アンコールワットには無数のデバターが描かれています。デバターは女官や踊り子たちを描いたレリーフです。デバターがいくつあるのか分かりませんが、すべて実在のモデルがいたと言われ、一つとして同じデバターはありません。デバターの躍動感ある姿はアンコールワットの魅力の一つです。 |
デバターとは |
アンコールワットをはじめとしたアンコール遺跡には数多くのデバターがあります。デバターは日本語では「女神」と訳されていますが、アンコールワットに彫られたので女神だということであって、女神を彫ったものではありません。女官や踊り子たちをモデルにして彫られたものです。踊り子といっても、カンボジアのアプサラダンスの踊り子ですから、天女の舞いを踊る踊り子です。因みに、アプサラとはカンボジアの宮廷舞踊のことで、その語源は古代インド神話に出てくる「アプサラス」です。 一人ひとりのデバターが顔も違えば装飾品なども違います。一番右のデバターなどは奔放なダンスをしていて魅力的です。 |
デバターはアンコールワットのどこかあるか、といってもそこらじゅうに彫られていますのでここでわざわざ言及する必要はないと思います。ただ、私は大きく分けて二つの種類があると思います。 上の写真は第二回廊の内側の角です。この第二回廊の内側は隙間なくデバターが彫られています。これらのアンコールワットの内側を向いたデバターというのは、皆、アンコールワットの中心にある中央祠堂を向いているわけですから、アンコールワットが創建者であるスールヤヴァルマン二世により自分の墓地として創建したことを考えると、スールヤヴァルマン二世を向いているデバターということになります。踊り子のデバターが多いのはスールヤヴァルマン二世が自分の方を向かせて彫らせたからだと考えるのは私の考えすぎでしょうか。 |
デバターについてはいくつも並んでいる壁面を見ると、それはそれで圧巻の眺めではあります。けれども本当の面白さは一つ一つのデバターをこまめに見ていくことです。例えば上の写真のデバターはそれぞれポーズが異なります。冠が異なっていたり、手に持っているものも異なっていたりします。デバターは実在した女官や踊り子たちをモデルにしていますから、表情も違うし背の高さやスタイルも違います。ただ、肉感的なデバターが多いのはスールヤヴァルマン二世の好みなのかもしれません。一つ一つのデバターをこまめに見て、自分の好きなデバターを探すのはとても楽しいことです。 |
上の写真は第二回廊のデバターです。これら建物内にあるデバターは一人ずつ、あたかも訪問者を出迎えるかのように彫られているのが多いように感じます。これらが私が考える二つ目のパターンで、訪問者をもてなすデバターという風に私は考えています。 これら建物内のデバターはポーズは取っているものの、どちらかというとおしとやかで優雅な振る舞いが感じられます。別の言い方をすると躍動感という点では、建物外に彫られたデバターの方が躍動的なのです。 |
もちろん、建物外に彫られたデバターにも、上の写真のようにおとなしい礼儀正しそうなデバターもいます。だから、私はこのように考えているのです。 訪問者を出迎えるデバターのモデルはお行儀の良いもてなし上手な女官や踊り子たち、スールヤヴァルマン二世を向いているデバターは華麗なダンスを踊る踊り子たちを中心に壁面が埋まるまでできるだけ多くの女官や踊り子たちをモデルにして、デバターが彫られたのではないでしょうか。 次回のアンコールワット訪問時には、こうした想定に基づいてデバターを鑑賞し、私の想定がどの程度当てはまるのかを検証したいと思っています。 |
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訪問客を出迎えるデバター |
訪問客を出迎えるデバター、言い換えれば建物内にあるデバターについて、紹介をしていきたいと思います。訪問者を出迎えるデバターといっても、創建者であるスールヤヴァルマン二世が今のアンコールワットのような観光地を想定していたはずはないので、王族をはじめとしたクメール王朝の高官たちが参拝に来た時のことを出迎えるデバターです。 上の写真は第二回廊入り口で出迎えるデバターです。デバターに触れると幸せになれるとかいった言い伝えもあり、観光客が触るものですから、手の脂でところどころ黒光りしています。男性は胸を触ることが多く、女性は顔、特に鼻を触ることが多いなんてことを聞いたことがあります。 |
建物内のデバターは柱や壁の端に一体ずつ(一人ずつ)彫られていることが多く、建物内を回っていると、ちょうど大会社の社長室に入っていくときと同じように、要所要所で案内をする役割の人が立っていて、「いらっしゃいませ、こちらでございます」と案内されているようです。(今はそんなことやっている会社は見たことありませんが、……。) |
このデバターに至っては、そのポーズが「こちらでございます」の手になっているように、第一印象では見えました。 |
このデバターは第三回廊のデバターです。中央祠堂に近づけば近づくほど、貫録のある、ちょっと地位を感じさせるようなデバターが多いような印象です。冠も少し高価そうです。 |
上の写真も第三回廊のデバターですが、気のせいか第三回廊のデバターのモデルがそれほど若々しくないのです。第三回廊ではピチピチしたデバターは見なかったような印象があります。これも、次回のアンコールワット見学時のチェック課題です。 |
第二回廊内側のデバター |
上の写真は第二回廊の北西の角です。アンコールワットの平面図をご覧ください。この北西と南西の角にデバターが相当数並んで彫られています。連子窓がない部分でスペースがあればデバターで埋め尽くしているという感じです。 |
二人か三人、あるいはそれ以上の数で彫られているデバターが多く、上の写真のように腕を組んでいるポーズも多く見られます。腕を組んでダンスしている中央の二人もポーズが対称的ですし、その左右で腕は組んでいないもののダンスしている二人も対称的なポーズで彫られています。これは恐らくアプサラダンスのポーズなのでしょう。 |
引き続き第二回廊内側に彫られたデバターです。壁の凸凹の隙間にもこうしてデバターが彫られています。私は冠の違いが気になるのですが、この一番左のデバターは冠が高価そうです。手の指の動きがしなやかで腰も細いですね。概していえば、モデルが若そうだということはこの第二回廊のデバターに共通した印象です。 |
そして、私のお気に入りデバターです。第二回廊内側に彫られています。右の二人は躍動感があっていいですね。ただ対称的に踊れているかというと、気のせいか右のデバターがちょっとリズムより早すぎるのかなという印象です。いやいや、このちょっとしたズレこそがアプサラダンスの醍醐味なのかもしれません。私には、この二人が姉妹に見えていて、左が姉、右が妹だと考えています。ちょっと顔も似ていて、そう言われればそんな気もしてこないですか。 こんなことを考えながらデバターを見ていると、時間はあっという間に過ぎていってしまいます。 それから、左から二人目のデバターは躍動感があって一生懸命さも伝わってくるものの、目をつぶっているのが惜しいですね。でも、こういうデバターのモデルは間違いなく存在したに違いありません。 |
二人で彫られていて腕を組んでいるデバターは沢山彫られています。そして、一緒に彫られているデバターの背の高さが揃っているのも一つの特徴です。 |
ここのデバターも腕を組んでいます。なかなか息の合った二人です。 |
第二回廊内側の壁面には、このように連子窓の間に彫られているデバターが沢山あります。それこそ、隙間なく彫られていると言って良いと思います。まさに壮観です。 |
ここで一番右のデバターの部分だけが白くなっているのは修復されたのではなく、屋根からの雨水の通り道に当たっているからです。その証拠に、デバターの部分だけが白いのではなく、デバターの上の部分も含めて屋根から下全体が白くなっています。 |
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踊るデバターの魅力 |
第二回廊の内側で中央祠堂を向いて彫られているデバターの多くはアプサラ(踊り子)たちの姿です。躍動感に満ちたダンスをしている情景が彫られていて、こうしたデバターを見るだけで、当時のアンコール王朝の豊かさが目に浮かびます。 |
ポーズは一人ひとり異なっていて、装飾も異なっているのですが、なぜか一体感を感じさせます。特にシェムリアップの夜にアプサラダンスショーを見た後では、このモノクロのデバターを見ていても豪華絢爛な原色の衣装や装飾品まで目に浮かんできてしまいます。 |
このあたりはスローな動きで優雅に踊っている姿でしょうか。上体だけ動かして、腰から下はあまり動かさない部分です。 |
上の写真では、腰から下も動きが出ています。シェムリアップのアプサラダンスショーでも、こうした下半身の使い方は随所に見られました。 |
上の写真では腰や下半身、そして上体の使い方など、良く描かれています。 |
二人仲良く踊るデバターです。右の踊り子の指の使い方が繊細で魅力的です。左右対称的でなかったりするとバランスが悪いように見えてしまいがちなのですが、アプサラダンスというのは不思議なことに、そういった左右対称性といったことは全く気になりません。 奥の二人はなんでしょうか。 |
一つ上の写真に写っていた奥の二人組です。何かなまめかしい感じがしますね。首の下に飾りがないからでしょうか、上半身が裸のように見えます。そんな風に見えてしまうと、そういえば恥ずかしそうなポーズだなあなんて思ってしまいます。 |
そして、私が大好きなこれらのデバターになると、さらに踊り子たちの動きには躍動感が出てきて、一見バラバラのようで一体感がある不思議な魅力を、何百年の時間を超えて私たちに伝えてくれるのです。 |
歯を見せて笑うデバターなど |
ガイドブック等でよく紹介されている「歯を見せて笑うデバター」は西塔門の近くに描かれています。このサイトでは、西参道から聖池までのページで、西塔門内側のデバターを紹介していますが、その中で最も人気のあるデバターです。 日本のガイドブックでは「歯を見せて笑うデバター」はその西塔門内側にしかないなどと紹介されていますが、デバターが数多く彫られている第二回廊内側にも、当然ですがあります。 |
上の写真が第二回廊内側で「歯を見せて笑うデバター」です。二人並んで仲良く踊っています。二人組で踊っているというその構図だけに目が行って、表情をよく見ないでいると、歯を見せて笑っていることを見落としてしまうのかもしれません。 |
拡大してみると、歯を見せて笑っていることがよくわかります。楽しそうに仲良く踊り、はにかむように笑っている踊り子の笑顔が素敵なデバターです。 それぞれ花を持つ指に注目すると、小指を立てながら、左右の二人が対象となるように持っていることでも、この二人の息の合ったダンスが目に浮かびます。スールヤヴァルマン二世に息の合った魅力的なダンスだなどと褒められて、微笑んでいるような姿にも見えます。 |
上の写真は鏡みたいなものを右手に持って踊るデバターです。西塔門内側のデバターの中には鏡を持ってポーズをとっているデバターがあるのですが、これはどうでしょうか。 |
上の写真が、西塔門内側のデバターの一つで、「鏡の前でポーズをとるデバター」と私が名づけたデバターです。 |
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その他 |
このページでは、アンコールワットのデバターについて、第二回廊内側に彫られたものを中心に紹介しました。西塔門内側のデバターや第三回廊に登り中央祠堂周りのデバターについては、それぞれのページで紹介していますので、ご興味があればリンクを辿って見に行ってください。 |
アンコールワットには、もっと時間をかけて探せば、魅力的なデバターや変わり種のデバターがあるかもしれません。私は次回、自分のお気に入りのデバターを探しに朝から晩までアンコールワットのデバターめぐりをしてみたいと思っています。 |
上の写真はアンコール遺跡のバンテアイ・スレイにあるデバター。バンテアイ・スレイは赤い砂が取れるエリアに建てられた寺院で、建物もそして彫られているデバターも赤みがかっています。アンコールワットとはまた違った魅力を持つデバターが見れます。バンテアイ・スレイのデバターは精巧に彫られているとともに保存状態も良いので必見です。 興味があればこちらもご覧ください。 |
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