バイヨンはアンコール・トムの中心にある仏教寺院です。観世音菩薩の四面塔や回廊のレリーフ、デバターなど見所が豊富で、まさにアンコール遺跡観光のハイライトです。約200ある観世音菩薩や岩山のような威容は、観光客に強い印象を与えます。 |
バイヨンはアンコール・トムの中心 |
クメール語で「大きな町」を意味するアンコール・トムは、高さ8mの城壁と濠に囲まれた一辺3qの正方形の形をした古代都市です。当時は、周囲12qの城壁の中に、王宮や寺院ばかりでなく、役人や兵士たちの住居もあったと考えられます。 アンコール・トム観光のハイライトは、何と言ってもバイヨンです。バイヨンは12世紀末にジャヤバルマン7世によって建てられた仏教寺院で、アンコール・トムの中央にあって、観世音菩薩(観音菩薩)の四面塔で有名です。観音菩薩は、人々の音(声)を観て(聞いて)、その苦悩から慈悲を持って救済する菩薩様ですので、人々の悩みに応じて千変万化の相となります。ここバイヨンにおいても、約200の観音菩薩がそれぞれどれ一つとして同じものの無い穏やかな微笑を見せています。 |
バイヨンの入口です。その荘厳な偉容に誰もが目を見張ります。遠くから見ると、岩山がゴツゴツしているだけなのですが、近づいてみるとその岩山が単なる岩山ではないことに気付かされます。 |
岩山のように見えていたのは寺院の伽藍であって、その伽藍の上には、観音菩薩が彫りこまれているのが近づくと良く分かります。その数約200と言われていますが、近づけば近づくほど、観音菩薩が目に入ってきます。それぞれが少しずつその微笑の表情を違えています。 |
さて、正面からの威容に圧倒されながら、バイヨンの東門から中に入っていきます。バイヨンはアンコールワットのように整備されていませんので、地図を頭に入れて歩きませんと、どこを歩いているのか分からなくなってしまいます。 |
バイヨンの地図については、飲食店内装見積.comに掲載してあるものを借用させていただいています。私が見た中では、これが一番わかりやすい地図です。 |
バイヨンには見どころが沢山ありますが、このページでは、レリーフ、観音菩薩、デバターの順に紹介していきます。 |
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レリーフ、そしてリンガ |
第一回廊のレリーフについての詳細はこちらのページです。 |
バイヨンのレリーフは、第一回廊に描かれています。上の写真は入り口付近から見たものですが、第一回廊は屋根がなくなっていますので、塀にレリーフが描かれているかのような印象になってしまいます。バイヨンを一周取り巻くようにレリーフが彫られていることになります。 |
東門の南側の部分のレリーフです。この辺りはクメール軍の行進が描かれています。彫りはかなり繊細です。ただ、屋根がなく直射日光をまともに受けることもあるので、じっくり見たい人は暑さ対策を忘れないでください。 |
行軍の中で髪形などでクメール兵士と中国などからの傭兵とを見分けることができます。例えば、上の写真で髪を短く刈っているのが中国人の傭兵です。 |
生贄にされる水牛です。水牛のちの入った酒を飲むと戦いに勝てるとされていたので、水牛が生贄にされるところです。 このように、バイヨンのレリーフは当時の生活や戦闘の一端を描いたものが多く、神話や政治を背景としているアンコールワットのレリーフよりも、私たち日本人にとっては親しみやすく分かりやすいものとなっています。 第一回廊のどこにどんなレリーフがあるかについてはバイヨンの地図をご覧ください。 |
リンガは男性の性器を意味しており、ヒンズー教におけるシンボルで、通常はシヴァ神のシンボルとされています。リンガを受けているのがヨニで、ヨニは女陰を意味しています。このいかにもヒンズー教らしいリンガとヨニのセットがバイヨンの中でいくつも見られることから、バイヨンがヒンズー寺院として建てられたのではないかという説まで出たくらいなのですが、現時点ではもともと仏教寺院として建てられたバイヨンがヒンズー教寺院に改造されていた時期があり、その時にリンガ・ヨニも設置されたとする説が有力です。 |
第一回廊を抜けて第二回廊と中央祠堂方面を見たところです。岩山が折り重なるように見える圧巻の風景です。 バイヨンの威容と第一回廊のレリーフについては別のページで詳細を紹介しています。 |
ここから第二回廊を抜けていくと、いよいよ観音菩薩の四面塔が随所に表れてきます。 |
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観世音菩薩 |
第二回廊を抜け内側に入ろうとすると、門の正面にもう観音菩薩が現れます。ここからですと、正面を向いた観音菩薩と右を向いた観音菩薩が目に入ります。いよいよ、バイヨンらしい風景が始まります。 |
第二回廊の内側に入ると、こんな感じで観音菩薩の四面塔が屹立しています。ここから見えるだけで5つの観音菩薩が目に入ります。 |
そのなかで手前に見える三つの観音菩薩を見ると、確かにそれぞれ表情が異なります。私は午前中にバイヨンに入りました。午前中の光線だとこのように見えます。しかし、これらの観音菩薩も見る角度を変えると、また表情を変えますし、同じ観音菩薩でも朝早くの光線や午後の光線、夕方の光線ですと、さらに表情が変わります。 |
上の写真のように3つの観音菩薩が並んでいると、その表情の違いは明らかです。同じものが二つとないわけです。一時間半かそれ以上いたかもしれませんが、その間、自分の好きな表情の観音菩薩を探すようになってしまいます。 |
上の中央の観音菩薩の表情をアップしました。 |
斜めの角度から見た方が観音菩薩の表情はさらに穏やかになるのでしょうか。上の写真の左の観音菩薩の表情は私のお気に入りの一つです。 |
この二つの観音菩薩は、左は「静」のイメージがして、右は「動」のイメージがするのですが、どう感じますか。 |
第二回廊の塔門の上にも観音菩薩の四面塔があります。近くでは見れませんが、肉眼でも十分に表情を見てとれます。 |
第二回廊の内側は上のような感じですから、観音菩薩の表情を見たり、デバターを見たりしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。デバターについては、まとめて次の項目で紹介します。 |
こうして観音菩薩を見てきて、私の好きな菩薩様を最後にご紹介します。 上の写真の左側です。ご慈悲の心、優しさといったものが表情から十分に見て取れる観音様です。 |
そして、もう一つがこちらです。優しさ、温かさといったものが感じられ、私がこれまでイメージしてきた菩薩様の表情が、この菩薩様にはあるような気がします。 バイヨンの見学では、観音菩薩の数に圧倒されずに、一つひとつの表情をよく確認し味わいながら見学すると、観光の思い出がより深くなると思います。 バイヨンの観世音菩薩(観音菩薩)の四面塔についてはこちらのページで詳細を紹介しています。 |
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デバター |
バイヨンの第二回廊内側の見学のもう一つのポイントはデバターです。バイヨンのデバターは、全般的にみると彫りの深いデバターはあまり多くなく、保存状態もあまり良くありません。けれども、なかには上の写真のように、素晴らしい保存状態のデバターもありますので、観音菩薩の表情を見ながら回遊するなかで、根気強く探してみましょう。 |
バイヨンでは女官のデバターが多く、アンコールワットのデバターに比較すると地味なものが多いような気がします。良く言えば、落ち着いた感じのデバターが多いということになります。 |
地味なデバターが多いのですが、体の曲線についてはバイヨンの方がアンコールワットのデバターよりなまめかしい感じがします。建立時期は、バイヨンがアンコールワットより100年近く後になりますので、そうした時代の差から来るものだと思います。 |
あまり目立ちませんが、蓮の花の上で踊る踊り子のデバターもあります。 現在のアプサラダンスは、アンコール王朝が滅んだ後に考案されたものなのだそうで、その際に参考にしたものの一つが、このバイヨンのアプサラなのだそうです。そう言えば、シェムリアップの夜に見たアプサラダンスも確かに雰囲気が似ています。 |
そのうちの二つを拡大してみると、なるほど大胆で魅惑的なダンスを踊っているようです。特に右側の踊り子は保存状態も良く、表情も読み取れます。ただ、バイヨンにはこういうデザインも保存状態も良いデバターが少ないのが残念なところです。 |
これも踊り子です。手をつなぎ蓮の花の上でダンスをしています。 アンコールワットでは手をつないでいるデバターの数が大変多かったのですが、ここバイヨンでは少ないですね。この蓮の花の上で踊る踊り子ばかりが目立ちます。 |
冠を見ると、かなり身分の高そうな女官のデバターです。ウエストがかなり細く、逆に骨盤の周りがかなり大きくなっています。この体のラインは、バイヨンのデバターにある程度共通しているものです。このスタイルが当時、美人と言われるための必須条件だったのではないでしょうか。 |
バイヨンで私が最も美しいと感じているデバターがこれです。暫く見とれてしまいました。 顔の表情、体のライン、冠やアクセサリーといったデザイン面でも、また、彫りの深さや保存状態の良さにおいても、これに勝るデバターは見つかりませんでした。 |
関連するページ |
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