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順徳に行って本場の順徳料理と順徳点心


 順徳に行って本場の順徳料理と朝飲茶


順徳へは香港から広深港高速鉄道で一時間

清暉園(広東省、順徳)

 順徳料理(順徳菜)という名前を聞いたことがあるでしょうか。知っている方はかなりの中華料理通です。順徳料理は広東料理の一つで、もともと広東料理の源流の一つだと言われています。香港にある鳳城酒家などは順徳料理レストランですので、香港に来られた方は知らない間に順徳料理を食べているかもしれません。
 順徳は広州市のすぐ南に位置していて、珠江三角州の中の古い街の一つです。河川が多いことから魚の養殖が盛んな一方で、酪農が盛んで牛が多くいるようです。そんな土地柄もあって独自の食文化が生まれたのですが、広州に近いのでその料理や味付けが広東料理に呑み込まれてしまったという風に考えると分かりやすいです。
 今回、順徳区(仏山市)まで行きましたが、観光地としては清暉園という清代の名庭園はあるものの、それ以外は特に見るべきものはないという郊外の街です。

順徳の地図
 
  順徳の位置は上の地図で見る通り広州のすぐ南です。赤いマークを付けた位置が新幹線(広珠城際鉄道)順徳駅の場所です。2018年9月に広深港高鉄(高速鉄道)が香港まで延伸されましたので、香港から広州南まで47分で行けるようになります。広州南から順徳までは別の新幹線(広珠城際鉄道)でわずか10分ですから、香港から新幹線で行けば乗換時間を入れて1時間余で行くことができます。広州南駅から広州中心部までは地下鉄で1時間くらいかかりますから、グルメ旅行をするなら、広州よりも順徳に行った方が時間がかからないということになります。

順徳料理の名店、香雲軒(順徳)
 
 順徳は順徳料理の本場だけあって沢山の広東料理レストランがあります。中国の食べログのようなサイト(大衆点評)で広東料理(粤菜)レストランを探すと実に沢山の店がヒットします。その中から評価の内容などを吟味してどうやらここが良さそうだと目を付けた店が香雲軒というレストランです。香雲紗園林酒店という順徳で最もレベルの高いホテル内にあります。一番上の写真にある清暉園の隣にありますので、場所は分かりやすいし、中国語のできない人でもタクシーに乗って清暉園まで来れば、すぐに分かります。住所などは大衆点評の香雲軒のページで確認してください。
 香雲軒には既に3回行っています。私も気に入ってしまったのです。このページでは香雲軒で食べた順徳料理をはじめとした美味しい料理を紹介します。



鳩のローストの美味さに震えた夕食

鳩のロースト(順徳、香雲軒)
 
 私が香雲軒を初めて訪問したのは夕食時でした。順徳の最高級ホテルに位置しているだけあって内装もモダンで雰囲気の良いレストランです。
 この日最初に出てきた料理は鳩のローストです。鳩を食べるのかと驚くのは日本人くらいのもので、鳩は海外では一般的によく食される素材です。日本にいる鳩とは違って食用鳩です。
 上の写真から感じてほしいのですが、広東料理というのは味が勝負であることは言うまでもありませんが、目でも楽しませる料理です。そこが北京料理、上海料理や四川料理などと異なるところです。お皿には料理以外に花も添えられています。こんなところから、私は日本で食べる中華料理とは別物の中華料理だと考えています。さらに言えば、鳩も切って出すか、切らずに出すかも選択できます。一人で食べに来ていますから、食べやすさを考えてこの日は鳩を切って出してもらいました。

鳩のロースト(順徳、香雲軒)
 
 鳩を切って出しても、できるだけ原型を再現すべく配膳されていることが分かります。中華料理では子豚の丸焼きという豪華な料理でもそうすることで食べる人の目を楽しませているのです。日本でも刺身で姿造りという出し方をしていますが、それと同じ考え方です。
 この鳩のローストについては、私は大好物ですのでよく食べています。でも、今まで食べた中でも一二を争う美味しさだという印象です。鳩のローストの美味しさについて私の判断基準は、第一に皮のパリパリ感です。第二に皮を食べた時に出てくる肉汁の美味さです。第三に肉の弾力と柔らかさです。第四に味付けです。この四点のいずれの点においても香雲軒の鳩のローストは合格なのです。

 
ホタテのネギソース蒸し焼き(順徳、香雲軒)
  
 順徳料理と言えば魚です。河川の多い土地柄、魚の養殖が盛んで地元の魚が豊富だからです。しかしながら一人で食べるには大きすぎる魚が多いので、方針変更してホタテのネギソース蒸し焼きというのを注文してみました。お洒落に盛り付けられて出てきました。

ホタテのネギソース蒸し焼き(順徳、香雲軒)
 
 広東料理でホタテというと、いつもは春雨とともにニンニク蒸しにして食べています。これは初めて食べる調理法です。この調理法は順徳ならではなのでしょうか。見た目には濃い味付けに見えるものの、素材の味を生かした確かに広東料理の味付けです。美味しいけど、一つじゃ物足りないですね。一皿に二個は欲しい美味しい味付けです。

本場、順徳で食べた陳村粉
 
 そして、主食は陳村粉にしました。陳村粉は広東省南部や香港でよく食べられている米から作る麺で、河粉という米の麺を改良したものです。河粉と比較すると、薄く、さわやかで、滑らかさと柔らかさが違います。蒸して食べるのが一般的ですが、これも麺が薄さならではです。
 この陳村粉という名は、順徳の陳村にあった店が初めて作ったことから付けられています。これはまさに順徳料理なのです。今では広州、深圳や香港の広東料理のレストランでもメニューに入っていることは少なくないので典型的な広東料理だと思われがちですが、そうではないのです。

本場の陳村粉(順徳、香雲軒)

 私も香港や深圳のレストランで時々食べます。主として大人数で飲茶する時に注文します。なぜ大人数の時かというと、上の写真のように量が多いからです。
 今日は一人で来ていますから完食することは到底無理だと承知しつつも、やはり本場の陳村粉を食べたい気持ちが強いので注文したわけです。すぐ上の写真で分かるように薄い幅広麺で、食べやすくするために短く切っています。蒸したうえで、醤油などの調味料で味付けされています。本場の陳村粉はさすがに美味しいですね。順徳まで来たかいがありました。



 また夕食に来てしましました、香雲軒


 本場の順徳料理の美味しさを知ってしまうと、深圳や香港にいても順徳料理を標榜しているレストランに通ったりして、順徳料理の素晴らしさをますますはまり込んでいってしまいます。
 そんな時、たまたま広州まで仕事で出かける機会があったので、順徳まで足を伸ばしてみました。行ったのは当然香雲軒です。

 
順徳料理(順徳黒豆腐のかぼちゃソース)

 この日も一人飯なので、あまり品数を注文できません。また、魚なども一皿分が大きいので注文しづらいという状況です。結果的に順徳料理というよりも広東料理的なメニューになってしまいました。
 一品目は順徳黒豆腐のかぼちゃソース。 黒豆腐というのは潮州料理の豆腐で、鹵水というたれで何日も煮ることにより豆腐が黒くなり、香り豊かになります。潮州も広東省にある街で、潮州料理という独自の食文化を持っています。順徳と並んで、広東料理の一大派閥となっています。この料理は正直言ってあまり順徳料理らしくなくて、順徳と潮州の料理をミックスした、まさに広東料理の味付けです。まろやかでカボチャと黒豆腐の味を生かした素晴らしい味わいでした。

順徳料理(准山のブルーベリーソース)

 准山のブルーベリーソースです。准山は山芋を乾燥させたもので、漢方薬の材料として有名です。整腸健胃、疲労回復、血糖降下作用、老化防止などに効能があるとされていますが、まさに私のための食材のようなものです。これを食べやすくするためにブルーベリーソースがかけられていて、おかげさまで完食できました。さっぱりして食べやすいメニューです。

順徳料理(シーフード野菜炒め)

 ホタテ、シーフードと野菜の順徳あっさり炒めです。これなんかはまさに順徳料理の味付けですね。あっさりしていて食べやすい炒め方で、ある意味日本人好みと言えそうです。

順徳料理(シーフード野菜炒め)

 エビやイカなどのシーフードに加えてホタテが入っているのは嬉しいですね。順徳料理らしいというか、広東料理らしいというか、素材の味を生かした炒め物は、中国の他の地域ではあまり見ないものです。私が一遍に気に入ってしまった味付けです。

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飲茶が盛んな順徳で早茶(朝飲茶)

順徳で朝飲茶(早茶)
 
 飲茶というのは広州で生まれたお茶を飲む習慣で、もともとは茶楼とか茶館とか言われる店でお茶を楽しむ習慣でした。茶楼や茶館は日本で言えば喫茶店みたいなものです。お茶のお供として点心が供され、その点心の進化とともに、点心を食べに茶楼や茶館という人が現れたり、酒楼(レストラン)が点心を扱い始めたり茶館がレストランを開いたりといった変化があって今に至っています。
 広東人は来客時にお茶を自分で淹れてもてなしますが、その時に使うのが上の写真にある茶盆であり各種の茶器です。私は深圳で仕事をしていますが、一定の立場以上の人は自分の個室にお茶を淹れるセットがあります。私の部屋にもあります。
 そうした茶文化を店内で感じさせてくれる店は、香港にはなく、広州でも数が少なくなっています。この香雲軒に朝来て驚いたのは、そうした茶文化を感じさせる茶器セットが出てきたからです。順徳の飲茶はすごいかもしれないと思ったのはこの時でした。

スープ入りエビ餃子(順徳、香雲軒)
 
 点心はオーダー式です。中国語のメニューから選びます。ここでまた驚いたのは、メニューに載っている点心に見かけない点心名がいくつも入っていることです。それらのうちのいくつかは順徳点心と呼ばれる順徳ならではの点心です。飲茶時の点心についてはそうした順徳点心から紹介していきたいと思います。
 まず紹介したいのはスープ入りエビ餃子の蟹子乗せ。これはありそうであまりない点心です。恐らく私も初めて見たような気がします。エビ餃子(蝦餃)と言うと、やはり蒸したものというイメージがどうしても強いのです。しかし、こんな大きい餃子が3つ来るとは思いもよりませんでした。

 
スープ入りエビ餃子(順徳、香雲軒)
 
 大きなエビ餃子がスープに入れられていて、その餃子の上に蟹子が乗せられています。何とも贅沢なビジュアルです。そして食べてみると、これ見た目以上に美味しくて、スープも絶品の味です。スープ餃子でありながら、まるで蒸し餃子に入っているエビのようにエビがプリプリです。思わず一気に3つ食べてしまいました。もし、ここ香雲軒に来たらこの点心は外せませんよ。

倫敦?(ロンドンケーキ)(順徳、香雲軒)
 
 倫敦糕(ロンドンケーキ)は順徳ならではの点心、甘すぎず香り高く美味しいです。倫敦(ロンドン)と言っても英国には全く関係なく、順徳にある地名です。陳村粉も順徳の地名が付いたものですが、これも同じです。
 倫敦糕(ロンドンケーキ)は水牛のミルクを使った中国菓子で柑橘系の香りもします。初めて食べましたが、さっぱりした味で好きになりました。香港でもごくわずかですが、この倫敦糕(ロンドンケーキ)をメニューに入れている店があったと記憶しています。ただ、このお菓子の味のポイントは陳皮という柑橘系の香りを入れたところにありますが、この陳皮を隠し味で使うのが順徳料理の一つの特徴です。香港で食べる倫敦糕(ロンドンケーキ)が果たして陳皮を使っているか、それは分かりません。

水牛の牛乳タルト(順徳・香雲軒)

 冒頭での順徳の紹介で書いた通り、酪農は順徳の主要産業の一つです。その酪農というのは水牛なのかもしれません。
 今度は水牛の牛乳タルト。このように、水牛のミルクを使った料理も順徳料理の特徴の一つです。水牛の牛乳タルトは初めて食べたので新鮮な味です。

  
水牛の牛乳タルト(順徳・香雲軒)

 ミルクの部分はふわふわでミルクが口の中でとろけます。そしてタルトの生地はサクサク。これは絶妙に美味いです。順徳のどこで食べてもこのレベルの味が期待できるかというとそんなことはないはずです。このレストラン、香雲軒ならではの牛乳タルトなのでしょう。

  


その他の点心

美味しい流沙包(順徳・香雲軒)

 大衆点評で確認したところによれば、流沙包(クリーム饅頭)はこのレストランの人気商品です。流沙包は香港、深圳や広州の飲茶では欠かせない点心の一つで、日本人はあまり興味を示さない点心ではあるものの現地では人気点心の一つです。私の理解では、これは間違いなく順徳点心ではありません。でも、評判が高いのでトライした点心です。

美味しい流沙包(順徳・香雲軒)

 流沙包(クリーム饅頭)を半分に割ったところを写真に撮ってみました。熱々の饅頭なのに、クリームが固まっていないでトロリと流れるような感覚が分かりますでしょうか。これが美味しい流沙包(クリーム饅頭)の条件なのです。食べてみると甘すぎず、と言って適度に甘い絶妙な味です。なるほどこの味なら評判が高いのもうなづけます。

海老と香菜の餃子(順徳・香雲軒)

 続いて海老と香菜の餃子です。やや小ぶりではあるものの美味しいエビが香菜と一緒にくるまれていて十分に満足できる味です。美しくて美味しい、すなわち目と舌を両方楽しませてくれる点心です。かなりレベルが高いです。
 実は順徳ではもう一軒、別の店でも点心を楽しんだのですが、そちらの店もレベルが高くて、香雲軒とその店両方で、一つとして不満がある点心はありませんでした。順徳の点心レベルは素晴らしいとしか言いようもありません。

順徳らしいお粥(順徳・香雲軒)
 
 最後にお粥の紹介です。順徳らしいお粥ということで、刻み野菜と魚の粥というのをオーダーしました。初めて見た名前です。今まで食べたことがありそうで実はない粥です。見た目はちょっとさっぱりし過ぎていて私の好みではなかったかなと少し不安もありました。

順徳の美味しい中華粥(順徳・香雲軒)

  よくよく見ると、なるほど魚も細かく刻まれて入っています。順徳の川魚でしょうか。そして食べてみると、陳皮(柑橘系)が隠し味で入っていて、魚の生臭さを消しています。この味付けこそが順徳料理の真髄です。朝に食べる粥としては大変おすすめできるさっぱり系で食べやすい中華粥です。
 うーん、何を食べても美味い順徳の点心は、もっと日本人にも紹介したいですね。間違いなく香港よりもおいしいです。そして価格は香港より安いです。レベルが高いです。間違いなく私が近々再訪するに違いないレストランです。


ナビーション