れていない方が一人で二本食べるとちょっと脂っこい食後感が残るようです。できれば三人以上の時に食べたい点心です。
 若干、ウンチク話です。中華料理に詳しい方ならシート状に広げて干した湯葉を「腐皮」、棒状に干した湯葉を「腐竹」ということはご存知だと思います。ですから、本来この料理は鮑汁腐竹巻と名づけるべき点心です。しかしながら「腐皮」とか「腐竹」とかを料理名に使うと、美味しく見えません。それどころか、腐った食べ物にも見えます。そこで香港や中国では「腐」を逆の意味である「鮮」に置き換えて調理名にしている店が一般的です。もちろん、腐皮巻という調理名をそのまま使っているレストランもあります。 

鮮蝦腐皮巻(エビの湯葉巻き揚げ)
鳳城酒家本店の鮮蝦腐皮巻(エビの湯葉巻き揚げ)
 
 次は、同じ湯葉巻でも揚げた点心で、鮮蝦腐皮巻(エビの湯葉巻き揚げ)です。湯葉巻きのサクサクに揚がった食感とエビのプリプリ感が何とも言えない味で、本当に癖になってしまいます。この店の鮮蝦腐皮巻は油が軽いので、特に揚げたサクサク感が心地よいです。ご覧のとおり醤油が出てきています。醤油や酢が出てこない焼売や蝦餃はそのまま食べますが、、醤油を出てきた場合には。 それをつけることを推奨しているということになります。私の好みからすると、ここの鮮蝦腐皮巻はそのままで食べても美味しいと思いますが。
ホタテとエビの湯葉巻揚げ(深圳)

 湯葉は点心では揚げ物としてもよく使われています。上の写真は深圳の金谷1号で食べたホタテとエビの湯葉巻揚げです。爽やかさまで感じさせるほどのこのパリパリした湯葉の揚げ方は芸術的です。食欲を掻き立てられます。食べてみると、揚げているのに全く脂っこくない湯葉巻きです。100回以上、いや、もっとかも知れませんが、何度も食べた湯葉巻揚げの中でもトップクラスの味です。 
 湯葉巻きの中には大きなホタテとエビが入っていて、その味を損なわないように脂っこさを排除した調理法なのです。湯葉の香りもほのかに感じられます。何度も書いて申し訳ないのですが、美味しいです。美味しい点心です。

広州の飲茶、什果蝦網筒
 
 揚げた点心でもう一つ紹介しておきます。上の写真は、広州の蓮香楼の什果蝦網筒です。「果物とエビの筒型サクサク揚げ」とでも訳したらよいのでしょうか。エビのすり身とマンゴーを包んで揚げたものです。サクサク感とマンゴーの甘さが印象的です。美味しいです。見た目以上にサクサクしてますよ。
 こういった揚げた点心は少し脂っこいので、一人で一皿も食べると、少し飽きが来てしまいます。揚げた点心については、二人で一皿くらいの分量で注文するのが私流の注文方法です。それから、普洱茶をしっかり飲んで脂を流してもらうことも忘れずに。


 お腹にたまる点心

香港の点心(チャーシュー饅頭)
 
 点心は焼売や餃子でもお腹にたまるよという声が聞こえてきそうですが、もっとお腹にたまる点心を紹介しましょう。
 まず、チャーシュー饅頭です。これはワゴン式飲茶の蓮香居で食べたものですが、蓮香居ではたまたま何が回ってくるかによって、その日に食べるメニューが変わってしまいます。
 香港のチャーシュー饅頭を食べていると、日本の肉まんなんか食べる気も起こらないですね。ふっくらとした饅頭、汁がたっぷりで美味しく味付けられたチャーシュー、この美味しさを分かってしまうと、ついついこの蒸籠を手に取ってしまうのです。

銅羅湾、彩福皇宴のカスタード饅頭
銅羅湾、彩福皇宴のカスタード饅頭
 
 饅頭の系統では流沙包、カスタードクリーム入り饅頭も人気があって、どのレストランのメニューにも入っている点心です。中を開けると、たっぷりのカスタードクリームが入っています。
 流沙包(カスタードクリーム入り饅頭)で有名なのは、銅羅湾にある彩福皇宴です。上の写真のようにいかにも美味しそうな流沙包です。この流沙包は何度も賞を取っているだけあって、ビジュアル、味ともに他の店を寄せ付けない人気です。

香港の流沙包(カスタード饅頭)
 
 この流沙包は深圳の丹桂軒で食べたものですが、このようにクリームが流れ出るような流沙包にはなかなかお目にかかりません。丹桂軒の飲茶タイムの人気商品の一つであることもうなづける美味しい点心です。それほど大きくないので、ペロッと食べてしまいました。食べやすいのです。
 彩福皇宴の流沙包も同じようにこぼれだしそうなくらいたっぶりとクリームが入っています。ぜひ香港に来たら試してください。

 

伝統的なゴマ饅頭ですが

 今度は伝統的なゴマ饅頭です。メニューを見ていたら何となく食べたくなってしまったのです。注文票(オーダーシート)で「芝麻流沙飽」という字が赤く書かれていて、赤い字で書かれた料理というのはおすすめ料理でしょうから、だったら試しに食べてみようという気になったわけです。
 料理が出てきてみると、ちょっとびっくりです。普通のゴマ饅頭の場合は、ゴマを饅頭にまぶしてあって、見るからにゴマ饅頭のようなのですが、ここのゴマ饅頭は外から見ると、ゴマ饅頭には見えません。なるほど、もう一度メニューを見ると、「流沙飽」となっていました。


こういうゴマ饅頭も新しいメニュー

 ふわっとした軽い感じの饅頭で中のゴマ餡がおいしいです。甘すぎず大人のゴマ味という感じです。さすがにおすすめ料理だけあっておいしいですね。気に入りました。

元朗・大栄華酒楼の?黄馬拉?(カスタードクリーム入りのマーライコー)
元朗・大栄華酒楼の看板商品はカスタードクリーム入りの馬拉糕

 さて、いろいろご紹介してきた飲茶のデザートですが、デザートも店により特色があります。
 例えば元朗・大栄華酒楼では、奶黄馬拉糕(カスタードクリーム入りのマーライコー)が一番人気のメニューです。一般的な馬拉糕(マーライコー)に比較すると、カスタードクリームの味が強い分だけ甘みが増しています。私は飲茶の時にあまり馬拉糕(マーライコー)は注文しないのですが、ここ大栄華酒楼に来た時だけは例外です。やっぱり何度食べても美味しいのです。
 美味しい普洱茶(ポーレー茶)を飲みながらつまむ甘い馬拉糕(マーライコー)に、レトロな香港の飲茶風景が良く似合います。

子豚の饅頭(深圳の茶餐庁、尚品居)

 饅頭系の点心にはその店ならではのオリジナル点心もあったりします。
 上の写真は深圳の茶餐廳、尚品居にある可愛猪仔包(可愛い豚ちゃん饅頭)です。食べるのがもったいないくらい可愛い点心です。尚香居の人気商品の一つのようです。味としてはカスタード饅頭で、流沙包のようなとろけるクリームが入っているのではありません。そういった意味で味としては、実は平凡です。でも、またこの可愛い子豚さんに会いたくなって、次回も注文してしまうに違いありません。

 
広州酒家の腸粉
 
 お腹にたまる点心としては腸粉もおすすめです。上の写真は広州にある広州酒家の蜜汁又焼腸粉。チャーシュー入り腸粉です。腸粉の語源ですが、「粉」という字が入ると米から作られたことを意味します。そして、「腸」というのは豚の腸に似ているからつけられたといいます。とすると、腸粉というのは、米からできた豚の腸みたいな意味合いなのでしょうね。
 この又焼腸粉は、醤油だれで味は濃い目ですが、腸粉がつるっとした感覚でとても滑らかなせいか、全体としては、さっぱりした味付けで美味しいです。腸粉のなかにはチャーシューを入れたり、エビと野菜を入れたり、牛肉を入れたりしたものがありますが、他の点心でどんな素材を食べたかによって、それらの具と重複しないように腸粉の中に入れる具を選ぶと良いと思います。

香港の点心(変わり種の腸粉)

 ちょっと変わった腸粉も二つ紹介しておきます。上の写真は春風得意腸という点心で、香港ではいくつかの店でメニューに載っています。上の写真は北角の誉宴でおすすめの点心として紹介されていたものです。
 広東料理というのは、点心であっても見た目の美しさというのが評価の一つのポイントです。その点からすると合格です。春風得意腸は、蝦をニンニク味で揚げたものを腸粉でくるみ、蛯子や春雨をその上に乗せたものです。なぜこれを春風得意腸と呼ぶのかは不明ですが、少なくとも爽やかな味というよりも、むしろ腸粉の爽やかな味わいの代わりにサクサク・ミシミシして、ニンニクの香りが食欲をそそる一品です。私が思うに春風何とかという店が開発した腸粉で、店の名前を冠した名前を付けた点心なのではないかと思います。

香港の点心(金沙紅米腸)

 金沙紅米腸も変わり種腸粉の一つです。初めて見た瞬間は肉巻きかベーコン巻かと見間違えましたが、カリカリの腸粉の皮で包まれています。サクサク感がたまらなく美味しくて嬉しいです。 中にはエビや野菜や豚ひき肉などが包まれていて、味付けは醤油味というか腸粉のタレの味です。ちょっと濃いめです。脂っこく見えるかもしれませんが、食べてみると全然そんなことはありません。一人で全部食べても苦にならないすっきりした味です。
 これもまたどの店のメニューにある点心ではありませんが、美味しいですからこの名前をメニューの中に見つけたらぜひ試してみてください。因みに上の写真は深圳の尚品居で食べたものです。尚品居のメニューには店の自慢料理の印がついていました。

 
香港で飲茶(皮蛋痩肉粥)
 
 お腹にたまる点心をいろいろ紹介してきましたが、一般的に飲茶するときには、いろいろな種類の点心を食べてご飯や麺類は頼まないのが普通です。私の場合は、チャーシュー饅頭みたいな饅頭ものや腸粉を食べることが多いです。
 また、朝であれば中華粥を注文して、2~3人で分けて食べることもあります。粥も種類が多いですからあまり詳しくない方でしたら、上の写真にある皮蚤痩肉粥(ピータンと豚肉入りの粥)あたりが無難だと思います。


ミシュラン入りの鳳城酒家本店で食べた中華粽は超ビッグ

 お腹にたまる点心としては、中華粽(ちまき)も紹介しないわけにはいきません。私は粽は苦手ということはないのですが、一人飲茶の機会が多い私には、粽が三つも四つも蒸籠に入っていると、お腹にたまりすぎて他の点心を食べられなくなってしまうのでいつも敬遠しているのです。
 でも、三人以上くらいで来た時には時々注文します。一人一個食べれば十分な量です。包んである蓮の葉を開くと、エビ、貝柱やシイタケなどの香りが一気に広がります。多くの場合、もち米の中には鶏肉が入っていて鶏肉の香りもしてきます。この出来立ての粽の蓮の葉を開けた瞬間は、初めて食べる人は感動するに違いありません。上の写真は2017年からミシュランに掲載されている鳳城酒家本店で食べたものです。鳳城酒家の粽は蒸籠に一つしか入っていません。蒸籠が小さいのではなく粽が大きいのです。食べ甲斐があります。もちろん味はミシュランの保証付きです。

餅米おこわ饅頭(深圳・華洋酒楼の飲茶)

 同じ餅米でも私が好んで食べるのは、餅米おこわご飯です。これも深圳にあるワゴン式飲茶、華洋酒楼で食べたものですが、エビ餃子や焼売と同じワゴンで運ばれてきたものですから、初めて見た瞬間には変わり種の焼売かと思いました。これは意外に美味しいです。意外になどというのは失礼ですが、まさにそんな印象なのです。
 干しエビや貝柱などで味付けされた素朴な味でかなり美味しいのです。これもお腹にしっかりたまる点心なのですが、ついつい一人で完食してしまいました。私がいっぺんに気に入ってしまった点心です。

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私のおすすめ点心

香港で飲茶(大根のXO醤炒め)

 日本人に比較的なじみのある点心を中心にいろいろと点心を紹介してきました。ここでいくつか私のお気に入りの点心を紹介します。飲茶する、すなわちお茶を飲むときに相性の良い点心の紹介です。
 まず、XO酱炒萝卜糕(大根のXO醤炒め)です。蒸籠と同じくらいの大きさで出てきますから、結構な分量の料理です。炒める段階でXO醤を使っていますので、XO醤の味が良く染み込んでいどこのレストランでもメニューに入っていることが多いですが、美味しくないレストランでは油が良くなくて脂っこくなってしまいます。上の写真は私の家の近所にある海皇漁港というレストランで食べたものです。
 まるでジャガイモの煮込みのように見えるかもしれませんが、これが大根です。大根はとろとろになっていてXO醤の香りが十分に染み込んでいます。ピーマンやねぎも大根とともに炒めまれていて、味に広がりを与えてくれています。美味しくてお茶の友に適した点心です。大根餅よりずっと美味しい点心ですよ。

柱候醤蒸金銭肚(深圳、金碧軒)
 
 上の写真は深圳の金碧軒で食べた柱候醤蒸金銭肚です。金銭肚は豚の胃袋(ガツ)のことです。そして、柱候醤は黒コショウと牡蠣エキスをベースにした中華調味料です。豚の胃袋(ガツ)の柱候醤蒸しということになります。色が黒っぽいのは、柱候醤で蒸しているからです。
 煮込み過ぎたのか、豚の胃袋(ガツ)のシコシコ感が不足している気もしないでもありませんが、柱候醤の味付けが良くあっという間に食べきってしまいました。普洱茶にもよく合うおすすめの点心です。

元朗・大栄華酒楼のイカのニンニク蒸し
 
 上の写真のイカの煮物も普洱茶によく合います。元朗の大栄華酒楼で食べたものですが、ここのはニンニクがたっぷり効いていて、これはこれでかなり美味しいです。お茶を飲みながらつまむのにちょうど良いです。まさにお茶を飲むために注文するのに適した点心なのです。大栄華酒楼のイカのニンニク蒸しは私の定番です。香港の街中のレストランでもよく見かける点心で、香港人が好きな点心の一つです。
 香港人は鶏の爪を煮込んだ点心がお茶に合うと言って一緒に行くと必ずテーブルに並ぶのですが、私は鶏の爪だけは口に合いません。だけど香港人に言わせれば飲茶の定番なので文字だけで紹介しておきます。

大根餅(香港・蓮香居)
ワゴン式飲茶の蓮香居の作り立ての大根餅
 
 お茶と相性が良いという点では、この大根餅もその一つです。上の写真はワゴン式飲茶の蓮香居で食べたもので、蓮香居ではその場でワゴンで作り立ての大根餅を提供してくれます。できたての大根餅を食べられるのは有難いです。大根餅はできるだけできたてのうちに食べるとその美味しさが理解できると思います。
 そういう意味でワゴン式飲茶の店では、食べたい点心が回ってきたらすべて取ってしまうのではなく、食べるペースに合わせて点心を取っていくのが香港流です。
 一方大陸から来た人は、一度に沢山の点心がテーブルに並ばないと満足しないので次々と点心を取ってしまいます。すると、冷めて美味しくなくなった点心を食べることになってしまいます。日本人の食べ方も大陸の人に似ていると思います。せっかくですから美味しく食べましょう。

カボチャ餅は大根餅に劣らず美味しい(香港・大栄華酒楼)
元朗の大栄華酒楼のカボチャ餅
 
 今度は大根餅ならぬカボチャ餅です。これはレトロなメニューで、大根餅は今でも飲茶の点心の定番の一つですが、カボチャ餅というのはごく限られた老舗茶楼でしか見ることはできません。
 では美味しくないのかというと、私は甘みが感じられて美味しいと思います。大根餅の場合は味付けの良し悪しで店によって美味しさの差が大きいです。カボチャ餅の場合はもちろん味付けもありますが、それよりもカボチャ本来の味が生かされている点心です。この味が実はあ茶に合うのです。飲茶を楽しむ時に一度試してもらいたい点心です。

元朗、大栄華酒楼の伝統的な香港点心
香港・元朗、大栄華酒楼の焼きナス

 今度は中国版焼きナスです。ナスだけ焼いて出てくるのとばかり思っていたら、中国式さつま揚げも少し入っています。上の写真でもちょっと顔を出していますね。日本の焼きナスと違ってさっぱりした味わいはないものの、お茶のつまみとしては相性の良い点心だと思います。
 実はこの点心も元朗の大栄華酒楼で食べたものです。大栄華酒楼はもともとは老舗の茶楼で、その時代から味を守ってきた伝統的なメニューが特徴の一つです。食事のための点心ももちろんありますが、こういったお茶に合う点心のメニューが豊富なことも特徴の一つです。

 

 飲茶のデザート

深圳、丹桂軒のマンゴーブリン
 
 飲茶では、デザートも数多くの種類があります。多くの日本人に好まれているのはマンゴープリンでしょうか。上の写真は深圳の丹桂軒で食べたものですが真ん中の赤いのはスイカです。視覚的にもアピールできるマンゴープリンです。幸せな味です。マンゴーの香りとほどよい甘さが調和して、これぞマンゴープリンの味です。満足です。

ココナッツのマンゴーはさみプリン
 
 上の写真はマンゴープリンの変形とでも言いましょうか、ココナッツのマンゴーはさみプリンです。ココナッツプリンの間にマンゴーが挟まっていて、まるでケーキのように食べることができます。最近の私はマンゴープリンよりこちらを注文することが多いですね。と言っても、どの店にもあるメニューではありません。

 
 陸羽茶室では、デザートについては、おばさんがいろいろな種類のデザートを取り揃えて運んできてくれる中から選びます。この日選択したのはエッグタルトです。点心のデザートとしては定番中の定番です。甘すぎず、といってもキリリとしまった味です。日本の有名ケーキ屋さん顔負けです。サクサクしたパイ生地ととろーりとしたたまごが生む絶妙の食感、そして程よい甘さがコロニアルな陸羽茶室の雰囲気にピッタリです。
 タルトは、意外に点心に合います。というか、普洱茶に合うのでしょう。

深圳・唐宮海鮮舫のドリアンパイ
  
  最近香港で人気があるのはドリアンパイ。ドリアンパイ。ねっとりしたドリアンが包まれたパイで、これはかなり美味しいです。かつてはチャーシューパイとか他のパイがパイの主流だったのですが、今はドリアンパイが圧倒的な人気です。私はピザだってドリアンピザを注文してしまうくらいのドリアン好きですので、ドリアンパイが嫌いなはずがありません。食べるとドリアンの独特の香りが口の中に広がります。まあ、嫌いな人もいるかも知れませんので、他の点心を食べ終わるころに注文したい点心です。因みに写真は深圳の唐宮海鮮舫です。


伝統的な一品、チャーシューパイ

 でも、ドリアンパイが人気が出てきたのはここ10年位の話で、まだまだ歴史は浅いものがあります。その点、伝統も感じさせるのがチャーシューパイです。これも広州酒家の自慢料理の一つです。もちろん、香港の多くのレストランで食べることができる定番料理の一つです。皮はサクサクしていますし、チャーシューは旨いしで、大満足です。

おすすめ、マンゴー腸粉(深圳の茶餐庁、尚品居)

 デザートの分野にも様々なオリジナル点心があります。上で紹介した可愛猪仔包(可愛い豚ちゃん饅頭)がある深圳の尚品居が味で勝負しているのが上の写真のマンゴー腸粉です。これは冷たいデザートです。マンゴーがたっぷり入っていて甘いです。視覚的にも味覚的にも完全に合格です。
 4人くらいで食べてちょうど良い大きさかも知れません。実は一人で食べに来たものですから最初に戦意を喪失しそうになったのですが、食べ始めたら美味しくて完食してしまいました。そのくらい美味しいデザートです。このマンゴーを腸粉に包みデザートとして食べるという発想は、ありそうで今まで見なかったですね。


上海にある広東料理の名店、杏花楼の雪媚娘

 一方、ひんやり冷たいお菓子ということであれば、冷たいクリームを包んだ饅頭などもあります。上の写真はちょっと邪道ですが、上海にある広東料理レストランの杏花楼で、レストランの人にすすめられた雪媚娘というデザートです。そのおすすめに従って、注文したところ、白い饅頭が三つ出てきました。


新しい点心にも挑戦

 食べてみると、これが美味しい。フルーツの香りがするクリームが中に入っていて、アイスクリームではないのですが、よく冷えたデザートになっています。口の中の脂やおそらくは胃腸の中の脂もすっきりするような味わいです。これまた飲茶の締め括りにふさわしい逸品です。
 このように、飲茶は伝統的な習慣ではあるのですが、点心は日々進歩していて、そうした新しい点心を楽しむのも、飲茶の楽しみの一つなのです。

      
広州酒家の伝統的な飲茶スタイル
     
 飲茶の楽しさは、香港・広州の伝統文化に触れることです。飲茶は、食文化であり、生活文化でもあります。最後の写真は、広州にある広州酒家での朝の飲茶風景です。広州酒家では、潮州スタイルの飲茶です。茶盤の上に、各種の茶器が載っています。工夫茶のようにお茶を淹れて飲みます。まさにお茶を楽しむ文化がこの店では残っています。
 そんな雰囲気に浸りながら、上質の点心をつまんで美味しいお茶を飲む。心にも体にも健康的な食事になります。
 ぜひ、今度の香港旅行では、本格的な飲茶を体験してみてください。時間があったら、広州にも足を伸ばしてください。




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管理人から一言(揚州の点心)


 揚州点心というものを聞いたことがありますか?
 揚州は江蘇省にある都市で、中国の歴史の舞台にはよく出てくる都市の名前です。いわゆる典型的な玉子炒飯には「揚州炒飯」という名前がつけられていますが、その揚州です。
 この揚州には、隋の時代から点心を作り続けている富春茶社という老舗のレストランがあって、今でも高いレベルの点心を食べることができます。最近、この揚州に行き、本場の揚州炒飯を食べるとともに、富春茶社冶春花園の点心を味わってきました。揚州においても、点心をつまみながらお茶(但し、緑茶です。)を飲むのが朝の習慣で、そのあたりは香港や広州の飲茶の習慣に近いものがあります。むしろ、飲茶の原型を見たような気がしました。
 機会があったら皆さんも揚州に行って、揚州の点心を味わってください。私の場合は、期待していた以上の味だったので、大変感動しました。

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